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それでも出会い系サイトはやめられない 最終話


僕は、黒塗りの車に乗せられた。
 
車はサラ金の会社に向かって動き出した。
 
 
凜は助手席に座っている。
 
運転席の夫と楽しそうに談笑している。
 
 
僕は後ろの席で男二人に挟まれて座っている。
 


「凜に騙された。」
 
凜は美人局だったのだ。
 
 
後悔の気持ちでいっぱいだった。
 

5分ほど走ったところで車が止まった。
 
「降りろ。」
 
僕は二人の男に腕を掴まれながら、車から降りた。
 

古いビルの2階にあるサラ金業者の窓口に連れていかれた。
 
薄暗い廊下の突き当りに窓口があった。
 
窓口には初老の男性が座っていた。
 
「いくら借りたいのかな?」
 
「50万円です・」
 
「身分証明書を見せて!」
 
僕は運転免許証を提示した。
 
窓口に男性に免許証の写しをコピーされ、50万円受け取った。
 


現金を受け取ると、男二人に両腕を掴まれながら、ビルを出て黒塗りの車に戻った。
 
後部座席に座らされた。
 


運転席の夫に50万円差し出した。
 
「女房に渡してくれ。」
 
僕は50万円を凜に渡した。
 
 
「ありがとう。私の身体、1回50万円の価値があるのよ。」
 
そう言うと、凜はフフッと笑った。
 
 
僕は怒りが込み上げてきた。
 
しかし、この場はこれ以上波風を立てると、もっと厄介なことになる。
 
僕はじっとこらえていた。
 

「二度と俺の女房に手を出すんなよ!」
 
凜の夫は履き捨てるように言った。
 

「もういい、降りろ。」
 
僕は車から降ろされた。
 
その直後、あっという間に黒塗りの車は去っていった。
 
 
 
黒塗りの車が立ち去った道路脇で、僕は一人ぽつんと立っていた。
 
 
ここから僕の車が止めてある北埠頭の駐車場まで2キロある。
 
海岸沿いの夜道を北埠頭の駐車場まで、僕はとぼとぼ歩いていた。
 
 

「もう出会い系サイトはこりごりだ。二度と利用するもんか!。」
 
僕は一人で歩きながら、固く決心した。
 
 

昨日から今夜にかけて、出会い系サイトで何十万円失ったことか。
 
後悔の念でいっぱいだった。
 
 
北埠頭の駐車場に着いた。
 

僕は車に乗った。
 

エンジンをかけようとした時、スマホが勢いよくバイブした。
 
 
スマホを手に取ると、LINEが届いていた。
 
まどかからだった。
 

「約束の時間よ。照国町のセブンイレブンで待ってる。」
 
新しいまどかの画像が添付されていた。
 

セブンイレブンで自撮りしたのだろう。
 
ストレートのロングヘアーで、紺色のワンピースを着ている。
 
ミニスカートからスラリとした綺麗な足が伸びている。
 
目がぱっちりして、可愛い笑顔がたまらない。
 
 
時計を見ると2時だ。
 
「まどかと約束した時間だ。」
 

LINEに添付されたまどかの画像を見ていると、僕の下半身は急に熱くなり、硬くなった。
 
 
今、出会い系サイトを利用しないと決心したばかりだ。
 
しかし、下半身の誘惑には勝てなかった。
 

これまでの嫌なことをまどかに会って忘れようと思った。
 
 
「わかった、すぐ行くからそのままセブンイレブンで待っててください。」
 
すぐに、まどかにLINEを返した。
 

車のエンジンをかけ、まどかの待つ照国町のセブンイレブンに向かった。
 
運転している僕の気持ちはまどかに向いていた。
 
さっきまでの悪夢は記憶の隅に隠れ、これから会うまどかとの楽しい時間を想像して、心は浮かれていた。
 
 
セブンイレブンの駐車場に着いた。
 

入り口に紺のワンピースを着た女の子が立っていた。
 
まどかだ。
 
僕に送ってくれた画像の通り、とてもかわいい女の子だ。
 
 
僕は車の窓を開け、まどかに手を振った。
 
まどかは、僕を見つけるとにっこり微笑みながら車に近づいてきた。
 

運転席の窓を覗き込みながら
 
「ひろしさんですね。まどかです。よろしく。」
 
そう言って、軽くお辞儀した。
 
「ひろしです。さあ車に乗って。」
 
僕はまどかを誘った。
 

「ホテルに行く前、コンビニで何か食べ物買っていきましょう。お腹空いちゃった。」
 
まどかはそう言うと、コンビニの中に入って行った。
 
 
僕は車から降りた。
 
まどかと一緒にコンビニでお菓子や飲み物を買った。
 

缶ビール10本 つまみセット10袋。 レトルト食品もたくさん買い込んだ。
 
「ホテルでこんなに食べるの?」
 
「お昼から何にも食べてないから、お腹ペコペコなの。それに、私、かなり大食いなの。」
 
まどかはペロッと舌を出した。
 

他にも、ティッシュペーパー、乾電池、スマホの充電器・・・
 
レジで会計済ませたら、2万円を超えていた。
 
「こんなにたくさん買っていただき、ありがとう。」
 
まどかは丁寧に頭を下げた。
 
その仕草がとても可愛らしかった。
 


まどかとたくさんのレジ袋を提げてコンビニを出た。
 
車にレジ袋を積み込み、ホテルに向かってエンジンをかけた。
 

「私、ホテルはセラに行きたいな。」
 
「セラ好きなの。」
 
「ウェルカムドリンクあるし、シャンプーやリンスも選べるの。」
 
僕はホテルセラに向けて車を走らせた。
 


10分ほどでホテルに着いた。
 
 
駐車場に車を止めて、降りようとしたら隣に黒塗りの車が止まった。
 
僕の心臓は止まりそうになった。
 

凜の夫の車だ。
 
 
凜と夫、そして二人の男が黒塗りの車から下りてきた。
 
 
 
まどかは助手席を飛び出した。
 

「パパ、ママ、助けて!」
 
 
僕の車から逃げるように凜と凜の夫のもとに走っていった。
 
 
まどかは、振り返りながら僕を指さした。
 

そして叫んだ。
 

「この男よ。ひろしよ。私をホテルに連れ込もうとしているのよ!」
 
 
凜の夫が僕に近づいてきた。
 
 
「お前は、俺の女房だけでなく、可愛い娘にも手を出すつもりか!」
 

鋭い目で僕を睨みつけている。
 

「今度はいくら払う?50万では足りないぞ!」
 


まどかも美人局だったのだ!
 

僕は恐怖で震え、背中が汗でびっしょり濡れていた。
 
 
 
 
 
 
 

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