【ファンタジー小説】サンダーコレクター16
本日はお日取りもよく、ニャック吉川晃司のコンサートに行かれるそうで。
かなりテンションが上がっていた。
「るなてゃん!グッズ買ってくるからね!あとね、お土産話しめちゃするから、お利口さんにお留守番しててねー!」
チケット取ったって言ってたけど、あの姿で行ってるの?
入場出来るの?あんな生命体も。
というより、人間と同じような生活してるの??
言われた時は、圧倒されて疑問にすら思わなかったけれど、ふつふつと疑問が湧き出てきた。
🌩⚡️🌩⚡️🌩⚡️⚡️⚡️
今日もまた、バルたんのハンティングに同行することになった。
本日のお召し物はバロック風だ。
えーと、ファイナルファンタジーかなんかにいそうだな。
傘から雨粒がつるんと落ちる。一粒、一粒と。
雨粒が集って、水たまりになる。不思議なものだな。
ビニール傘に様々な光が反射して、その上を雨粒が走り抜けていく。
一筋の光を後に携えて。
まるで流れ星みたいだ。
プラネタリウムみたいにも見える。
何かを通してみることは、リアルじゃないと批判される時がある。
肉眼で見るからこそ、その場に赴いて立ち会ってこそでないと得れないものがあると。
確かにそうだと思うが、何かを通してだからこそ詳細に見れる時もあるし、違う見方も出来る。
レンズ越しや画面越しだからこそ、光り輝くものもあるのだ。
自分の見てる世界なんてちっぽけで、視野の狭いものなんだ。
だからこそ熱中するし、没入する。
自分の空間だけ雨が避けるように、雨を切り裂いてる感覚にもなる。
傘を差すことで。
モーゼが海を切り開いたように、今私は傘で大きな水たちを切り裂き、雨粒へと変えていってる。
そう捉えることも出来る。
ビニール傘はそんな様子を見せてもくれる。
様々な雨粒たちの弾け躍るサウンドを添えて。
思わず、傘を縦に揺らしたり、横に揺らしたり、くるくると回してみたりもした。
様々な新しい形や音を立てる。当たり前だが、ひとつとして同じ現象は起こらない。
でも文字にすると、ただ雨が降ってる中で私は傘を差して立っているだけなのだ。
ビニール傘越しに周りを見た。
いつの間にか、ハンティングが始まっていた。
ペッパーがレコードをかけている。
その音に合わせ、バルたんがたち振る舞っている。
まるで指揮者みたい。
キラーコメントの設営をする設計者でもあるかもしれない。
ビニール傘越しだから、レンズ越しに見てるようにも感じる。
近い距離にいるのに、なんだか遠い。
そんな感じがする。
たったひとつの薄いビニールで何か世界が変わるのだ。
とあるワンシーンに立ち会ってるような、覗いてるような、垣間見てるような気分。
コレクターさんたちはキラーコメントの隙間から、こんなふうに私たちを見てるのかなぁと思った。
それとも熱中していて、私たちの存在なんて見えなくなってるのかな。
吉川晃司のライブで夢中になってるニャックだって、隣の席の人や、会場の壁ことなんて頭に入らなくなるくらい、熱中してるはずだから。
私から漏れだした熱のせいか、ビニール傘が曇っていく。
息をしてるよ、ここにいるよって。
言葉にしなくても、曇り方で存在を知らしめているようだ。
私も仲間に入れてと。存在を知ってって。
蚊帳の外って感じがしたのだ。
誰かに、自分の存在を知って欲しいってこんな気持ちなのかな。
なんだか寂しさを感じた。
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