輪るピングドラム考察・Re.

題名なるままに。改めてしっかりと色々な情報と現在出ているメディアを見た上での考察です。劇場版(後半含む)ネタバレを含みますのでご注意下さい。



【ピングドラムについて】

これはもう命そのもの、というか、生命力でしかないですね。ただこの作品、生命力を林檎と繋げているのでまあそういうことですね。冠葉の箱にしか入ってなかった林檎(飢餓の上で見つけた唯一の食料、つまり生きる源)を分け与えた、という時点で。そしてこの作品では「運命の果実を一緒に食べよう」が運命乗り換えの電車に乗る為のトリガー。

つまり本来は晶馬はあそこで死んでいて、半分を分け与えた上で、更に16歳の時に(アニメ一話)陽毱へと半分を上げてしまったので、冠葉に残っている選択肢は「死」です。

つまり、ピングドラムを探さなければ本当に死ぬのは「冠葉」だったのだ、と思いました。陽毱の病気は元々避けられない道だったような気がする。けど、二人が運命を乗り換えること(ピングドラムを探すこと)を決意したのでまあなんというか。というかこの二人が「いなくなる」設定は最初から組んでたのではないかと。


【冠葉・晶馬について】
二人の話に当てはまる時。著宮沢賢治、銀河鉄道の夜のジョバンニとカンパネルラの話が劇中でも出てきますし、彼らのモチーフは本当にそうだと思います。恐らく物語をより深く読み解く為には当作の読破が必要なのですが、今回の焦点はどうやらその作品の中の「蠍(蠍の火)」に当たるみたいですね。何故プリンセスが冠葉の生命を「熱く燃える蠍の魂」と言ったのか、については、ネットで調べるだけで合点がいくと思います。

しかしもう一方の観点で、こちらにも当てはめていたのでは?と思っていた関係性が一つ。アダムとイヴの間に産まれた子供です。名をカインとアベルと言います。カインとアベルについては創世記を参考に紐解いていますが、カインが兄でアベルが弟。そして、カインはアベルを殺します。作中で、冠葉が晶馬に対して「ずっとこうしたかった」と、伝えながら銃口を当てたのは、ここから来ているのではないか?と推測します。余談ですが、カインはヤハウェ(後述)に楽園から追放され、子が死んだことを悲しんだアダムとイヴは新しい子供を授かります。そこで産まれたのが「セム」という子供で、唯一子孫繁栄しています。かの有名なノアなどもこの家系図に連なっています。つまりアダムとイヴには3人の子供がいたわけです。そうすると必然的にセムは陽毱になるのですが、ここはあんまり上手くピースが嵌りませんでした。参考までにどうぞ。

【アダムとイヴについて】
禁断の果実を食べて知識を知ってしまったイヴがアダムにも同じ果実を食べさせて、初めて「自分」を知るというお話は有名だと思いますし、その果実が林檎であることもご存知かと思います。では、今回誰がアダムとイヴなのか、という話になりますが。

ここは流石の監督なんでしょうか、恐らくイヴが冠葉であり、アダムが晶馬なのではないかと。根本はそうですが、「運命の果実を一緒に食べよう」と言った人間は全員イヴと捉えてもいいのかなと思います。そしてそんなイヴですが、実は林檎を食べる前に「蛇」に唆されています。この蛇の正体こそ、眞悧だと思います。この蛇は悪魔の化身だとも言われているので、彼の自称が「呪い」だとかそういうところも納得いくかと。蛇の正体は悪魔サタンとも言われていますし、反逆者の意味も持っています。あと、イヴに当てはまる人物を唆しまくってるのはほぼ眞悧なので、まあこれは当たりでしょう。そこで大事なのは、では誰がアダムとイヴ、カインとアベル、蛇に罰を与え、制したかです。それが創世記、人類の生みの親ともされている存在、「ヤハウェ」です。

【ヤハウェについて】
私は最後まで桃果、いや、プリンセスそのものの正体が分かりませんでしたが、創世記を紐解くことで全てが繋がりました。結論から言えば、彼女こそ全知全能、人類の生みの親である、ヤハウェだったのだ、と。神でもなければ為し得ぬ所業を淡々とこなすのはヤハウェだからでしょうね。

ヤハウェ(名前は諸説ありますが、ここではヤハウェとします)に関しては、Wikipediaを見ることで十二分な情報を得られますが、拾い上げると「自らが作りたもうた人類を愛している神」であり、諸説の中で「銀河より聴かむエボハ(ヤハウェの別名)のささやきを」などの文献が多数残されています。

