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超ロングラン上映中『トップガン マーヴェリック』レビュー 『M:I』に通ずるトム・クルーズの絶対的信頼感

トム・クルーズ主演『ミッション・インポッシブル』(以下『M:I』)の最新作が大ヒットを飛ばしているが、今だに『トップガン マーヴェリック』も超ロングラン上映中だ。

2023年8月1日現在で上映日数436日を突破し、「君の名は。』(351日)や『鬼滅の刃 無限列車編』(288日)をとっくに抜いている。最近筆者が日比谷の劇場へ久しぶりに観に行ったところ、老若男女幅広い層の観客がいた。

それほど愛され続ける本作の魅力を紹介しよう。


マーヴェリックは背中で語る男

前作『トップガン』(1986)から36年。アメリカ海軍パイロットのマーヴェリック(トム・クルーズ)は、今度は「やんちゃな生徒」ではなく「スパルタ教官」として登場する。

マーヴェリックの教え子たちは、パイロット養成機関・トップガンの卒業生だ。そんな彼らを「ならずもの国家」の核施設を破壊するミッションへ送り込むことになり、マーヴェリックは3週間の特別訓練を施すよう命ぜられる。

今作を観ていて思うのは、指導者にいちばん必要なのは、生徒を惹きつける「トーク力」でもなければ「優しさ」でもない。「誰も追いつけないぐらいの圧倒的な実力を持っている」ということではないだろうか。

マーヴェリックが考案した訓練はめちゃくちゃ難しい。険しい渓谷を超低空・高速で駆け抜けて目標に辿り着き、爆弾を投下したのちに急上昇して敵地から離脱するというものだ。誰ひとりとしてクリアできず、マーヴェリックは生徒に辛口なダメ出しを連発する。

やがて、生徒たちの間で「できるわけがない」という不満が高まってくる。これまでエリートパイロットとしてちやほや育てられてきたもんだから、彼らとしてはもはやパワハラの犠牲者みたいな感覚になっている。

そんな生徒を黙らせるのがマーヴェリックのすごいところで、自らデモンストレーション飛行をやって遂行可能なミッションであると示す。誰もが「マジかよ」とか「やるじゃん!」と舌を巻くシーンが実に痛快だ。確かにマーヴェリックは生徒から「化石人間」呼ばわりされるほど年齢を重ねたが、今なお全く衰えを見せない「レジェンド」だったのだ。

口ではなく背中で語る。そうやって生徒から信頼を得るマーヴェリックが最高にカッコいい!


『トップガン マーヴェリック』がトムの到達点である理由

『トップガン マーヴェリック』を見返してみて、本作はトム・クルーズが長年『M:I』シリーズを制作してきたからこそ演じられた映画だと強く感じた。

『M:I』といえば、フェイクにつぐフェイクが繰り広げられるスパイ映画で、1996年に第1作目が公開された。トム演じるイーサン・ハントは、ひたすら他人を欺きながら「絶対不可能」な任務に立ち向かう。

そんなキャラクター性が『トップガン マーヴェリック』にもあらわれていた。先述のデモンストレーション飛行は、正式な手続きや上司の許可なく独断でやったものだ。映画冒頭のテスト飛行のときもそうだったし、後半のミッションのシーンではもっと大胆な行動にでる。

現在のマーヴェリックは、目的のためなら敵も味方も誰でも欺く。若い頃から相変わらず「破天荒」な性格なのだが、さらに今作では「ズルさ」を身につけた大人になっている。

そんなズルい男のクセに、どの作品でも、トムは絶体絶命なシーンになると必ず「俺を信じろ」と仲間に言う。仮に仲間が「私には無理だ!」とビビってしまったとしても、先に自分が危機的状況をピョンと飛び越えてみせるから、なんだか説得力がある。

他人を騙す男なのに信頼される。一見矛盾した「新しいマーヴェリック」を観客が違和感なく受け入れられるのは、長年『M:I』をやってきたトムが演じているという視点で観ているからだ。

その意味で、やはり本作は彼のキャリアの到達点なのだ。

※補足
本稿執筆時点(2023年8月1日)での上映館はTOHOシネマズ日比谷とグランドシネマズ池袋だ。詳細はこちら↓

あとNetflixでも配信中↓ (初回は是非劇場で観てほしいけどね!)

https://www.netflix.com/jp/title/81198910


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