メタバースで声も変身「バ美肉紅白」を見てきた!かわいい声を技術と筋肉で実現する歌姫たち - cluster
VTuberバーチャル美少女ねむさんが開いた「バ美肉紅白2021」を見てきました。2021年12月4日にメタバース「cluster」で開催したイベントで、出演者は全員、アバターやVRでかわいくなる「バ美肉」をしています。男声か女声に変換する技術を競っており、ボイスチェンジャーで機械的に変換するボイチェン組と、発声技術により変換する両声類組が戦いました。勝敗は会場で参加者がアバターの動きで投票する形式で、勝った方は「紅組」になります。短時間なら女声の発声が可能で、普段は疲労軽減のためにボイスチェンジャーを使って発声している蘭茶みすみが感想を書いていきます。
全世界のソーシャルVRユーザー約1200人を対象にしたバーチャル美少女ねむさん「ソーシャルVR国勢調査2021」によると、VRChatユーザーの14%が声を変換して利用しており、全体の5%が発声技術を、9%がボイスチェンジャーを使って音声会話をしています。アバターだけでなく声も「バ美肉」しているユーザーが一定数いるのです。私も女の子として存在するために声を変えています。
バ美肉の歌姫たちの魅力と技術
ボイチェンチームと両声類チームが交互に歌いました。
①バーチャル美少女ねむ(ボイチェン)
・『Virtual Stargazer』 (オリジナル曲)
・TWO MIX『JUST COMMUNICATION』 ※JASRAC : 03086381
力強く、胸から絞り出すような透き通ったお姉さんボイスです。RolandのM-100FXというハードウェアボイスチェンジャーを使っており、元の声を一切変化させずに1オクターブ以上上げているそうです。オリジナル曲『Virtual Stargazer』では、スピード感のある歌と伸びる歌声。『JUST COMMUNICATION』もかっこよく、ボイチェン特有の音質も「女の子になりたい!」という強い思いを感じさせてくれました。
②歌のおねにいさん「hal」(両声類)
・となりのトトロ『さんぽ』 ※JASRAC : 037-2273-2
・supercell『うたかた花火』 ※JASRAC : 170-7839-3
歌のお姉さんらしいほのぼのとしたのどかな歌声です。13年にわたって鍛え続けた両声類。『さんぽ』では、男声と女声を瞬時に切り替えて歌いました。透き通るような高く伸びる女声と、かっこいい男声のギャップがユーモラスです。『うたかた花火』では、透明感のあるお姉さんボイスで、夏の夜の切ない雰囲気を歌いあげました。長い積み重ねが作った歌声です。
③”男の娘”VSinger「もこねもこ」(ボイチェン)
・LiSA『Rising Hope』 ※JASRAC : 200-6353-9
・RADWIMPS『そっけない』 ※JASRAC : 241-6591-3
硝子のように透明感があり、儚く切ない歌声です。GFormとpitchproofというVSTプラグインを使って歌っていました。『Rising Hope』では、胸に秘めた思いを一生懸命ひねり出す叫ぶような歌い方で、歌声の強弱や透明感、勢いやテンポを使い分けて感情が込められています。歌に合わせた振り付けも歌手のようです。悲しげに歌った『そっけない』では、シンクルームを使ってリアルタイム伴奏も加え、高度な技術力を感じさせました。
④バーチャル未亡人「噛ませ戌」(両声類)
・『何度でも』 ※JASRAC : 121-1640-8
・『すてきなホリディ』 ※JASRAC : 091-3717-3
語り掛けるような優しく包容力のあるお母さんボイスです。声量があり、自然でふわりとした歌声です。halさんで両声類と出会い、あまちじょんこさんと出会い習得したといいます。『何度でも』では優しさと力強さを披露。強弱ややさしさの使い分けに感情が込められています。『すてきなホリディ』では子供に語り掛けるような子守歌や動揺のように落ち着く歌声を聴かせてくれました。
⑤自作キーボード系Vtuber 「月山縁」(ボイチェン)
・P丸様『シル・ヴ・プレジデント』