決定打となったのは、プリンセスの「私は存在する」という台詞ですね。ヤハウェの由来そのものが「私は在るもの」という意味が含まれているそうです。桃果の姿はあくまで自らの子らの世界の秩序を守るための存在としての仮初の器で、輪廻転生しているのではないかと思います。なので桃果と引き換えに産まれた苹果もその器のうちの一つかと。「輪廻転生」についてや「三位一体」については調べていませんが、より深く調べていけばかなり深く読み解くことが出来そうです。参考文献を最後に記載しますが、そのどこもかしかもにこのワードは見られます。

【何故「輪る」ピングドラムなのか】
ここまで読むとお気付きかと思いますが、輪廻転生がモチーフになっています。漢字が「回る」や「周る」ではダメだった理由は、輪廻転生を基としているからです。これは銀河鉄道の夜もそうですし、創世記を紐解いても出てくるワードです。そして「運命」というキーワード、「蠍」というワードから、私は一つの考察を導き出しました。

これはタロットカード、占星術の「運命の輪」から来ているのではないか、と。勿論そこまで監督が意図したかは分かりませんが、タロットカードとしての運命の輪について調べることでいくつか合点がいきました。その点だけ挙げていきます。

前提として、ここではウェイト版と呼ばれるカードの方を参考にしています。
まずタロットカードといえば正位置、逆位置で真逆の意味が現れることはご存知かと思います。これについては調べればすぐ分かるでしょう。
ウェイト版タロットカードの絵に、四大元素についてと、ヘブライ語で反時計回りに読むと「ヤハウェ」の文字が書かれています。蛇の記載もあります。

必然か偶然か、恐らくここに全てが集約している、若しくはそれぞれの文献を書いたものがこれを基に読み解いていたのかもしれません。特に銀河鉄道の夜の著者である宮沢賢治ですね。

そしてそんな中に気になる記述として、「不動宮」なるものが存在し、そのうちの一つに蠍が含まれていることです。

【不動宮とは】
12星座のうちの4つがこれに該当します。牡牛座、獅子座、蠍座、水瓶座です。これは完全なる占星術の読みになりますが、それぞれモチーフの色や思想など、沢山の情報を得ることが出来ますが、やはり突筆すべきは蠍座でしょう。
蠍座は、「一途さ」「後戻りが出来ない」「(特定の物や人に対し)徹底的に関わろうとする力」を持っています。無論イメージカラーは赤ですが、四大元素としては水です。

残りの3星座も、恐らく紐解けば当てはまるでしょうが、恐らく不動宮である4人、というのはペンギンを連れていた4人(冠葉、晶馬、陽毱、真砂子)だと思います。この4人はそれぞれどこかしらの不動宮に当てはまる節があるはずなので、興味があればホロスコープ(占星術)をご覧ください。

【何故ペンギンなのか】
元々アニメ版の考察として、プリンセスとマリオの帽子がコウテイペンギンであることは示唆されていましたね。間違いないと思います、黄色とピンクの個体がいるようです。因みにペンギンの漢名は「企鵝」です。組織の名前そのものですね。

そもそもペンギンは集団行動をすること、またこれは監督ならではですが、同性同士での求愛行動をすることもあるようです。そしてペンギンそのものが「同性愛の象徴」でもあるそうです。

何故ヤハウェがペンギンに固執していたのかまでは今回紐解いていませんし、一度二つに分たれた理由も確かあったのですが、参考文献を紛失しました。(残念)ちゃんと理由はあるみたいです。まああの監督なら…うん…まあ…っていう感じですね。

【終わりに】
映画版の最後では二人が「輪廻転生」出来たのか、はたまた「少年よ我に帰れ」だったのか。それは監督が解釈の余地として残したものだと思います。桃果、いえ、神はこれからもああしてアヴァロンから世界を見守り、時には手を貸すでしょう。眞悧が「だよね」と最後に言ったのは、まあヤハウェに勝てるわけがない、ということです。彼女、絶対神なので。

彼女にとっては、ピングドラムを探させること、二人が「存在しなかったもの」になることも、全て何もかもお見通しだったのではないでしょうか。要は神様に良いように動かされたというか、救われたというか。そんな話だったのかなと。

選ばれたのが「7人」だった理由は未だ分かりませんが、それぞれの登場人物が本当の「愛してる」を得られて、ハッピーエンドとして真相も解明された、と思います。劇場前編は見逃していますが、それでもとても楽しい作品でした。

この記事が皆様の考察のお役に立てばと思います。終話。


【参考文献】
アダムとイヴ(Wikipedia)
アダムとイヴの家系図(ウェブ検索画像、Wikipedia)
カインとアベル(Wikipedia)
ヤハウェ(Wikipedia)
銀河鉄道の夜・蠍の火(ウェブサイト)
運命の輪・タロットカード(Wikipedia)
不動宮(ウェブサイト)
ペンギン(Wikipedia)
コウテイペンギン(Wikipedia)

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