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科学的エビデンスの重要性: IPBESの「ネイチャー・ポジティブな未来へのナビゲート:生物多様性の具体的解決に向けたエビデンスの戦略的取り込み」報告書

IPBESは、生物多様性のIPCCと呼ばれる組織です。
そこが管理している生物多様性・生態系サービスネットワーク (BES-Net) から、「NAVIGATING TOWARDS A
NATURE-POSITIVE FUTURE Strategic Uptake of Evidence Towards Tangible Biodiversity Solutions 」と呼ばれるレポートが公開されています。
今回、勉強用に和訳してみました。

レポートの内容は、BESソリューション基金と呼ばれる、生物多様性を促進するためのファンドの活動報告書となっています。実際には、世界的、地域的、国家的な生物多様性評価から得られた知見を、持続可能な生態系管理のための実行可能な手段に変換することを目的とした共同イニシアチブの最初の適応国である8か国での実践レポートになっています。

しかし、印象的なのはレポートの中で出てくる「科学-政策-実践の相乗効果(science-policy-practice interface)」というワードです。

TCFDに関わるようになって改めて分かるのは、「重要なのは科学的エビデンスである」と言うことです。

そんなことは最初から分かってやっているのでは?と思う人がいるかも知れませんが、実際は2017年以前はそうでもなかった気がします。

古い話になりますが、日本の省エネが本格的に始まったのは、オイルショック以降です。石油への依存度を下げるリスク対応と、実際に省エネをすると燃料費が下がってペイする、というエンジ屋にとってはハッピーな時代が続きました。

その後は京都議定書。

この時期、初めて多くの企業が中長期の低炭素(脱炭素にはまだなっていない)目標を設定しはじめましたが、例えば「2050年にCO2排出量を1990年比で半減」の目標設定をしたいと担当者が思ったとしても、決裁申請書でその根拠を書くのに苦労されたのではないかと思います。だいたいは、「競合の削減率に+数パーセント」で経営層の競争心を煽ることくらいしか、決裁申請書を通す手段がなかった状況でした。
レポートの内容は、BESソリューション基金と呼ばれる、生物多様性を促進するためのファンドの活動報告書となっています。実際には、世界的、地域的、国家的な生物多様性評価から得られた知見を、持続可能な生態系管理のための実行可能な手段に変換することを目的とした共同イニシアチブの最初の適応国である8か国での実践レポートになっています。

しかし、印象的なのはレポートの中で出てくる「科学-政策-実践の相乗効果(science-policy-practice interface)」というワードです。

TCFDに関わるようになって改めて分かるのは、「重要なのは科学的エビデンスである」と言うことです。

そんなことは最初から分かってやっているのでは?と思う人がいるかも知れませんが、実際は2017年以前はそうでもなかった気がします。

古い話になりますが、日本の省エネが本格的に始まったのは、オイルショック以降です。石油への依存度を下げるリスク対応と、実際に省エネをすると燃料費が下がってペイする、というエンジ屋にとってはハッピーな時代が続きました。

その後は京都議定書。

この時期、初めて多くの企業が中長期の低炭素(脱炭素にはまだなっていない)目標を設定しはじめましたが、例えば「2050年にCO2排出量を1990年比で半減」の目標設定をしたいと担当者が思ったとしても、決裁申請書でその根拠を書くのに苦労されたのではないかと思います。だいたいは、「競合の削減率に+数パーセント」で経営層の競争心を煽ることくらいしか、決裁申請書を通す手段がなかった状況でした。

これがようやく風向きが変わるのが2017年のTCFD最終提言の開示以降。

シナリオ分析をする中で、初めて真面目に温暖化やその影響に関する研究成果に目を通した、と言う人は多かったと思います。(私もその一人です)

TCFDが大きい意味を持っているのはこの点です。

企業の中で、脱炭素目標の決裁申請を書く際に、様々な研究成果をベースに説明できるようになったことで、一気にストレッチした削減目標が社内で通るようになり、また経営層も「なぜ燃料費削減だけでは今すぐペイしない省エネ投資が必要か」を、株主総会で説明できるようになった訳です。

