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ペンギンSFアンソロジー感想(ネタバレあり)

ペンギンSFアンソロジーとは

さまざまなペンギンたちに出会えました。秋待様がまとめてくださったリストを元に頭から読んでいこうと思います。思ったことをつらつら書いていくだけの感想です。

ペンギンループ

喫煙所にペンギンの映像で既にかわいい。かわいいをあますところなく堪能できる一方で、ループする三時間のふと我に返るような怖さ。短い時間なので対処出来る範囲がとても狭い。これが続いたら…と思わずゾッとするのですが、そうありたいと願った結果なら許せる?かも?ぺんぎんの鳴き声もかわいい。

世界の終わりとペンギンたち

穏やかな終末。終わりが迫ることでより日常を生きようとする人達の笑顔が眩しい。世界の薄暮のような、滲んで消えゆく景色を時折覗きながら、ペンギンと終わろうとする人類とを重ねるようで切ない。「いい余生を!」晴れやかな言葉だなあ。最後にきゅっと涙でしめてくるのも好き。

ペンギンマンニンゲンラン

明日に向かってペンギンがラップをキメている、ように聞こえる音の良さ。言葉に含んだ熱と吹き抜ける風の冷たさの対比が熱狂と現実を突きつけるようでかわいいは正義だと思います。武器をよくわかってる。なんかこう、ロックだなあ。

人鳥たちの星

トンデモ論文が与える社会へのペンギンショック…で「ほんとになりそう」とちょっと笑っていたら最後で肝が冷えました。どこかの惑星を思い出します。もしかしたらこのペンギンSF企画も彼らによる…?長い戦いの過程で今自分はこの物語を読んでいるのかもしれないですね。いやそれじゃ機密漏洩か。

講義─ペンギン学史序論─

冒頭からずっと笑ってた…ここからペンギン学史で一冊本を作れる勢いの歴史の積み重ね方。これが後世にまで残れば「ペンギンとは」と謎の歴史を過去に作ることが出来るわけですね。ロマンだ。最後にあなたが語るか、とひっくり返りました。だから「ペンギン学史」が成り立つのか~。

僕はペンギンを見たことがない

はー読んだ、という満足感でした。ペンギンを見たことがないから、それは無である、という考えは寂しい。そうではないよとペンギンの存在を思いながら縁のような、見えないものばかりの方が多い世界にゆったりと身を浸す主人公の心持ちが好きです。はー読んだ。

ペンギン、浜辺で恋を拾う。

ペンギンであることでいや増す孤独ってあるんだなあ…。川岸を人と話しながら歩いていることで、清美さんの日常がそれなりに楽しいものである一方、彼女が最後の一羽である寂しさが際立つ。「イナカ」と「トカイ」とか分離されるものの多い世界で、ようやく出会えた一人と幸せになってほしい。

ペンギンよあれが巴里の灯だ

でっぱな人間ディスってくるのいいですねえ。チャールズとアンって(笑)表情が豊かで擬音が「ぴょんぴょん」「ぺちぺち」とかわいい。とにかく終始アクセルベタ踏みでブレーキ壊れたようなテンションで読ませるのが凄い上、嘴の端々に宿る詩的な表現と博識ぶりで時折訪れるクールダウン。よく動く点Cはなるほどチャールズだったんですね、それなら動くわ。

ペンギン星を中心とした朝貢システムと貿易の実態

ページが見つかりません( ノД`)…🐧

可愛い世界の神様たち

世界の美しさを堪能するファンタジーだなあ。ウェタの孤独を思えば寂しいのですが、背景に広がる機械船都市や茫漠とした水の世界、そして宇宙と、彼女が一人で進むことでより世界の美しさが際立つように感じました。波が漂うように物語の空気を作っていくような。

