#3 修繕作業のはじまり トイレ掃除とわたし
残置物の処分
物件の決済は11月中旬だった。
残置物が大量にあっため、先ずはその処分から始めた。
友人と手分けして、作業を開始した。
大家業でFIREを達成した知人のアドバイスを受けながら、とりあえず残置物の処理から開始。
先ずは市指定のゴミ袋にゴミを放り込む。ゴミ屋敷清掃のYouTubeは、見るだけなら一瞬で片付いて気持ちが良いが、実際の作業は全くの別物だった。
ゴミの廃棄以外に、大きな家具や置物の写真を撮影し、ジモティに掲載した。こんなものまで引き取る人がいるのかと、驚いた。
エアコン(室外機)や鉄の価値を知らず、全て無料で掲載した。
無料でエアコンを渡す代わりに、比較的新しい中古エアコンを安値で譲ってもらった。
売れない家具はリサイクルセンターに持ち込み、廃棄した。その都度軽トラをレンタルした。
ある日、廃品回収業者を呼んだら、その場でどんどん料金が上がっていった。
チクショー、やられた。
自分でリサイクルセンターに持ち込んだら、1/20程度で処分できたはずだった。
ゴミ袋の数は優に100枚を超える。ひょっとしたら200枚になるかも知れない。数える暇もなく、ひたすらゴミ袋に詰めた。
そんなこんなで、とりあえず家をスケルトン化した。
週末2日間の作業を1か月半ほど要した。
お宝が眠っているかと期待したが、儚く消えた。
スケルトンになっても、水回りは汚く、貸し出す状態に仕上げるには程遠い。クリスマスも作業を行い、年始からは清掃作業は本格化する。
3月中に全て仕上げ、4月からの貸し出しが目標だった。
修繕作業
年始になり、修繕作業を本格的に開始した。
といっても、掃除と壁紙の貼り替えがメインである。
壁紙は、あまり汚れていない箇所はペンキ塗装で済ませた。あまりにも傷んでいる壁紙は、貼り替えを行い、和室×2部屋は、畳も表替えと襖、障子の貼り替えを行った。
文字に起こすと短いが、壁紙を剥がす作業は面倒だった。綺麗に剥がさなければ、新しく貼る壁紙にシワが見えてしまうらしい。首を痛めながら、少しずつ作業を進めた。
トイレの神様
トイレは洋式だった為、シンクを外し、磨く。陶器は汚れが目立ちやすいが、掃除は容易である。トイレが綺麗になるだけで、かなりイメージアップになる。
汚物がこべり付いたシンクを掃除している時は、色々と考えさせられた。
わたしは、どこかの企業にコミットするのは、好きではない。
どんなに企業で頑張っても、給料へ反映されるのは、たかが知れている。
仕事の報酬は仕事というが、わたしは働きたいのではなく、稼ぎたいのだ。
「最小限のインプットで、最大限のアウトプットを得る」
最近のゆとり世代だが悟り世代には、わたしのような思考の人が多いのではと思う。
振り返ってみると、そこまで苦労をしたことが無い学生時代。手前味噌だが、大学もいわゆる難関大学を卒業し、新卒では一部上場企業に入社。海外駐在枠もあり、そのまま勤めていれば「安定」は目に見えていた。部長になれば年収は1,500万円ぐらいだろう。
然しながら、当時デスクの隣に座っていた上司のようになりたいかと20代の自分へ自問自答をしたら、答えはNOだった。仮に総合商社に勤めていても、同じことを思ったであろう。
新卒から3年間勤めた会社を辞め「自分の力を試したい」という漠然とした気持ちでベンチャー企業に転職をするも、ホワイト企業から超ブラック企業へ転職。
ベンチャー企業の若手社長や経営陣は、さほど年齢も変わらないのに、優秀だった。
しかし、その企業のビジネスでは、1,500万円どころか、1,000万円も稼げないのは明白だった。
結局、ブラックな働き方が嫌になり、中小企業ではあるがホワイト企業を探し、再度転職した。そのまま新卒で入社した会社に勤めていたら、今の倍近い給料は貰えていたかもしれない。
学生時代の友人は、一流企業に勤め、子どもがいる人も多い。わたしより高給取りに違いない。やはり堅実な会社員生活を送っていた方が良かったのかな、と思った。
いやいや。定年まで、満員電車に揺られて出社し、年に2,3回の長期休みを待つ生活は耐えられない。自分の未来は、今の上司のような姿か?
正月が終わった瞬間に、ゴールデンウィークを楽しみにし、ゴールデンウィークが終わればお盆を楽しみに待つ。そんな生活をあと30年も繰り返すことはできなかった。
過去にしがみついても、仕方がない。
新卒で得た「安定」を捨てたその後の人生が、「汚物付きのトイレシンクの掃除」と思うと、精神を揺さぶられた。
同時に、今の自分にはこの方法しか無い、とも思った。
汚物付きのトイレ掃除をすることで、3億円に近付くなら、いくらでもしてやると思った。
この勝負は、絶対に、失敗はできない。
汚物付きトイレ掃除は、わたしを精神的に強くしてくれた。
あぁ、やっぱり自分はプライドが高いな、と感じさせられた。
汚物と一緒に、汚れた心を洗い流せたような気がした。
※以下、汚物付トイレの写真につき、閲覧注意
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