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戻って来た生活

【入院日記3 2023年2月12日(日) 28日目】

 最初の教育入院からスタートした入院生活は今日で28日目。確実に一ヶ月を超えると思うのだが間に一度家に帰っている。金曜に退院して翌週木曜に入院なので全く病院にいない日が5日。カウントから外すとすればまだ23日、あと一週間追加してようやく一週間。とにかく前回、前々回の入院ともに2ヶ月以上の長丁場だったのを考えると短いものだ。

 昨日書いた日記を振り返るとあまりに病室の他の患者のことをこき下ろしすぎている、他にネタはないのかとも思った。しかし入院生活に次から次へと日記のネタになることなと起こるわけもない。

 隣のオッサンが夕べは寝苦しかったのか、随分とうなされていた。コイツはうなされていると大声を出す。数分おきに「うわぁ」だの「ああぁ」、「うぉおお」だのとただ声を出しているだけだが非常にうるさい。そして自分の出した声で目を覚ますこともない。こいつは寝ていても起きていても人に迷惑をかけることしかしていない。杖でひっぱたいて起こしてやりたい衝動に駆られる。

 こんな奴を隣にして自分ができる事はイヤフォンで大音量で音楽を聴くくらいだ。しかも並の音楽じゃダメでこんな時はP-Modelや平沢進くらいしか適当な音源がない。真夜中の病室で平沢進を聴きながらじっとしている姿は哀れ以外の何者でもない。

 こんな調子だったので眠れたのは当然だが1時過ぎくらいだ。しかも朝4時過ぎには向かいのジジイが何をいじくっているのか荷物をガサゴソ、周辺のモノに何かをぶつけてゴトゴトととにかく出さんでいい音を立てまくる。それに応じて隣のオッサンも声を出して溜息ついたりと、本当に就寝時間は地獄の時間だ。

 さて、今日は日曜日なので起床直後にコンビニへ行っても店が閉まっている。起床時間になってすぐに支度をし、デイルームでのんびりと写経をしていた。まだ真っ暗なデイルームの窓から東の方向が明るくなっているのが見える。最低限の照明だけつけて写経を始め、半ばまで来る頃には空もだいぶ明るくなってくる。コンビニを後回しにした時のルーティンは空が楽しめる。

 写経を終えるとコンビニまで行きコーヒーを買う。店の中にはいろんなものが誘惑をしてくるが、まずお菓子や甘いものなどの誘惑にはまるで引っかからない。サラダチキンやサラダなどが危険だ。しかし今回の入院ではそのあたりだいぶ頑張っている。コーヒーだけ買ってさっさとエレベーターに乗り5階に戻る。5階に戻った時の得も言えぬ勝利感が半ば虚しいのにたまらない。それももうそれほど長いこと入院しなくて済むことがわかっているからできる事だ。また自分はローソンとは相性が悪くて何を食べても大して美味しいとは思わない。なので魅惑的なものがあったとしても「どうせ美味しくないでしょ」と決めつけてその場を離れることができる(これは自分が10代の頃からずっとだ、でもローソンって本当に美味しくないよね)

 次にウォーキングだが今日もだいぶ歩いた。しかしスマートウォッチの具合があまり良くなくまともに計測できたものがない。トータルでは6㎞近く歩いているが、実際はもっと歩いているかも知れない。このくらい歩ける生活が退院後も続けられたらと思う。

 今日はついに抜糸ができ、担当ナースがちゃんと防水シートを傷口に貼ってくれた。僕がシャワーに入りたいことも、昨日は入れなかったことも知っているようでいろいろと先に手を回してくれたようだ。そして午後は久しぶりにシャワーに入る。感無量。入院中のシャワーは本当に大きなアトラクションの一つだ。問題がなければ毎日入ることにしているし、多少問題あっても前回の入院の時には入れるようになったらほぼ毎日シャワーに入っていた。

 今日は妻から差し入れもあったが、その中で追加のリステリンと爪切りはありがたかった。以前は爪なんて多少伸びていてもそれほど気にならなかったが、今はちょっとでも伸びてきたら切らないと落ち着かない。

 こうして今日も「昨日はできなかったこと」がたくさんできたと思う。抜糸も終わりあとは退院がいつぐらいなのか気にかかってくるが、あまりそればかり考えていると変なところで落とし穴があるかも知れない。普通に過ごしてればいい。残り僅かだとわかってる入院生活だから楽しむつもりで臨んでいるのがいいのかも知れない。我慢できないことも多々あるけどそんな時はそうさ逃げるんだ。逃げ道でさえも日々増えてきて昨日はなかった逃げ道も今日はいつの間にかできているように思える。

 もうちょっと、あともうちょっとでこの生活も終わる。トータルで一ヶ月を目前にし、一ヶ月を超えるか超えないかというところ。今日は入院生活を始めて28日目■


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