希望と僕

蹴りだされた卵と自分を重ねてしまったのか…。電気を失った世界で〈希望〉が光のように旅を照らしている。「僕」とのでこぼこに妙にはまった親友のような気安さが読んでいて楽しい。下手な語り部なんてとんでもない。希望との旅がいつかは「僕」の家族へと繋がりますように。じわじわ胸が暖かくなる。

可愛いペンギンには旅をさせよ。そして、舌を肥えさせよ。

なんでペンギンはこうもカクテルが似合うのか…(飾られる方じゃなくて飲む側で)。彼らならではの言葉が面白いです。アウトロー感が滲み出る中、舌を満足させる旅が彼らの未来への旅でもあったんですね。ケープとマスターの声が渋く再生されてかっこいい。そしてお腹が空く。

ペンギン・ボックス・パラドックス

メタの世界観が面白くて、人がそこへ向けて拡張しているというのも今に通じているように思います。冒頭のミステリ要素でワクワクしたところで飛び出すペンギン。…三話目でちょっとホラー要素入っているような…ペンギンを見て「不気味」と思う日が来ようとは。話が進むごとに紺の現実も明らかになっていくのが面白い。不気味にドキドキした後の最後に笑った(笑)話も世界も構造が面白いな~。

ペンギンコード

「ぼく」の泳ぐ海は静か。氷、深海、あたりに何ものもいない海を想像するからかな。そこでフリッパーをかくように、泡をこぼすように言葉を落としていく。言葉が自由にどこまでも泳いでいく。生きやすいとはどういうことなんだろう。何にもぶつからない海はずっと凪いでいるのかなあ。その海の上で小舟に揺られるくらいは許される動物がいたらいいなと思いました。

ペンギンのパン屋

ペンギンが当たり前にご近所で生活している世界を台詞一つで飛ばしてくるのいいな~…と思ったら自分の先入観をぶっ叩きたい。鯵のあたりで気づきました。そうだこれはペンギンSF。当たり前にいるんじゃないそこにいる!卵なしはペンギンだからこそで大きく納得。それが「僕」の生活を変えるのも面白い。コウテイペンギンのギャグが光るパン屋行きたい。

電脳ペンギンは青図に可愛いを描く

シロさんのオタク感が数行で加速していく(笑)南極大陸地下に様々な鳥、と風景はファンタジー。ペンギンアバターの稀少性かあ。ペンギンが持つ何とも言えない孤独さって寂しさに通じるけれど、稀少性となるとそれが犯罪を呼ぶんですね。すぱっとした終わり方にちょっとびっくりしましたが、モモらしい。この仕事が終わったら一生ログインしないと言ったよね、と背中が語る。

海が消えた日

フーの作る龍やライオンを透かして見る、って動作が好き。フーに光を見ているような。折り畳まれた世界で探したい相手かあ。SF要素が絡みながら「ぼく」がフーとの過去を手繰り寄せて、未来に昇華させようとしていく。いや昇華はできないのかも。繰り返す鳴き声に「ぼく」は時々に耳を傾けたくなるだろうし、そう思いたくなる世界が綺麗でした。気持ちがぎゅっとなる。

さよならスイートピー

概要で笑ってる。なんでも許せるので大丈夫です。…全地形対応車の天蓋、これだけで乾いて冷たい風に晒される頬を感じる。こちらもSF要素満載で美味しく、「歩いて、あるいは泳いで」の一言で済ませるのも好き。スイートピーの花言葉は「門出」「別離」「ほのかな喜び」「優しい思い出」。最後、ピーはハー自身に向けてあの言葉を届けることが出来たのか。再会は心の中でのようにも見える。

イワシが落ちる

ゴローさん何でもできる…。ペンギンたちが飛行機を作る姿はともすれば健気なものですが、これはツバサとゴローの青春。飛行機が飛ぶ瞬間は某コンテストのように手に汗握る。と思っていたらフランク…!おまえ!!なんだよ素直になれないだけか!最後は爽やかに友情が飛んでくる素晴らしいペンギン青春でした。飛べない鳥たちの飛行機はどんなだろう、見てみたい。

