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あなたに似合うと思ったの


「ララ!これ、プレゼント!」

唐突に差し出されたのは、小さな紙袋。

ありがとう、と反射的に受け取った私の顔から何かを読み取ったのか、
「遅くなってごめんね、誕生日おめでとう」

照れたように笑う彼女の顔をみて、可愛いなぁ、と思いながら、まだ自分のものになりきっていないその紙袋に視線を落とした。
見てもいい?と私が聞く前から、

「あなたに似合うと思ったの」

その言葉が、なぜか妙に心に響いて、一気に存在感を増したそれを持つ手に力が入った。

逸る気持ちを抑えて、抑えて、ずっと見ていたいとまで思ったその丁寧な包装を、ひとつひとつ解いてゆく。


待ち望んだその正体は、そういった類のものには無頓着の私にでも分かる有名ブランドのリップだった。
その全てが女の子のために作られたような華奢なデザインに、無意識に出たのは可愛い、の一言。

それを聞いて満足気な顔をした彼女に、まだ収まらないドキドキそのままに、ありがとうと、今度は自分の言葉で伝えた。

彼女がくれたそのリップは、ベージュに近いオレンジで、それまで挑戦したことのない色に、大人っぽさに、尻込みしながらも、彼女がくれた言葉に背中を押され、そっと唇に乗せてみた。


「ほら!やっぱり似合う!」


まるで自分がプレゼントをもらったかのように、嬉しそうに私を見る彼女。

つられて笑う、また笑う。

あなたに似合うと思ったの


なんて暖かい言葉だろう。

その一言で、私は1人じゃないと、
分かってくれるあなたがいると実感できる。

自然と言えるその関係に、どれだけ支えられているのだろう。


大切なあなたの、1番似合うを、
次は私が。

そしてこれからも、あなたの隣で私が届けるよ。

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