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DX白書2021①~DX戦略の策定と推進~

エンジニア/ITコンサルのキャリアを考える上で、「DX」からはあと数年は離れられないと思います。情報処理推進機構(IPA)が2021年にだしたIT白書(約400ページあります汗)から、個人的に気になった箇所を抜粋します。

一部自分の私感も交えるので、そこは予めご容赦ください。


DXの取組状況

日本はアメリカよりDXが進んでいない状況です。ただし、昨今の「海外と比べて著しくDXが進んでいない」という論調を思うと、思ったより差が生まれていない(一定取り組んでいる割合は約55%:約80%)状況と感じられます。

業界で見た際、情報通信業や金融業、(サービス業)はアメリカと比べてもDX進行度はそれほど遅れていないですが、流通業/小売業、そして特に製造業は明らかに遅れています。

DX着手中の企業のなかでは、2016年以前よりDXに着手している企業はアメリカは半数以上、日本では20%未満と、DXの着手の出遅れ感は否めません。
ただし、DX未着手企業の今後の取組着手時期予定は、特にアメリカと比べて遅れているわけではなく、各社の想定通りに進めば2030年までには追いつけそうです。

また、日本では1000名以上の大企業がDX割合が多く、中小企業が特にDXから取り残されています。アメリカでは中小も大企業に負けず(むしろ中規模企業のほうが)DXに着手しています。なので、日本は中小企業のDX推進を促進できるサービスとかが流行していきそうです。

DXの成果として、アメリカは成果が出ていると90%以上の企業が判断しているのに対し、日本企業は50%未満の企業しか成果がでていると判断できず、成果の判断ができていない企業が多く存在します。

また、デジタル事業(EC、IoT、AI等のデジタル技術活用した事業)を行っている企業の割合も日本は30%程度、アメリカは80%程度で、さらにその企業の中でもデジタル事業の売上比率は日本はまだまだ半分未満の企業が過半数です。

DX戦略の全体像

DX戦略を描く際には、「経営課題解決のためのデジタル活用」と「デジタル活用により新規戦略の模索」という2つの観点が必要です。以前は前者が主流でしたが、後者を経営戦略と整合性をとりつつ進めることが重要です。

また、DX戦略は全社横断で取り組むもののため、横断的な取り組みが可能な経営層がITリテラシーを高める必要があります。日本はIT見識のある役員が少ない現状があり、そこもDX阻害要因となっています。

外部環境の評価と取組領域の策定

DXではPEST分析や5F、3C等を用いて外部環境の変化を適性に評価し、対応していきます。DXを的確に具体的に行うには、まず経営層がこうした変化の認識等についていくため、知識をアップデートする必要があります。
例:AIやSDGs、ディスラプターが何を示してどう影響してくるのか

日本ではアメリカと比べると、外部環境の変化(特に技術の発展や気候変動、資源不足等)を「チャンス」ではなく「脅威」として捉えることが多いようです。ここをチャンスとしてビジネスに活用していけることが望まれます。

DXは以下3つの領域に分かれるが、日本はどの領域もアメリカに比べてまだ割合が少なく、特にデジタルトランスフォーメーションは日本は10%未満に対し、アメリカでは30%以上の企業が成功しています。

※配車サービスの場合
デジタイゼーション:配車実績情報のデータ管理
デジタライゼーション:配車業務の自動化
デジタルトランスフォーメーション:配車プラットフォームの構築

デジタル活用による提供価値は「消費/利用体験価値の向上」「消費/利用ハードルの低減」「安心/信頼感の創出」の3つがあり、経営効果等の詳細は以下の図に示されます。

DXではアジャイル体制が必要です(ニーズの不確実性、技術の適用可能性が不明瞭、予測困難な状況のため)。しかし日本企業はアジャイルを全面的に取り入れている企業が10%に満たないです。

企業競争力を高める経営資源の獲得、活用

DXは経営層、業務部門、IT部門の協働が必要で、その施策をリードするのがCDOです。適切なリーダーシップがないと、業務プロセスの個別最適化にとどまり、事業変革が不可能になります。

また、結果としてスクラッチ開発やPKGカスタマイズが発生してしまいます。不要となる業務プロセスとそれに対応するITシステムの廃止にまでつなげるためには、リーダーシップが欠かせません。

CDOの導入企業は20%未満(アメリカは65%)です(ただし金融業は約40%程度導入)。また、日本では組織の壁を超えた協業が完全にできている企業は5%未満と、DXをしているという会社でも一部部門にとどまっている傾向にあるようです。