ペンギンの方舟

かっこいいSF要素がみっちり詰まっている。新式の時刻表記、方舟、遺伝子情報、と硬派な物語が進んでいく。イーリスの言葉遣いがかっこいい。そこへ飛び込むペンギン。アクションの見せ場を持って行くペンギン…!ジョシュアでなくともたまげる上、その後の展開に更にたまげた。ペンギンがそうくるか(笑)イーリスとジョシュアのコンビがいい感じ。

ほの明るい空の下で

木星開拓の流れをこうして書けるのすごいな…。建造物や巡視艇の構造も緻密で、この細やかさが話の密度を作っているのか。首をしゃくってみせる艇長かっこいい。判断力に優れ気遣いも出来るこんな上司がほしい。アルフの笑顔かっこよくないか、と思っていたら最後~。寂しいけれど、ただ、でも、もしかしたら、と思ってしまう。いつかは会える気がする。変化し始めた星なんだから。

合否前夜

中学受験大変な…小学生の身空でこんな作文を書いてと言われたら何を書くだろう。「わたし」がぺんぎんのことを追いながら、自分を追いかけている。文章を読み進めるうちにシャーペン(もしくは鉛筆)の走る音が聞こえる、消しゴムで消した跡も見える、熱のこもった文章を読むのは楽しかったです。きっと受かっているはず。おじいちゃんもよくやった、と笑っている。

Welcome to PENGUIN LAND!

ペンギンの雛を拾ったら、のチュートリアルが出来上がっている。アカリちゃんすごい。この子が受けてきた傷の数々を思うと、ペンギンとの出会いは本当に救いだったんだろうな。終盤、話の空気ががらっと変わる展開に胃がぎゅっとなる。彼女自身が人間の世界に取り残されたペンギンのよう。人とは異なる時間の中に生きる彼女の笑顔はとても素敵だけど、少し寂しい。

ペンギン・プロジェクト

構成の妙。最初は厄介なオタクの会話を楽しく聞いていたはずが、別惑星の計画の推移を見守ったことにより、また別の響きでもって後半の会話を耳にすることになる。自分もプロジェクトの参加者のように。すると人の会話にわずかばかりの希望を感じてしまうのです。これがあまり他人事ではなく聞こえてくると、肝がひゅんとなりますね。

大気圏流氷に暮らすナギサペンギンたちがかわいい理由

「大気圏流氷」ってものがもう既にかっこいいんですよ。けれど冒頭は「ビー玉みたいにまんまるな星」となにやらかわいい。銀河クジラが、氷床が、雲が、絵本を読んでいるような幻想、寓話。それがまさかスペースサメハンターと繋がるとは…。話の雰囲気が好きだなあ。宇宙が暖かく感じる。いえ流氷の上なんですけどね。

ペンギンの国

手乗りサイズのペンギンがいる職場ってどこですか…!いいなこんな職場最高!と思った矢先にミニチュアペンギンの歴史を拝んでよからぬ空気を感じる。可愛くポップな世界が段々と濁って淀んだ世界に。見えてくるのは強烈な依存先がペンギンになっただけの日本という。最後の一文で気持ちよく刺されました。面白かった。

ジーランディアの使者

ジーラさんを見て(読んで)とても綺麗な人というかペンギンというか、秘めた悲しさは種族を超えてそのものを美しく魅せるのかもしれない。ジーラさんに呼応して現れたペンギンたちが台風に向かって突進していく姿は、自分たちが見守ってきた星を故郷と同じにしたくはないという決意が見えて熱い。バトンを渡されたノゾミの頑張りが楽しみです。

人間になったペンギンの話

カフカの「変身」のようだなあと思いつつ、そういえば読んだことがなかった。ソープランドで自身の確証を得るというのも面白いなあと思いましたが、だからこそあの終わり方なのか…段々と「自分」が崩れていく。はっきり怖いわけではない、振り返って確かめたくなるような怖さ。それが恐怖だと思い知るのは卵が孵ってからになるんでしょうか。

飛べないペンギン、空を飛ぶ!

