患者との出会いがわたしの人生を大きく変えた。


それは2年ほど前に入院していて、
以降定期的に入院してくるよく知っていた患者だった。


彼女は今も透析治療のために、
通院している。

少し厄介で、
看護師からは煙たがられている存在。


「お久しぶりですね!どうしたんですか?!」

名出して指名されたわたしは、患者に近寄って声をかけた。

「ちょっとね、相談があって。ここで話すとアレだから。」と端に呼ばれた。


「母がね、今度家に帰ってくるのよ。
   でも私透析があるでしょ?(昼食時に)インスリン注射打てなくて。
   それで施設に入れるか転院するかという話が出ていて。
   なんとかならないのかしら?」

と言う相談だった。


その方のお母様は認知症があり、施設に入所しておられた。インスリン管理ができず、何度か低血糖を起こして、自宅では生活ができないと半年ほど前に施設に入所したそう。しかし、コロナの影響で退所しないといけなくなったという。

おそらく、「なにか揉め事があったんだろう」と予測はできたが、
施設にいれないとなると困るのは本人も家族同様だ。

わざわざたくさん看護師がいる中で、
あえてわたしに「なんとかならないかしら?」と言っている。

もちろんなんとかしたい。
でもわたしは組織にいる一看護師。
勝手なことはできない。


でもこれがキッカケになるなら…という思いもあった。


でも口から出た答えは
「〇〇先生に一度相談してみましょうか?」だった。

本当は
「わたしが行くよ!」と言いたかった。

でも言えなかった。
なぜなら、組織の一看護師だから。
ツテもない組織の中でしか繋がりのない看護師だから。

もしも保険外の繋がりがあれば、すぐにアプローチをかけることができた。
でもその人脈すらない。悔しかった。


そしてお母様の試験入院が始まった。

結果は全然ダメ。


認知症が施設に入ったことで加速し、さらには目も見にくい。針が腹部に穿刺する前にあちこちに引っかかる。消毒したところじゃないところに注射を打つ。

イライラする看護師とできない患者。
非合理的なことを毎日繰り返す。


ここでわたしはある決断をする。


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