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【器の修復】素人なりに低価格で金継ぎを初めてみた 割れた器編

はじめましての方に、はじめまして。

知っていてくださる方に、こんにちは。

夏が嫌いです。落夏「らっか」です。

初めての投稿ですが暑いので、

挨拶はそこそこにして、

素人なりに工夫して金継ぎをやってみたら、

案外と安く・綺麗にできたお話です。

マネは自己責任ですよ。マネーもね。

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こちらが先日割ってしまったグラタン皿です。

よくある百貨店の安物だから「いいよ」とは言ってくれましたが、

同居人が二十年以上付き添った器らしく、

形も色もかわいいですし、

きっとこの子は私よりグラタンの味を知っているはずです。

どうにか直して使いたいなと。


早速。


日本伝統工芸に「金継ぎ」という手技があります。

漆を中心に、様々な自然材料を使用して、

割れた器に新たな命を吹き込む技術です。

京都の知人の紹介で、

漆師が主催する金継ぎ教室へ参加する予定でしたが、

皆さんもご存知の諸事情により延期となってしまいました。


そこで、調べてみると、

「自宅でできる金継ぎセット商品」はすでに

数種類販売されていますが、

どれも6000円以上かかってしまい、

300円の器のために手が出せる値段ではありません。


なので自宅でも簡単にできるように縛りをつけまして、

①ネット情報のみ 

②伝統材料は絶対にケチらない・ゆずらない

③道具はできるだけ安く代用

の趣旨で工夫して見ました。


やり方で参考にさせていただいたのは

「鳩屋 金継ぎ図書館」さんの記事です。

専門的かつ分かりやすく、

美しい動画と丁寧な言葉でまとめられていますので、

金継ぎをやらなくても眺めているだけでも癒しになるページです。

準備した材料は下記の通りです。

<生漆> ¥1,000 東急ハンズ

<真鍮粉> ¥550 東急ハンズ

新うるしやすぐ塗れる漆などの商品もありますが、

天然の漆樹液ではなく化学薬品が入っていて食の安全保障がありません。

ここだけはケチらずに、本物志向です。


道具は譲れない部分と安く工夫した部分があります。

どうせすぐ消耗するものはできるだけ安く、

長く使うものはしっかりと使いやすいものを。

<面相筆・蒔絵用> ¥450 東急ハンズ

<ガラス作業板> ¥660 東急ハンズ

<プラスチックヘラ> ¥300 東急ハンズ *本当は木製が良い

<羊毛フェルト> ¥100 百均ストア *本当は真綿が良い

<アイシャドウブラシ> ¥0 使い古し *本当は豚毛の平筆が良い

<ストロー> ¥0 家にあったもの *計量スプーンと筆置きの代わり

<裏紙> ¥0 家にあったもの *台が汚れないように

<サラダ油> ¥0 家にあったもの

以上、合計 ¥3,010です。

もう少し工夫すれば2000円台でできる気もします。やったね!

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ガラス板・漆・ヘラ・アイシャドウブラシ


今回の修復作業では伝統工法から大幅に短縮しています。

⑴素地調整・麦漆接着 ⬅︎今回の作業

⑵はみ出し削り・錆漆付け ⬅︎1ヶ月後予定

⑶漆塗り・真鍮粉蒔き ⬅︎2ヶ月後予定

本格的なやり方は金継ぎ図書館さんをご参照ください⬇︎

https://hatoya-f.com/kintsugi-learning/


まずはじめに、素地調整を行います。

割れた断面の角をカッターで少し落として面取りします。

そうすることで仕上げの漆の付着がよくなるそうです。

普通はダイヤモンドのヤスリで行うようですが、

節約してカッターで気持ち分だけ削っています。


次に麦漆を作ります。

これは小麦粉と漆を体積「1:1」の割合で混ぜ合わせたものです。

小さな計量スプーンがないので、

ストローを切って、同じ位置にマジックで目盛を書いて使います。

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一つの器を直すのに、この半分の量、5mm程度で十分です。


作り方は、

まず小麦粉に少しずつ水を混ぜ合わせ、

耳たぶくらいの柔さまでヘラでこねます。

次に同量の漆を少量ずつ加えながらよく混ぜ合わせて、完成。

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私は作業を短縮するために水を少なくして、

固めにこねました。

あとで後悔することになるのですが、

固練りすると、とっても塗りづらくなります。反省。


麦漆ができたら、

次はこれを少量ずつ、割れた断面に塗っていきます。

薄く、均等に、ムラなく 塗るのがポイントです。

固練りすると薄く伸ばすことができないので、

かけらを合わせた時にぴったりくっつかなくなってしまいます。

材料作りはいつだって大事な工程なのですね。

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塗り終わったら再度、全体が塗れているかをチェックして、

しばらく放置します。


漆は自身に含まれる酵素と

空気中の水蒸気に含まれる酸素とが反応して硬化するので、

適度な温度と湿度に保ってあげる必要があります。

梅雨の時期は最高の漆硬化シーズンと言えますね。

あと、紫外線に当たると劣化するそうです。

危ない危ない、窓辺に置くところでした。


乾く間際を狙って、

かけらをくっつけるのが一番良いとされていますが、

これを素人が判断するのは難しいと思いますので、

細かいことは気にせずに、

ヘラで触ってべたっとしなくなるのを待って、

えいっ!とくっつけました。

前後左右にみしみし、ぎゅぎゅっと。

段差を指で触って確認しながら微調整します。

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すでに強力な接着力を発揮しているように見えますが、

心細いのでマスキングテープを貼って、養生します。

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はいっ、完成!(完成ではありませんよ)

はじめの悲惨な姿から、自立できているだけで感動です。

ここまでの作業で約2時間ほどかかりました。

こんなに丁寧に、時間をかけて器と向き合ったのは

生まれて初めてのことで、

思いの外、充足感が得られました。


普段は、あれもやらなきゃ、これもやらなきゃと

生活行為だけがどんどん雑になっていきますが、

感染症への対策から家にいる時間が増え、

凝った料理を作ったり、丁寧に飾り付けをしたり、

お洋服を直したり、近所でもぎった梅を漬けてみたりと、

「丁寧な暮らし」をすることによって得られる心の充足感を

呼び覚ましてしまいました。

これは仕事や研究に没頭することとは異なる感覚です。


コロナ禍が収束し、社会が通常通りになったとしても、

都会の中で、

「丁寧な暮らし」を心がけて、生きて見たいと思います。

このnoteがその記録なればいいなと、始めたものなのです。


なんだか終わりに近づいているようですが、

もちろん!ダメです!片付けましょう!


ということで、漆処理の仕方ですが、

菜種油やサラダ油を使うといいそうです。

漆は肌に触れてしまうとかぶれるので、

使用した道具は少量の油をキッチンペーパーに付けて

拭き取ったりこすったりしています。

そのあとは中性洗剤で油を落として乾かします。


使用した筆は油につけ、

ヘラで傷つけないように少しずつ漆を押し出し、

最後に乾燥しないように綺麗な油をつけて、ラップで包みます。

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漆だけは生物なので冷蔵庫で保管し、

その他の材料や道具は百均で買った小さなポーチにまとめ、

すっきりきりきりです。


実は同時に、

ヒビが入ってしまったグラタン皿のヒビ補修もやりました!

別記事でまとめますので合わせてお読みください。

漆を重ね塗りして、真鍮粉を蒔きました。予告⬇︎

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長々とお付き合いありがとうございました。


さらば読者よ、命あらばまた他日。元気で行こう。絶望するな。

では、失敬 /落夏

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