ペン子の存在が、声変わりからなるこれまでの世界からの逸脱と重なっているよう。子供の時分に持つ狭い社会、クレイシュから飛び出した雛の後を追いかけていく雛の姿が見える。南極を飛び出してどこまでも突っ走ってついにはリングの空を飛ぶ。ペン子かっこいいな!こーれは面白かったし目が熱くなるし話の展開がすごい。話タイトルの九羽目のひよこは有賀君なのかなあ。

クレイジー小西

さっきは大西で今度は小西でこの流れは奇跡。一段落の中に情報が多くてそれがどれもこれもおかしくて、のっけから笑ってました。テンションが高い。しかも妙に言葉の選び方が詩的な所がある。記憶力もいい。これ本当?そうしたら最後でひっくり返った。もはやいたのかもどうかわからない人物が誰かの人生をささやかに変えるって面白いなあ。私の町にも居たかもしれませんね、小西。

人鳥

ペンギンについて特段の知識があるわけではないので、ほうほうと読み進めていたら…竜?おっとこれは面白くなってきました。教会のシンボルとなるペンギン、ということは宗教画も存在しますね。これは見てみたい。ちょいちょいフィクションと出てくるのも笑ってしまう。現実に対する反証のような、このペンギン史が後の時代の読み手に与える影響まで作品の一部になりそう。

コウテイペンギンのヒナはまだ海を知らない

極彩色で語られる海の表情が好き。またたきの内に消える光を追っているような。時間も次元も渦潮のように入り混じって混然とする中、途切れ途切れに続く「エマ」と「コウテイペンギン」のやり取りが家族の形態が変わった世界で、連綿と愛情を繋いでいく。大きくてささやかな物語でした。優しい。

すこしふしぎなペンギンとヤンキーのおはなし

えっ、ペンギンにはたかれると大根折れるくらいなの?迂闊にはたいたら怪我人が出る…。ヤンキーとペンギンの組み合わせが面白くて、そういえば両者は歩き方が似ているって話があったような。着ぐるみを着ていたのはかつての自分だったのか、それとも未来の誰かなのか。またな、の言葉がふんわりと大きく高遠の可能性を包んでいるようでした。

このゆびとまれ

バットマンのペンギンに似た彼氏とはまた…味のある。タイトルが全部平仮名の話はホラー要素強めのものが多いと思っているのですが、ペンギンと呼ばれる先輩との駆け引きからなるかくれんぼが楽しかった。影が薄いことを武器にした最強のかくれんぼ。部室はどこだろう?と思っていたら最後雰囲気が一転したのでたまげた。

ペンギンは火星で眠る

生活のいたるところに突如として現れるようになったペンギン。言葉遣いが素敵だな~マドモアゼルですって。コウテイの視点で見る世界が繊細。段々と「私」への眼差しが温かなものへと変わっていく。やっぱり宇宙で一番強い力はこれなんだ。彼らの短くて長い旅の風景が美しかった。コウテイは結構ロマンチストかもしれないですね。彼にとって「私」は永遠にかわいいお嬢さんなんだろうな。余韻も好きだなあ。

ペンギンはなぜ空を見上げるか

やりそう、ありそう、そうなりそう…最後までずっと笑ってる。日本の地へこのペンギンがやってくることもあるだろう。熱狂が渦を巻いてあれもこれもと銀河まで巻き込んで、なんかもういいなあロックだなあ。全力で駆けて行くために緻密に積み上げられた話を眺めつつ、その足元で今度はパンダの目が光っているのでもうだめでした。笑って外で読めない。

