見出し画像

#10 'Section 230'に関する英文記事の意訳抄訳(2990字程; VOA Learning English, Jun.3,2020)

(元英文記事782words)

1.わずか26単語の1996年の法律が、Facebook、Twitter、そして Googleのような会社が今日の大きさに成長するのを助けてきました。

 その法律は、1996年の通信品位法(the 1996 Communications Decency Act)の第230条(Section 230)のことを指します。この条文は、新たに関心を集めており、改変されるかもしれません(mightは、直接法にも使えるし、可能性の低い場合を表す仮定法にも使えますので、そのどちらかはわかりません。すなわち、改変の可能性の程度までは表現されていません)。

Section 230: "No provider or user of an interactive computer service shall be treated as the publisher or speaker of any information provided by another information content provider." (対話型コンピューターのプロバイダーや利用者は、他の情報内容プロバイダーによって提供された情報の、発信者やマスコミとしては取り扱われない。あるいは、インターネット通信のプロバイダーや利用者は、他のプロバイダーのプラットフォーム上に情報を提供・投稿するマスコミや利用者(情報の発信者)とはみなされない、という意味合いではないかと考えます。すなわち、インターネット通信で投稿などのプラットフォームを提供するプロバイダーやその利用者(情報の発信者は除く)は、第三者のプラットフォームを利用して情報を発信する個人やマスコミと同じようには取り扱われない、ということだろうと考えます。)

 第230条は、インターネット企業を、第三者(利用者)がその会社のサイトに投稿した事柄についての訴訟事件に直面することから守っています。合衆国法の下では、会社(企業)は一般的に、利用者がウエブサイトに投稿した事柄について責任を負いません

 しかし先週、トランプ大統領は、大統領令によって第230条を後退させました。大統領令は、政府は、(インターネット)企業が利用者(ユーザー)の投稿した事柄について編集権を持つ場合の(Section 230によって与えられた特別の)保護について再考することを、言及しています。

 トランプの大統領令(日本では、内閣の政令にあたる。いわゆる行政立法)は、先週の木曜日(4月30日)、Twitter社がトランプ大統領の2つのツイートに対して、それらをファクトチェック警告付きの(事実関係の確認をする必要のある)ツイートに加えた、その数日後、に出されました。

2.Section 230

(1) 仮に、ニュースのウエブサイトが、真実に反し、あなたを嘘つき呼ばわりした場合、あなたはそのマスコミ(記事の発信元である新聞社ないしテレビ局など)を訴えることができるでしょう。しかし、誰かが、Facebookに、あなたが嘘つきだと投稿したとしても、あなたは Facebook社に訴訟を提起することはできません。――ただ、その投稿をした人を訴えることができるだけです。

 合衆国法は、数え切らないほど多くの投稿を抱えることのできる企業を、誰かの投稿によって間違った情報を流されてしまったと感じる人々からの訴訟に直面しないように、守っているのです。投稿が真実か虚偽かは問題はありません。

(2) 第230条(Section 230)はまた、ソーシャル・メディア・サービス企業に、卑猥な投稿や、その企業が許容できると考えている事柄に反する投稿を削除することを許しています。それに加え、1996年通信品位法(1996 Communications Decency Act。元英文には特に法律名は書かれていませんが、文脈からして、この法律のことを指しているのだろうと判断しました)は、サービス企業に、信義誠実義務を課しています。

3.Section 230の法源

(1) 第230条は、1950年代の合衆国最高裁判例に基づいています。

 書店経営者は、わいせつ表現を含む書籍を販売した場合責任を問われていました。わいせつ表現は、合衆国憲法修正第5条の表現の自由の保障の埒外です。

 その判例は、第三者の書いたもので誰かが責任を負わされることは合法的ではない旨、判示しました。

.. it was unlawful to hold someone responsible for someone else’s writings.

(2) 1990年代は、インターネットが大きな成長を経験した年代でした。当時操業されていた2つの企業に、CompuServeと Prodigyがありました。それらの企業は、人々が情報を共有できるオンライン・フォーラムを提供していました。CompuServeはそのフォーラムの調整役を務めないことを決めましたが、Prodigyはフォーラム(が節度をもって利用されるように)の調整役を務めました。

 CompuServe社は、フォーラムの投稿に関わり訴えられた訴訟で、上記の方針(調整役を務めないこと)を陳述し、訴えを退けることができました。しかしながら、Prodigy社は法的に困ったことになりました。裁判官は、Prodigy社は編集権限を行使していたと認定しました(元英文記事はここまでしか書かれていませんが、前述の書店経営者の事例では、書店経営者にはその販売する書籍に全く編集権限がなかったのとは異なり、Prodigy社には、そのフォーラムに投稿された事柄について編集権限があるとの認定と考えられます。したがって、Prodigy社の責任が認められ、損害賠償義務が課されたのでしょう)。

 当時の政治家たちは、この裁判官の判決に不満でした。彼らは、この判決によると、インターネット企業は全く、そのフォーラムの調整役を務めなくなってしまうと憂慮したのです。こうして 第230条(Section 230)が、1996年通信品位法(1996 Communications Decency Act)に加えられたのです。

4.Section 230が制限されるか削除された場合

(1) 第230条なしには、いかなる形態のソーシャル・メディア・サービス企業も存続し得ないだろうと、第230条に関する本、“The Twenty-Six Words That Created the Internet.”の著者、Jeff Kosseff氏は、Associated Pressに語りました。彼は、それらの企業は、ユーザーの投稿のためのプラットフォームとしてのビジネス・モデルに依拠していると述べています。

(2) 今後起こり得る2つの可能性があります。一つは、投稿プラットフォームからいくつかのセクションの提供を止めることです。Craigslistは、2018年のStop Enabling Sex Traffickers Act (SESTA、性奴隷防止法と仮訳しておきます)の成立後すぐに、"personals" section(personalということなので、1対1でやりとりできるようなセクションだろうと想像します)を完全に止めました。性奴隷防止法は、通信品位法第230条に、性産業に役立つ事物についての例外を新設したものです。Craigslist社は、危険を冒したく危険を冒したくなかったのです。

 全米市民的自由連合(the American Civil Liberties Union, ACLU)の上席弁護士(senior lawyerの訳は何が適当かわかりませんでした)である Kate Ruane氏は、もし、ソーシャル・メディアのプラットフォームが法律により守られていなければ、彼らはドナルド・トランプの投稿を載せる危険を冒さないだろうと語りました(すなわち、大統領令は、トランプ大統領の目論見通りには機能しないということでしょう)。

(3) 二つ目としては、Facebook・Twitterや他のプラットフォームが調整役を務めるのを全く止めるかもしれないという可能性です。代わりに、彼らは、誰にでも、いいものであれ、悪いものであれ、何についても、投稿を自由にさせるかもしれません。

 そうなると、ユーザーに過激論者の画像やメッセージを投稿するのを自由にさせていることで知られている、8chanなどのサービスが、ソーシャル・メディアをたやすく支配することができるようになるかもしれないと、カリフォルニア州、Santa Clara大学の法律学教授、Eric Goldmanは語りました。第230条を無力化(台無しにする)することはインターネットにとって危険なことだろうとも語りました。

 しかし、Goldman教授は(実際には)、この行政立法(トランプの大統領令)を、インターネットに対するこの種の危険とは見ていません。教授は、トランプの今回の大統領令の意味するものは、支持者へのアピールにすぎず、大統領は議会を無視することはできない、と語りました(すなわち、今回の大統領令の実効性は低いということでしょう)。

以上


P.s.[2020/10/06] sectionの訳を「」から「」に変更しました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?