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964日ぶりの1球を一生の宝物に(04/28オリックスvs日本ハム)

2022年4月28日、手術とリハビリを乗り越え、3年ぶりに1軍のマウンドに立った近藤大亮投手が放ったボールは、打者のバットを詰まらせ3塁側スタンドの宙に舞った。


子供の頃から、王道のものよりもマイナーなものを好きになる傾向がある。

好きだった歌手や歌が世間的に流行してきたらちょっと遠ざかったりとか、日本史の一番好きな時代が鎌倉時代だったりとか、大学入ってからアルティメットとかいう超マイナー競技を始めたりとか。そういうなんかミーハーになりたくないよぉ~みたいな気持ちわかる人もいると思うんだけど。

自分はその傾向が好きな野球選手にも顕著に表れていて。

そもそもまずオリックスバファローズをもう10年くらい応援しているのが相当変人だなってとこから始まって。だって一時期全国にオリックスファンは3人しかいないって言われることもあったし。まあ実際オリックスファンの知り合いに1人もあったことないし。

でも去年25年ぶりにリーグ優勝して。日本代表にも山本由伸選手、吉田正尚選手という日本一の投手と打者といえるほどの選手がオリックスから選出され。昨日観戦しに行った東京ドームにも例年より多くのオリックスファンがいたように感じられた。(多分本拠地の大阪より東京のほうがオリックスファン多いと思う)

そんな中、マイナー大好き少年の僕が一番好きな選手が近藤大亮選手である。彼のチームとしての役割は、チームの顔であるエースでも4番でもなく、輝かしい守備で観客を魅了する二遊間でもセンターでもなく、中継ぎ投手の1人という立場である。

中継ぎ投手は、試合展開をを見ながら、時にはツーアウト満塁の緊迫した大ピンチに登板したり、時にはボロ負けの敗戦処理として登板したり、単に中継ぎといっても様々な役割を任されることになる。

中継ぎ投手に推しがいるファンからすると、観戦当日に登板するかどうかさえ分からないレアガチャを引くようなワクワク感があり。頼むからこの場面では出てこないでくれって逆に思ってみたり、なんでこの場面で出てくるの他の投手なんだよってイライラしてみたり。だから中継ぎ投手に推しがいる人は結構ブルペン箱推ししてる人が多いと思う。僕は、富山凌雅選手、山田修義選手といった中継ぎもかなり推している。ブルペンの雰囲気をみるのが大好きだからブルペンが見える神宮とか西武ドームとか結構好き。

そんな中継ぎの近藤大亮投手は2015年ドラフト2位でオリックスに入団し、2017年~2019年の3年間50試合登板を続け、オリックスの低迷期のブルペンを支えた。どこまでも突き刺さるようなストレートを武器に打者と真っ向勝負を演じ、多くの三振を重ねた。スターと呼べるほどではないが、多くの観客を驚かす確かな実力を見せつける中継ぎ投手にマイナー大好き心が踊らされた。

近藤大亮選手の姿をテレビで見ることができなかったのは突然のことであった。2020年に右ひじを故障し、手術を行った。育成契約になり背番号が124番に変わる。25年ぶりの優勝を果たしたオリックスでの2021年の公式戦登板数は0だった。ファンとして待ち望んでいた優勝は、何か寂しく物足りないものだった。東京ドームで巨人相手に三者連続三振を取った動画を何度も何度も見返した。

2022年4月24日、背番号124番から本来の背番号20番に。近藤大亮が戻ってきた。1軍登板を待ち望んだ。毎日毎日野球速報を確認する日々。3年ぶりの一球目は是が非でもリアルタイムで見届けたかった。

そして4月28日。今年初の野球観戦は東京ドームだった。

オリックスのベンチ上、前から2列目の席。円陣の中の選手たちの表情がしっかりと分かるBIP席だった。ファールボールが飛んでくるかなと思ったけど前にネットがあるおかげで(せいで?)、さすがに飛んでこなそうだ。

試合は初回から日本ハムの打線に攻め込まれる展開。5回を終えた時点で0-6のぼろ負けの展開。今年も自分の負け運を呪うことになろうとは。ちなみに前回の野球観戦は日本シリーズ第4戦の東京ドーム。当然負けた。

ただ今日に限っては正直負けてる展開を望んでないわけではなった。3年ぶりの復帰登板は負けている状態のほうが可能性が高い気がした。どうしてもその姿を目に収めたかった。6回から継投に入った。投手がベンチから出てくるたびに体がそわそわした。隣の人動きがうるさくてごめんなさい。齋藤綱紀投手、本田仁海投手と投手がつながれていく。中継ぎみんな大好き。

8回。3塁ベンチから背番号20がブルペンに向かい駆け抜けた。いつもと同じ半袖だった。投球練習で投じる捕手のミットに突き刺さるような豪球は確かに昔と変わらなかった。もうすでに号泣しそうだった。

そして、964日ぶりに近藤大亮選手の腕から豪球が放たれた。打者の中島選手のバットを詰まらせた打球はバックネットやや3塁側に飛んでいく。バックネットにあたりグラウンドに落ちると思われたボールは、するするとバックネット上を滑り、3塁側の観客席に。見上げると宙に浮いていた。力を失ったボールは左手に吸い込まれた。比喩なしで本当に吸い込まれた


長い野球観戦人生の中で初めてボールを取った。ボールが飛んでくるような角度の席ではなかった。

1本のヒットを許したものの盗塁阻止などのプレーもあり3人で8回裏を抑え切った。150kmに迫るストレートで三振も奪った。役割を全うした近藤大亮選手を迎えるベンチは暖かかった。満面の笑みの表情が印象に残った。まるで自分もベンチの1人として近藤大亮選手を迎え入れるような錯覚に陥った。

絶対復活すると信じていた。ずっと好きでいてよかった。そう思える1日だった。そして、もう一度確かな戦力として、オリックスの選手の一員として、活躍してほしい。そして、できることなら優勝の瞬間チームの輪の中にいてほしい。そう願い、これからもマイナーチーム、オリックスバファローズと近藤大亮選手を応援していきたいと思う。そして、まるで奇跡のように飛び込んできたこの復帰1球目を一生の宝物にしたいと思う。

まぁ、当然試合は負けた。





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