【考察】かつてこの星にいた「ペンギン」なる生物についての考察

ペンギンは支配者という議論にまたまた~と思いながら読んでいたのですが、中盤過ぎる頃にはいやそうだな?と考えを改めました。すでにある言葉たち、人間のペンギンに対する接し方、自分たちが当然のごとく享受してきた現実は全てペンギンの支配によるもの。だからこうしてペンギンに関する物語や議論が白熱するのか、と妙に納得してそしてこれも笑って外では読めない系でした。

我が輩はペンギンである

やっぱり大根砕けるんだ…(二度目)数あるペンギンによるペンギンのための考察かと思ったら、ルビが違う。そして段々とSF味がにじみ出てくる。始めはもっと穏やかな風味と思ったら、終盤でだいぶ変わる。そうすると我輩は、と繰り返してきた言葉の意味もまた変わってくるだろうかと思わず読み返しました。言い聞かせているように感じる。

ペンギンを知るということ

メタ?エッセイ?から、すうっと世界の色が変わって面白い。本当に滑り台を滑り落ちるように突入する。SFだ~とニヤニヤしてしまう。そしてここでもサメ。私たちが見てきたサメ映画や宇宙のあれは概念エラーだったのか。エラーペンギンたちが妙に所帯じみててかわいい。腰大切にね。概念エラーに加担した身としてはいわしを差し出すしかないかな…

夢見るペンギンと夢見る人間たちのハネムーン

ペン太くんのとても流暢で優しい言葉遣いが営業用と知って安堵。人の心配をよそに拳とフリッパーを突き合わせるコンビの呑気さは真剣さでもあり、それがツムギも変えてしまう。夢を語る姿が眩しい。ってペン太ーーー!?強欲の作った幻想とそこに宿っていた魂のようなものの無邪気さ。最後は良かった、良かったよ。ペン太もリョウスケもツムギも良かったねと最高の笑顔の写真でした。面白かった。

ペンギン先生の講義

私も助手になって先生を演壇から降ろす仕事をやりたい。講義を受けているので時おり漢詩が混じるのが面白い。調べてみると荘子、李白ですかね。ペンギンを夢見るペンギンなのか、人を夢見るペンギンなのか、ペンギンを夢見る人なのか。胡蝶の夢ならぬペンギンの夢、夢の中にいた先生はアスファルトの大地で小説を書いていく。先生の講義をちょっとでも受けられて楽しかったです。

ペンギンホーム

帰宅したら動物の家族が増えているってもうドラマですよね。それがペンギンともなればお父さんでなくとも興奮する。ペン太郎のおかげで変わる日常。一時預かりとはいえペンギンを迎えるのだから当然生活は変わるものですが、その後の皆の人生までもそっと変えてしまうペンギンの力たるや。お父さんのキャラクターがいいなあ。ペンギン省が何なのかも気になります。

人鳥ゲームリプレイ

宇宙に大気が満ちる。かっこいい、どうしたらそんな発想が出てくるんだろう。地球滅ぶんですけども、大気が満ちればそうなるかと納得のいく崩壊。魂たちの会話が推理ゲームになっていくのも面白かったです。そういう娯楽性は種族を超えたコミュニケーションが取れるようになったから発揮できるのかな。命をなくして初めて仲良くできたもの同士の、終わりの旅を彩るゲームが優しい。

ファーストペンギン

家、という単語が出てくるとペンギンか?と思うくらいにはこれまでの旅路で学んできました。謎の像の下から現れた不思議な数字たち、考古学だロマンだ解読だ。古代文明とはもしやと思ったら…。石碑を読むごとに二人の輪郭が明らかになっていく。ファーストペンギンが繋いだものが自分の中にあると知った時、隣の誰かと三本指の手を繋ぎたいと思うよね。

