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『100日間生きたワニ』が描く「その後」の100日間を観てほしい

【Amazon Prime Videoでまもなく配信開始のアニメ作品をレビューするシリーズ 2023年1月編 その1】

2019年12月からツイッターに投稿されて話題を集めたマンガ『100日後に死ぬワニ』(作:きくちゆうき)。このストーリーを大胆にアレンジしたアニメ映画『100日間生きたワニ』(監督:上田慎一郎、ふくだみゆき)が1/19にAmazon Prime Videoで配信開始だ。

原作は4コママンガ。毎回欄外に「死まで残り○日」と書かれていて、99日から1日ずつカウントダウンする(不吉!)。これは主人公のワニに残された僅かな時間なのだが、当の本人は全く知らない。親友のネズミなどと一緒にラーメンを食べたり、バスケをしたり、バイトに行ったり、平穏な日常を送る。そして、ついに迎えた運命の100日目に起きたのは……。

原作と比較すると、映画版ではワニだけでなく、ネズミ、モグラ、センパイなどのサブキャラにもしっかりスポットライトが当たる。青春時代を生きる若者たちの群像劇というべき作品になった。

映画の見どころは後半部分。オリジナルストーリーとして「その後」の100日間が描かれる。残された仲間たちの心の傷、そして彼らが少しずつ(本当に少しずつ)前を向いて歩んでいくまでの過程が丁寧に描写される。

意外なことに、大切な友人を失って「悲しい!」とか、「寂しい!」とかいうセリフは一切でてこない。だから淡々としているのだが、彼らのつらい心境は十分伝わってくる。作中世界では雨や曇りの日ばかりで、いつまでたってもネズミたちの声のトーンは低い。もう皆でワイワイ遊ぶこともない。

そこに映画オリジナルのキャラ・カエルが登場する。陽気でおしゃべりで、ウザいぐらい絡んでくるカエルが、突如ネズミたちの輪の中に乱入。テンションの差がすごすぎて誰もついていけず、ただただ困惑する。しかし思いがけずそのカエルが、ネズミたちが立ち直るきっかけを与えてくれる。

映画の口コミサイトを見てみると、今作の評価はあまりよろしくない(例えば映画.comでは☆2.3)。でも筆者としては、この映画をもって『100ワニ』の物語は完成したと言ってもいいのではないかと思う。原作ファンなら絶対観てほしい作品だ。

ワニの声を神木隆之介、親友のネズミを中村倫也が演じるなど、実力派俳優がキャスティング。なお原作マンガは下のサイトにまとめられている。4コマ漫画でサクッと読めるから、未読の人は要チェックだ。


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