・山下達郎『クリスマス・イヴ』 ※JASRAC : 028-5352-3
しっとりとしたかわいいボーカロイドのような歌声です。Babyface ProなどのVSTプラグインを使っているそうです。裏声やフォルマントの変化など、両声類の発声技術も組み合わせ、アニメのような声を実現しました。『シル・ヴ・プレジデント』では、キャラクターとして普段から使っている関西弁も取り入れて、ポップで甘くテンポのいい声を聴かせてくれました。『クリスマス・イヴ』では、ささやくような透明感のあるゆったりとした歌を披露。非現実的なかわいさが非常に強いバーチャル感を出しています。
⑥完全合法ろりあにき「あまちじょんこ」(両声類)
・『あわてんぼうのサンタクロース』 ※JASRAC : 000-2127-0
・宇多田 ヒカル『ぼくはくま』 ※JASRAC : 134-9660-3
アニメの幼い女の子が一生懸命歌っているような応援したくなる歌声です。『あわてんぼうのサンタクロース』を歌っているときは、男性の声から女性の声へ、幼い女の子へと段々と変化していく歌声を披露してくれました。高さを上げ、フォルマントを上げていく様子を喉の筋肉を動かしながら進めていきます。『ぼくはくま』では、男声と女声の一人二役の掛け合いを見せてくれました。両声類も慣れると喉の形を一瞬で変えられるようになり、こういう芸もできるようになります。動きも小さな女の子が一生懸命体を振って歌っているようでかわいらしいです。
⑦メンヘラ系最強ボイチェンおじさん「松尾悠里」(ボイチェン)
・松田聖子『赤いスイートピー』 ※JASRAC : 002-3832-5
・松浦亜弥『ね~え?』 ※JASRAC : 106-6355-0
自然でかわいらしい等身大の女の子の歌声のようです。しゃべり方も普通の女子高生のようで、『赤いスイートピー』では、胸を締め付けられるような恋心が歌われています。高音から低音まで透き通るような清楚な歌声です。Little AlterBoyというVSTプラグインを使っているそうです。1オクターブのうち8/12を筋肉で、残りをボイチェンで補っています。『ね~え?』では、生き生きとした純情な乙女心が、隣で語り掛けてくるような優しい声で歌われています。自然で声のバリエーションも豊かです。これぞボイチェン美少女の一種の完成形かもしれません。
⑧女性疑惑がたびたび噴出!27歳OLボイス「みるにぃ」(両声類)
・中森明菜『DESIRE -情熱-』 ※JASRAC : 09645080
・藤本美貴『ロマンティック 浮かれモード』 ※JASRAC : 10329439
力強くかっこいいお姉さん系の女性の声です。自然すぎて女性にしか聞こえません。『DESIRE -情熱-』ではスピード感のある高い歌唱力を見せてくれました。低い女性ボイスをかっこよく歌うという高度な技術。振り付けもかっこよく、踊りながら安定して歌えるところも長い経験と努力が垣間見れます。「推し」を作り、その歌い方を真似することが大切だといい、無理なく持続させることが重要だそうです。『ロマンティック 浮かれモード』では、高く、軽やかな歌声を聞かせてくれました。声のレパートリーが多く、長い経験を感じさせます。
両声類組が勝利「紅組」
アバターによる投票で、44対34で両声類組が勝利しました。まだまだ筋肉の方が強いですが、ボイスチェンジャーの技術も日進月歩であり、両者の戦いはまだまだ続いていくでしょう。ボイスチェンジャー組のうち、3人が筋肉も併用しているため、人間と機械の融合が進んでいくのかもしれません。もしかしたら両声類になる可能性もあるかもしれませんが…。
最後は出演者全員でバーチャル美少女ねむちゃんのオリジナル曲「ファントムセンス」を仲良く歌って、色とりどりの音色を見せてくれました。ボイチェンとか両声類とかもういいんです。みんな違ってみんなかわいい!何より、かわいい自分のなりたい存在になるために、本気で取り組んでいる人たちがこんなにいるのです。
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