ペンギン的思考

あ~なるほど!最後まで読んでタイトルと「まるでペンギンが人間を見るように」の言葉の意味がわかりました。駅での異文化交流楽しいですね。今は観光客の方も多く来ていることだし、と思いきや。確かに自分の英語力に絶対の自信がなければ違和感を覚えながらも追及することはできないかも、と「ありそう」なリアルさ。けれどこれも「旅行者」の彼にとっては、と思うとちょっとぞくっとしました。

男爵ペンギンの言うことには。

いいですねえ、吾輩。おなご呼び、いいですねえ。かわいい。ペンギンの恋愛事情、どこかで見たことのある図のような。けれど男爵待って、愛憎塗れたとか胸を張らないで。かわいいぬいぐるみの姿で…!でも若さゆえの過ちもあったのですね。だからこそ黙っていられなかったのか。お似合いの子が隣に来たら、今度は大事にしてほしい。

空の果てをめざしたペンギンと竜のはなし

オズの魔法使いだ、アル〇ゲドンだ、と随所でニヤニヤしていました。ペンギンが竜にまたがって戦う、というのもいいですね。そしてパチンコ、飛行機、と夢が随所につまっている。最後はいくらかの物悲しさも漂わせ、しかし、星の海を駆けて行く竜とペンギンの背景に「虹の彼方に」が流れて終わるような、やっぱり夢を忘れさせない話でした。

あなたの声だけ聞こえない

子育て中のペンギンの心理状態がよくわかる、すごいなあ、ルーシーがんばれ。スーザンの狂気は今はわからなくても、雛を前にすれば皆と同じ母の愛が見えるもの、というのは大変な思い込みでした。生物であれば様々な形の愛があるわけですね。スーザンの行為はこれは狂気であるし愛だ。自分を消しても好きな人の側にいたいと思うのは。人鳥、という称し方に改めてしっくりくる。

サザンライツの奇跡

うっとりするような愛の言葉に聞いているこっちが赤面してしまうのですが、囁く相手の反応が見えないのはなるほど…。それがわかってからの言葉に含まれる切なさの量が段違い。(下)に移動したら切なさが超重量級になってるんですが、タグにコメディって入っていたのはこれもデコイですかね。うつろな世界の正体を知ってから痴話喧嘩へ発展したのが面白くて、けれどそれでも相手への愛を貫いて奇跡を信じる姿はかっこいい。コメディじゃないと思います。

海獣の日々

おっとこれは某コンテストの冒頭。機械が計算するように語られる言葉たち。分析するようにでしょうか。言葉や意味が分解され再構築されていく。途中で話の調子が激変して笑う。言葉のリズムが独特だなあ。お経、落語のような感じ。軽快に伝えられる世界の状況は決して愉快なものではないけれど、なんとなしに漂う夢へ手を振っている。

エウロパの人鳥匠

SF紀行文とでも言ったらいいのか、人の旅を見るのは楽しい。エウロパの開拓から現状にいたるまでの過程、そしてその中で生きている人々とペンギンの力強さ。竹の浮島はどこか夢のようで、風景や造形が浮世離れしている。かつての時代、かつての国の文化が息づいている懐かしさとそれがこういう所でしか見られない寂しさ。夢のような島の行く末がそれに重なる。写真に留めたいなあ。

月の鳥

まさしく人鳥の物語…思わず息がもれる。ペンギンであること、人であることの意味。淡々と語られる中に悲壮感はないけれど「なぜ」と問い続けることへの疲労、倦怠のようなものを感じる。ただそこへ寄り添う人がいて、鳥がいて、彼らが飛べる空は月にある。白っぽい月の光が優しく感じるようなお話でした。

ニンゲン、大地を跳ぶ

ペンギンらしいペンギンによる社会生活を見られるのが楽しい。陸族館、水族館もあるんですね。「私」の置かれている状況が現実に迫るものがある。失うことでしっくりくる何か。生き方、場所、自分であることを「まあこんなもんよ」と受け入れながら生きていく「私」の逞しさ。それ以上でも以下でもない、等身大に生きていく自由と覚悟が背中に見える。

