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2021年6月23日(水)

 いままで幾度となく読んできた、夏目漱石の『行人』という小説。

 これまでは、裏主人公の苦悩や宗教に対する視点に気をとられていた。それが主題とばかり思っていた。

 しかし物語全体を大きな視点から眺めれば、一貫して「男と女の関係」「夫婦関係」が語られていることに気づく。

 語られているどころか、物語全体が、この「男と女の関係」を軸にして前進していっているとさえ言える。

 ほとんど全ての登場人物に、「男と女の関係」にまつわるなんらかの小話が付されている。

 サブプロットだと思っていた話が、実は全てメインプロットを構成する重要なパーツであったらしい。

 主題をまるっきり取り違えていたようだ。これはまことに情けない......が、この気づきによって全てがつながり、物語全体を統一して把握できるようになった感がある。

 どの視点に立つかによって、物語全体の解釈は大きく変わる。物語全体の解釈が変わることで、個別の話の解釈も変化する。

 これこそ、物語が「有機体」と呼ばれる所以ではないかと思う。

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