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アートと本とコーヒーと:アナザーエナジー展のこと

森美術館館長、片岡真実さんの記事が気になっていたので、先月末に足を運んだのが『アナザーエナジー』展です。(以下太字は、<HERO>森美術館館長片岡真実が語る「ベテラン女性アーティスト」時代に愛されるこれからのヒーロー像?より)

もはや、全世界の現代アートの全貌を把握できている人はいないと思います。

白人男性の視点によって作られてきた美術史を再考しなければならないという気運も高まっています。

ちょうど、私なりに美術史をかじりながら、中世から眺めても歴史に登場する女性芸術家は少ないなあと感じていたところでした。

世の中はとても早いスピードで変化し、それを表すように新しい言葉が次々と生まれていますが、多様性・ダイバーシティもそのひとつ。無視していては、いまを感じることはできないと思います。

『アナザーエナジー』展の見どころのひとつは、上下の写真のようにピックアップされたアーティストの言葉です。

人生を賭けて、自分の信じたことに取り組んできた人の言葉の力強さ・説得力の前に立ち止まらずにはいられません。

ロビン・ホワイトの言葉は、欧米の個人主義の価値観に染まったわたし自身を振り返り、また、東日本大震災以降の若い人たちの姿とも重なりました。

そうそう、この展覧会には若い人たちが多かった。最近、マスコミはよく「世代間の分断」を伝えますが、はたして、そうだろうかとも感じました。もしかしたら、分断され、取り残されているのは、伝えている当事者たちなのかもしれないです。(自戒も含めてです)

これは、コロンビア生まれのベアトリス・ゴンザレスの2019年の作品。タイトルは『悲嘆に直面して』。「アートは歴史が言えないことを伝えてくれる」という作家の言葉を通して、この作品を眺めれば、本当なら美しい自分を見るために向かう鏡に悲しみの姿が映っている……、その理由を想像します。

鏡を見るという行為も家具も女性にとっては生活の一部だからこそ、見る側はぐっと近づいていけるのだと思います。

最後は、三島喜美代の作品『92ーN』。緻密に作られた膨大な新聞の束。そこに込められたメッセージを読み解く前に、ただただ、ダイナミックさと精巧さ、そして美しさに圧倒されながら、作家の精神性に興味が湧きました。

1932年生まれの三島は、テレビで、足が動かなくなったらこうした作品は作れないだろうから、次は音楽を作りたい、というようなことを軽やかにおっしゃっていた姿が印象的でした。

書きながら飲んでいるのは、タンザニア産のマウントラングウ。駅前の「やなか珈琲」で焙煎していただきました。一口めより、だんだん甘みと深みが増していきました。(人間も、作品も、そのほう好きかも……!)

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