NHPドキュメンタリー『スペースペンギン 〜光らない流れ星〜』

スペースペンギン、スペースオキアミ、スペースヒョウアザラシ…女性ボーカルの歌が聞こえてきそう(笑)ドキュメンタリーの雰囲気はなんとかアースを思い出しつつ、やってくるのはペンギン・マスドライバー。かっこいい。どこを振り返ってもスペースペンギンの生態を追う番組で面白くて、いつかの光らない流れ星に思いを馳せる。工兵ペンギンかわいい。

みつかいのしまへ

瓦礫の中に佇む子供たちはクレイシュに取り残された雛たちなんだろうか。ペンギンの姿が護るべきものの証というのも面白かった。「みつかいのはなし」は寓話的でどこか寂しく、自分と同じと思おうとしていた彼女はずっと別の景色を見ていて、カイは知識の箱を閉じた世界へ置いてけぼりにされた気持ちなのかなと思う。方位磁石がカイを指している時、それは同時に自分のいる所も指している、と彼女が言っているように思えました。

愛はすべてのとおり君でした

現実と回想と感情と、色んなものが渦巻いて、ぼんやりとした風景や影のないぱきっとした色の世界の中で、少しほわほわとしたものでいてもいい、と思えるかつての恋を追うような。ウラタくんは結構生きづらい人かもしれないなあ。雑然とした思考と言葉の連続、でも人間の考えることはこんなものかもしれない。それが丁寧に書いてある。これは結構な純愛では。

コンスタンティノープルのドンペンコーデ

シンギュラリティを突破いたしました。さらっと言うなあ(笑)はー面白かった。るなてゃのお陰でどんどん読み進む。ドン・キホーテからあのペンギンにいってそこから本家「ドン・キホーテ」へ発想が飛ぶのが凄い。それだけでなく推しの世界まで行けるなんて、次元も時間も超えてオタクはそうでなくちゃ。この物語自体がシンギュラリティ突破していてまー面白かった。

月とペンギンとチョコレート

ある夜の出来事。踊るペンギンとかもうかわいい。そんな酔っ払いの幻覚なら見たい。嫌なことがあった現実から飛んだのは酒だけでなく不思議な世界。チョコレートが繋いだのはあのお姫様でしょうか。おつきに大きな鳥を伴って、地上へ訪れたいと言ったのはお姫様のためだったのかな。チョコレートを手に微笑む彼女は物語の人ではなく等身大の女性らしくてかわいかったです。今度から飲み屋で貰ったものはすぐに食べずにとっておこ。

人鳥姫

生きるために泳ぐ。走るより泳ぐ。人がペンギンになったようだなあ。ユニカの目から見る海は怖いけれど日常、全て、生き方のような。色合いが綺麗。ミュイちゃんへ泳ぎ方を教えている時、自分を重ねて見ていたんですね。そして思い出す過去の記憶への繋がりがとても綺麗でした。未来に向かって潜っていく人鳥姫。心地よい潮の匂いと波の音が聞こえるお話。

ペンギンは二足歩行者の夢を見るか?

ペンギンと孤独の相性の良さはなんだろう。他人というノイズのない世界で単独調査に挑むフクシマに悲壮感や高揚感はない。自分がいるべき世界にいるために、やることをやる。孤独の奥底で誰かを探していたわけでは多分ない。ただそこに生きていた生物がひょっこり顔を覗かせにきた感じもするけれど、それを幻覚としたフクシマは、それらを拒むことで自分の人間らしさに心を温めて死んでいくのかな。


惜しむらくは消えてしまった幻の一作を読めなかったこと。その作品があったペンギンSFの世界線は閉ざされてしまいました…ここまでペンギンSFのようで楽しいは楽しいけれど。
ペンギンひとつでここまで色んな世界が派生していくものか~と面白かったです。
ありがとうございました。

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