本来経営/業務/ITが三位一体で新規事業実施にむけて動く必要がありますが、日本のIT部門は社内のITシステム業務の企画/維持がメインになっているようです。

DXでは技術者のスキルの陳腐化を防ぐ必要があるため、専門性評価の仕組みづくりやリカレント教育、副業や兼業による多様な価値観の育成、ジョブ型雇用(社外を含めた多様な人材の参画)の促進も検討すべき要素です。

システム開発の手法では、日本は受託開発×スクラッチorPKGカスタマイズが多い一方で、アメリカは内製化×SaaSやPKGの複数利用をし、IT投資予算や人材投入の抑制に結びつけています。

また、非競争領域では同業他社と協調し、共通プラットフォームを構築し、IT予算の削減とともに社会課題の迅速な解決に結びつけることも必要です。

一方競争領域では迅速な仮説検証のために、社内でアジャイル開発体制を構築する必要があります。こうした変革はすぐにはできないので、必要な技術ノウハウを提供する企業とのパートナーシップも構築する必要があります。

アメリカはよく内製化していると言われていますが、下図のように意外と非競争領域等で外部委託開発も活用しています。

業務プロセスをシステム化したSoRは、要求変化が緩やかなため受託開発しやすいが、顧客/社会接点をシステム化したSoEは、要求変化が捉えにくく激しいため、短期間に仮説検証を繰り返す開発がむいています。

そのため、SoEの受発注には要求や見積もりの把握が難しいためあまり受託開発に適していないのですが、日本ではSoEを内製化している企業は20%未満です(アメリカでは60%以上)。

内製化はすぐに移行できないため、ベンダー企業はアジャイルやクラウドネイティブについて技術提供し、共育/共創を通じて内製化支援することで、ユーザ企業の事業を深く把握し、新たなビジネスモデルを一緒に検討するビジネスパートナーになることが期待されます。

DXでは仮説検証が重要で、その際にデータの利活用が求められます。しかし日本ではデータ収集/分析いずれもほとんど出来ておらず、ここの強化が求められます。

成果評価とガバナンス

DXでは顧客への価値提供を成果評価する(KPIに定め、定期的に評価)必要があります。
例:アプリのユーザー数、DL数、システムのデリバリー時間

しかし日本ではこうしたKPIを毎週評価している企業は5%未満(アメリカ:30%程度)、一年で最低一回は評価をしている企業は40%程度(アメリカ:80%以上)と、顧客への価値が提供できているかがそもそも不明瞭な状況です。

また、企業の内外(株主含む)からのDX推進評価についても、日本は毎週評価している企業が5%未満(アメリカ:30%程度)、一年で最低一回評価している企業も50%未満(アメリカ:90%程度)と、そもそもDX推進を評価する習慣ができていない状況です。

コロナ禍を契機とした企業の取組

コロナによりリモート/Web会議はアメリカ同様進んだものの、SaaS活用やゼロトラストセキュリティ、XR、チャットボット、ECサイトといった技術の活用はアメリカと比べるとコロナでもあまり進んでいなかった。

ただしコロナを経た事業機会の今後の変化としては、日本企業もアメリカ同様にとらえており、DX/デジタル化をコロナをきっかけに加速化させていく予定であると推察されます。

まとめ(私感含む)

基本的にはDXがアメリカより進んでいない、という前提はまず正しいものだと思います。色々学ぶことがあったのですが、とりわけ個人的なものになりますが、

・業界でみた時、金融が(CDO設置含め)思ったより進んでいること、製造業が相対的に全く進んでいないこと
・DXが特に1000人未満の企業で進んでいないため、中小を狙っているサービス/Web系企業(SaaS系)の重要性が非常に増していきそう
・アジャイル体制を取れている企業がほとんどないため、スクラムマスターの経験ある人の価値は高まりそう+DXやっててもアジャイルできてない企業も多そうなので、なんちゃってDX(単なるIT化)で終わっている企業も多そう
・非競争領域での共通プラットフォームの重要性、その領域は開発ベンダー(外部開発)に任せることも有り(アメリカもそのあたり頼っていそう)
・データ利活用/KPI分析も悲惨なほどアメリカと差がでてました。
・アメリカと技術的にはXRやゼロトラストセキュリティ、BYOD、チャットボットあたりで実用している技術の差が歴然になりました(オンライン会議とかは同じくらい)

上記を学びとして、DX白書あと多分3~4回にわけて記載していきます。


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