但し、現時点では、「エビデンスに基づく政策・企業戦略」が出来ているのはCO2削減だけです。

「科学的エビデンスに基づいた政策」も「科学的エビデンスに基づいた実践」も、相当心もとない状況と言えます。

例えば、15年以上前に大騒ぎとなったEUのReach規制。

セロテープですら、貼るときに化学物質が空気中に出るからアセスメントが必要、などという話があり、大騒ぎとなりました。しかし、最新の研究成果では、マイクロプラスチックの最大の発生源は、実は靴底なんですよね。地面とこすれてマイクロプラスチックが発生するわけです。
レポートの内容は、BESソリューション基金と呼ばれる、生物多様性を促進するためのファンドの活動報告書となっています。実際には、世界的、地域的、国家的な生物多様性評価から得られた知見を、持続可能な生態系管理のための実行可能な手段に変換することを目的とした共同イニシアチブの最初の適応国である8か国での実践レポートになっています。

しかし、印象的なのはレポートの中で出てくる「科学-政策-実践の相乗効果(science-policy-practice interface)」というワードです。

TCFDに関わるようになって改めて分かるのは、「重要なのは科学的エビデンスである」と言うことです。

そんなことは最初から分かってやっているのでは?と思う人がいるかも知れませんが、実際は2017年以前はそうでもなかった気がします。

古い話になりますが、日本の省エネが本格的に始まったのは、オイルショック以降です。石油への依存度を下げるリスク対応と、実際に省エネをすると燃料費が下がってペイする、というエンジ屋にとってはハッピーな時代が続きました。

その後は京都議定書。

この時期、初めて多くの企業が中長期の低炭素(脱炭素にはまだなっていない)目標を設定しはじめましたが、例えば「2050年にCO2排出量を1990年比で半減」の目標設定をしたいと担当者が思ったとしても、決裁申請書でその根拠を書くのに苦労されたのではないかと思います。だいたいは、「競合の削減率に+数パーセント」で経営層の競争心を煽ることくらいしか、決裁申請書を通す手段がなかった状況でした。

これがようやく風向きが変わるのが2017年のTCFD最終提言の開示以降。

シナリオ分析をする中で、初めて真面目に温暖化やその影響に関する研究成果に目を通した、と言う人は多かったと思います。(私もその一人です)

TCFDが大きい意味を持っているのはこの点です。

企業の中で、脱炭素目標の決裁申請を書く際に、様々な研究成果をベースに説明できるようになったことで、一気にストレッチした削減目標が社内で通るようになり、また経営層も「なぜ燃料費削減だけでは今すぐペイしない省エネ投資が必要か」を、株主総会で説明できるようになった訳です。

但し、現時点では、「エビデンスに基づく政策・企業戦略」が出来ているのはCO2削減だけです。

「科学的エビデンスに基づいた政策」も「科学的エビデンスに基づいた実践」も、相当心もとない状況と言えます。

例えば、15年以上前に大騒ぎとなったEUのReach規制。

セロテープですら、貼るときに化学物質が空気中に出るからアセスメントが必要、などという話があり、大騒ぎとなりました。しかし、最新の研究成果では、マイクロプラスチックの最大の発生源は、実は靴底なんですよね。地面とこすれてマイクロプラスチックが発生するわけです。

ストローも、PETボトルも、マイクロプラスチックになる割合は非常に少ないけれども、目立つから(教育的効果も期待して)まずはここから、という嵐が吹き荒れました。

こういう「重大な場所ではなく目立つところを叩く」、ということが、EUだけではなく、多くの国でよく行われます。

EUですら、科学的なエビデスではなく、感情的に目立つところを叩く、をやっている訳ですから、日本やその他の国で「科学-政策-実践の相乗効果」をちゃんとできるようになるには相当時間が必要だろうと想像できます。

ちなみに、日本にはTCFDに熱心な企業が多いと思いますが、シナリオ分析をする際に国立環境研究所が管理されている「気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)」を参考にした企業は多かったのではないでしょうか。これだけの科学的エビデンスを整備し、一カ所から探せるようにしていただいたのは大きかったように思います。(ありがとうございます)

これに相当するものが、TNFDでも対応いただけると大きいですね。

「科学的エビデンスに基づいた政策」や「科学的エビデンスに基づいた実践」には、そもそもリテラシーも必要という意見もあるでしょう。(この意見には賛成)

とはいえ、「具体的解決に向けたエビデンスの戦略的取り込み」のためには、まずはエビデンスを揃えることが大事。

そして、TCFDでやったように、エビデンスを基にして、自然資本でもシナリオ分析を繰り返し、そのことで政策決定者も企業も学んでいくことが必要ですね。


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