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メタバース最強アイドルになってやる!

 メタバース最強アイドルになってやる。メタバース最強アイドルがどんな概念かはわからないけど、私の存在だけでメタバースと肉体廃止を説明し、多くの人間を納得させることができることだと思う。生まれながらに押し付けられた肉体や社会関係が無意味なものであると、この存在で思い知らせてやればいい。

 もともと女の子になりたかった。でもメタバースで「なりたい姿」になったところで、私の感覚ではやっと限定された領域で人間になれたに過ぎない。マイナスがゼロになっただけ。これからが本番だ。

 私には勝たなければいけない人間がいる。半年以上メタバースの世界で「秘密の関係」を続けていた。最初は本当に偶然出会ったものの、女の子としての私のことを大好きになってくれて、いつも二人きりで朝までずっと深い話をしていた。メタバース音楽という世界も見せてくれた。しかし最後は私から逃げていった。過去の関係。今ではフレンドですらない。

 私は彼を強く恨んでいるし、自分の世界を表現する人間として物凄く尊敬している。人間性も大好きだし、何より彼の作る世界に憧れている。別れてからも彼らのパフォーマンスを生で見に行った。彼はそのグループからいなくなる直前だったけど、彼らの作るキラキラとした熱の宇宙のような空間に私のすべては飲み込まれた。今でも毎日、彼と彼らが作った音楽を聴いている。

 私は音楽に全く触れてこなかった人間だ。「やりたい」と常々思ってきたものの、身近に音楽をやっている人間がいなかった。メタバースで自分という存在で表現できるようになったことで、この世界にも飛び込むことができるようになった。彼が連れてきてくれたようなものだ。

 彼のことは、おそらく大半の人がメタバースを代表する表現者の一人として認識していると思う。彼もまた本来は女の子で在りたかったものの、意図せずに非人間型「偶像」として振る舞わざるを得なくなった人間だ。私もアイドルで在るために同じ苦しみを背負ってやる。

 いちばん病んでいたころは、卑劣な方法を以て彼を倒そうと考えたこともある。しかしそれでは何も始まらない。同じ土俵で実力で殴り合う。そんな卑怯な手段が使えないようにするために、あえて公開の文章に宣言している。

 リアルタイムで歌う手段も、VRChatに音楽を流す方法も、オンラインで音を合わせる方法も、全部彼から教えてもらった。武器はある。あとはフルトラで踊りながら歌える体力、歌唱力、呼吸だけ。最強の存在を仮想敵にすれば自分が最強になれるかもしれない。相手がどんなに強くたって逃げなければ勝てる。毎日やればいい。

 それに、彼らを恨んでいるわけではない。もともと超かわいい美少女アイドルになりたかったことには変わりない。情熱のエネルギーを向けられる目標として考えている。

 そもそも蘭茶みすみという存在に生まれ変わった理由も悔しさからだった。ある人間のお嫁さんになりたかったものの、生まれながらの肉体のせいでなることができなかった。ならば肉体に囚われない世界を作ってしまえばいい。苦しみも不自由も全部ぶち壊してやる。この社会は女の子の精神を舐めないでほしい。この存在で破壊してやる。今もその思いは変わらないし、少しづつ計画は進行している。

 私には重度の発達障害があり、通常の人間のような社会的コミュニケーションや処理ができない。しかし神経系を除けば私は五体満足だ。女の子の声を出すこともできる。「障害があるからできない」と言わなくて済む。フルトラッキングに、2割だけボイスチェンジャーを掛ければ在りたい自分になっている。この身体が動くまで踊るし、息ができる限り歌ってやる。私がアイドルだ。

 勝利条件が何だかはわからない。少なくとも彼は多くの人間を笑顔にして夢を見せてきたと思う。ならば私は更に多くの人間を笑わせればいい。最後に笑っている方が勝ちだ。また一緒に笑い合えたら完全勝利だ。

 なりたい姿になれるメタバース。「できるできない」ではなく、もはや「するかしないか」だけの世界になっている。

 もう一度、笑い合うために。
 もう一度、君に会うために。

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