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〔読みました〕放浪記 - 林芙美子

農作業が忙しくなってきて、黙々と手を動かす時間が続きます。オーディオブックの出番です! しこたま本が聴けます! そこで〝定額聴き放題〟のリストにある、「 有名なのに読んだことなかった小説」をずんずん聴いていくことにしました。

岩波文庫の表紙って独特だ

『放浪記』というお芝居を森光子さんが主演し、芝居中にでんぐり返しをする - というのがこの小説に関する私の知識の全てでした。 森さんがご存命だったころ、ワイドショーでは「89歳ででんぐり返し!」ばかりが取り上げられていました。

物語の全編に、歌うように軽やかに、心地いい言葉が流れていきます。自伝的小説ということですが、詩じゃないのこれは??散文詩?

聴き始めてしばらくは、とても混乱しました。

短編で構成されているのですが、時系列に並んでいないのです。例えば、「月給35円の薬剤師のお屋敷の助手の仕事が決まってよかったねふみ子さん」、で終わったはずが、その次の話ではまたふみ子は仕事を探してあくせくしているのです。

ここでちょっと脱線。私は脚本家の遊川和彦さんの大ファンなのですが、『家政婦のミタ』もそんなドラマでしたよね、マイホームが炎上し、ははは…と笑うお父さん(長谷川博己)のアップで終わったのに、その次の週では何事もなかったように別のエピソードが展開していくのです。何やこれ、面白いやん!と毎週楽しみに観ていましたよ!

さて、『放浪記』に戻りますが、これ、連載小説だったのですね。一話一話で完結させているから、時系列になってなかったりするわけなのですね(エッセイ集と言うことにしてもよさそう)。

聴きながら思わず苦笑いしてしまう箇所もちょこちょこありました。

嫌だな、林さんて私みたいなことを言ってたんだ、あはは😅…「私は無政府主義者だ」

「童話も詩も売れなくてお腹がぺこぺこ。あれが食べたいこれが食べたい。美味しそうな匂いがしてくる」… ああやだやだ、私もこんなでした。イラスト持って編集部周りして1枚3千円でカット描いてたよ。お腹すいて、パンの耳もらって牛乳に浸して食べてたよ...

貧乏、貧乏、貧乏... カフェエの女給をするわけだ…私もお水のバイトしたことある!

でも、林さんに強くシンパセティックに同調してしまうのは私だけではないと思います。

自分の中に、外に出たくてたまらないものがあって、それを、見えるもの・聞こえるもの・感じられるものにしたい。カタチにしたい。あわよくばそれでちゃんとご飯が食べられる人になりたい。そんなことを願いながらも誰にも見つけてもらえない。そんな虚しい思いを抱えたことのある人の多くが(男女にかかわらず)、この小説を「身につまされた」と感じるのではないでしょうか。

ところで全編を通して、ふみ子がでんぐり返しをするシーンはついぞ出てきませんでしたね。 😆

川端康成氏が過労死を遂げた林芙美子さんを見送る弔辞のなかで「故人は、文学的生命を保つため、他に対して、時にはひどいこともしたのでありますが、しかし、後二、三時間もすれば、故人は灰となってしまいます。死は一切の罪悪を消滅させますから、どうか故人を許して貰いたいと思います」と述べたというエピソードは余りにも有名らしく、いろんな人が引用していました。

私は「はは~ん」と思いました。つまり、林芙美子は明石家さんまなのです。

よく、さんまさんの元妻・大竹しのぶさんが「(私のことを)嘘ばっかり言ってる! 何倍にも盛ってる!」と文句を言っているのをテレビで見ましたが、林さんもまた、自分の身近な人びとを切り売りしてきたのです。

また、林さんは小学生の頃からお母さんを手伝って行商していたから、抜群のビジネスセンスがあるのです。こういうこと書いたらみんな読むわ、こっちの方がウケるわ…と。

川端氏は、「俺のこと、あたしのこと、あんなふうに書くなんて!」と怒り心頭の人びとに向かって「許してあげて」と言ったのです。たぶんね、知らんけど。

林さんに深いシンパシーを感じる私ですが、私と林さんのいちばん違うところは(あちらは超のつく売れっ子作家さんだったのだから鼻から比べようもないってのは置いといて...)〝甲斐性〟です。

彼女は〝甲斐性〟があるから、男に頼られてしまうから、男に苦労するんです。私の友達で何度も結婚してる人がいるのですが、彼女もすごく〝甲斐性〟があって、男たちが経済的にも精神的にも頼ってくるのです。そして駄々っ子のように暴力を振るう...

私は〝甲斐性〟がなく、幸か不幸かそうした苦労とは縁がありませんでした。私に手を上げる男の人はいなかったし、逆に世話を焼いてくれる人ばかりでした(あはは、子供か!)

...しかし、私はバブルを経験してる世代なのに自分の身にはまるでバブルは起こらなかった!😭  今は世界一貧しいムヒカ元大統領を心の友、浅原才市を心の師とする貧乏農場の主人。

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