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療養日記 2022年3月7日 『アイドル』

 今朝は現在放送している「カムカムエブリバディ」の最初の頃の話を見ていた。たった二話程度なのだけどその頃のヒロイン、上白石萌音を見てふと思い出す。上白石萌音を見ていると我々世代はおそらく宮崎美子を思い出すかと思う、なんとなく雰囲気が似ている。しかし今日思いだしたのは宮崎美子ではなく伊藤つかさだった。宮崎美子は現役で今でもバラエティなどでも登場するので思い出しやすかったのだろう。けど上白石萌音と伊藤つかさ、わりと似ているかも知れない。

 伊藤つかさ、1980年代前半飛ぶ鳥を落とすような勢いのあった正統派アイドルだった。テレビをつければ見ない日はないし、色んな雑誌や広告などでも引っ張りだこだったとおもう。しかしいかんせん歌が下手すぎてアイドルにはありがちな消え方をしていった。

 当時高校生だった僕は部活の先輩から伊藤つかさのアルバム「さよなら こんにちは」のカセットを借りて聴いたあと、これ楽しめそうだと思って自分で貸しレコード屋でわざわざ借り直してダビングをした記憶がある。このアルバムを聴いたときからこれは鑑賞にはちょっと辛いなとは思っていたがそれ以上に楽曲が良かった。どの曲も耳には残る。それもそのはずでこのアルバムに関わったミュージシャンがあまりにもすごすぎると言うことを知ったのは後の話。そして今日YouTubeで改めて検索するとアルバムがまるまるアップされていたので35年以上ぶりに聴いてみた。

 相変わらず上手だとは思えない歌の合間にトークが混ざっていることに気がつく。当時レコードを借りたとき必要ないと思ってカットしたものをすっかり忘れていた。しかし歌は今でも覚えていた。

 このアルバムは先程も書いたようにスタジオミュージシャンがすごい。また楽曲提供もあまりに豪華すぎ。原由子、矢野顕子、加藤和彦、竹内まりや(コーラスにも登場している)、坂本龍一、大貫妙子、高橋幸宏。編曲には清水信之や大村憲司と豪華すぎるメンバーだ。また伊藤つかさ本人の作詞作曲の歌まである。サウンドも80年のあの頃を地で行っているし、歌によってはこれはYMOだろうと思うようなものまである。80年代前半の日本のポップスを紐解くには貴重な一枚… と言いたいところだがやっぱり歌がついていっていない。非常に残念というのが正直な感想。

 しかしカセットでこのアルバムよく聴いていたこともあってあの頃の感覚が蘇ってきそうなそんな気分にもなった。ロクでもない人間はこの頃からろくでなしだったことも思い出す。高校時代、悪ガキ収容校に入り、成績もひどすぎる中大学受験を目指すがそんな環境はまるで整っておらず自分で敢えてクラスの中で孤立するように努力していた。クラスの周囲と同調していたら絶対に大学には行けないと悟った。その時からちょっといい成績が取れると大げさに自慢したり周囲を見下すような態度をわざと取って嫌われるよう努力した。心の中でごめんと言いながら周囲を罵る生活を続けた。けれど部活の仲間だけは本当の仲間だった。お陰で大学に進学することもできた。しかし今でも同窓会には声がかからない。そんな孤立を選ばなければならない頃歌が下手くそだなと思いながらよくこのアルバムを聴いていた。

 話は伊藤つかさの「さよなら こんにちは」に戻る。このアルバムの錚々たるメンバーを今連れてきて似たようなコンセプトで上白石萌音に歌わせたらなかなかいいアルバムができるんじゃないのかなとふと思った。

 この時代、何がこれだけのアーティストを集結させてこれだけのアルバムができたのか。中心にいた伊藤つかさは何者だったのか不思議に思う。

 ちなみに当時、高校生の頃はYMOや周辺のテクノポップにどっぷりつかり、あまりアイドルというものを意識していなかった。しかしクラスの中にはやれ松田聖子だ、柏原芳恵だ、小泉今日子だと騒いでいる連中も大勢いた。その中には伊藤つかさもいたかと思う。僕は辛うじて中森明菜を贔屓にしていたが、やっぱり中森明菜よりはナイアガラを聴いて育ったほうだ。

 で、今日はどんな一日だったか。ダメ人間は遠い昔からダメ人間だったということを思いだし、昔良く聴いていた歌を聴き直していた一日だった。今日も体調は良くない■


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