見出し画像

この反発は大きな売り越しの中の短い逆トレンドに過ぎない(デビッド・ローゼンバーグ)


 著名なエコノミストで、ローゼンバーグ・リサーチの創設者兼社長であるデイビッド・ローゼンバーグを迎えての直近の市場認識と今後の見通しについてのインタビュー(参考訳)を紹介します。
 マーケットでは、慎重派、弱気派と言われているらしいローゼンバーグ氏の見解を伺います。


[主なトピックス]
 蒸し暑いので、涼しくなりたい方向けの背筋凍る系のコンテンツになっています。お気をつけください。

  • 8/6の米国株式市場の回復は、その多くがアルゴリズム取引による過剰反応であり、一時的な反発に過ぎない

  • 非農業部門雇用者数、家計調査、JOLTS求職、失業保険申請件数、継続申請件数の推移から、労働市場には亀裂が入り始めている。工業生産も低迷、家計貯蓄も底をついている

  • 株価 フォワードPERが20~21は、リスクプレミアムで10年物国債に対して魅力に欠ける

これは、なにかソフトウェア・プログラムのバグ出しでしょうか?と思えるようなネガティブ要因のオンパレードの様ですが。。。😱
夏の風物詩である肝だめし 👻 でしょうか? 少し背筋が寒くなりますが、その程度のことであること強く望んでいます。





(1)インタビュー


[ジョシュ・リプトン](Yahoo Finance)
 
今日、株価は回復していますが、昨日の売りによる一時的な反発と見ている方が本日のゲストです。
 ローゼンバーグ・リサーチの創設者兼社長であるデイビッド・ローゼンバーグさんをお迎えして、最新の動きが投資家に何を意味するのかについて詳しくお聞きします。
 
 デイビッド、今日は市場が回復していて、ヒートマップが緑一色です。
しかし、これは一時的な反発だとおっしゃっていますが、どうしてですか?


[デビッド・ローゼンバーグ](David Rosenberg)
 多くの部分がアルゴリズム取引によるもので、過去数日の大きなネガティブ反応に対する過剰反応です。市場は過去数日だけでなく、過去1週間にわたって不安定でした。ボラティリティが非常に高く、日ごとだけでなく時間ごとにも変動しています。
 私の視点では、数日間の大幅な下落の後、VIXが60に達したことで、売られ過ぎの水準からテクニカルな反発が期待できるとは考えていますが、それ以上の期待を抱くのは賢明ではないと思います。

 市場は、昨日や金曜日の前からすでに不安定な様子を見せていました。今日は反発していますが、ダウは依然として高値から約2,000ポイント下げています。S&P 500も高値から約7%下落しており、テクニカルな面からダメージが大きいです。現在、テクニカルとしては反発しているものの、市場が完全に回復したとは言えません。


[ジュリー・ヘイマン](Yahoo Finance)
 
売りが発生した理由の一つとして、経済に対する懸念について、ご存じのように、経済が減速しているという見方が広がっているようですが、景気後退には至っていないというのが一般的な意見のようです。
 ですが、デイビッドさんは異なる見解をお持ちだと思います。もし、既に景気後退に入っているか、急速に近づいているとすれば、その景気後退の要因や米国経済でうまくいっていない要因は何でしょうか?


[デビッド・ローゼンバーグ](David Rosenberg)
 まず、住宅市場が再び低迷しています。住宅ローン金利が下がっているにもかかわらず、住宅セクターは非常に深刻な弱まりをみせています。住宅市場は重要な先行指標ですから、これは大きなポイントです。加えて、金曜日に発表された非農業部門雇用統計のデータにも注目すべきです。製造業の雇用は横ばいで、労働時間と残業時間が大幅に減少しました。これはハリケーンの影響を超えるものでした。それから、工業生産が再び低迷し始めているように見えます。

 しかし、いつのときでも最大要因は雇用です。雇用は後発指標であることはもちろんですが、非農業部門の雇用者数が114,000人と見てみると、その半分以上がバース・デス・モデル(※)によるものでした。しかし、労働力の規模を考えると、これは基本的に重要ではなく、世帯調査の雇用は実際には前年比で横ばい状態です。
  つまり、雇用に関するあらゆる指標を見てみます。それには、非農業部門の雇用統計、世帯調査、JOLTSデータ、失業保険申請件数、継続受給者数の変動などが挙げられます。これらの指標を見ると、労働市場に亀裂が生じ始めているのが分かります。これが金曜日に株式市場が売られ、債券市場が上昇した理由です。そして、昨日の話題として円キャリートレードの逆行にも見舞われました。しかし、労働市場に亀裂が入ったというは金曜日の話はまだ解消されていません。

 これ以上の財政刺激策がないこと、以前のパンデミック刺激策による家計貯蓄が底をついたこと。さらに労働市場の冷え込みが話題になっていますが、実際には家計調査では前年比で横ばいです。1950年以降のデータを見ても、家計調査が横ばいになるときは、景気後退に向かっているときか、すでに景気後退中か、景気後退から回復しつつあるかのいずれかです。したがって、景気後退はまだ来てはいませんが、そう遠くないと考えています。

(※)訳注
「Birth Death Model」は、米国労働省統計局が雇用統計を算出する際に使用する推計手法の一つで、ビジネスの創業(birth)と廃業(death)によって生じる雇用の変動を推計するために使われるモデルのこと。)


[ジョシュ・リプトン](Yahoo Finance)
 デイビッド、ここでFRBの対応についてどうお考えですか?
一部のエコノミストは、FOMCの開催期間以外のタイミングでの利下げもあり得ると言っていますが、その意見に賛成ですか? 9月には何を予想していますか?


[デビッド・ローゼンバーグ](David Rosenberg)
 いいえ、賛成ではありません。そのことは、昨日の株式市場や信用市場の出来事への反射的な反応といえます。しかし、株式市場がさらに急落するか、信用市場が凍結するような状況でない限り、FOMC間での利下げが行われることはあり得ません。株式市場の一日の動きだけでFRBが動くことはありません。
 つまり、9月には、利下げを間違いなく実施するでしょう。25ベーシスポイントか50ベーシスポイントかについては議論が分かれると思いますが、1、2か月前には9月に利下げがあるかどうか自体が議論されていましたし、当時は11月の選挙が間近に控えていたためです。
 今では9月の利下げが25か50かはともかく、確実に実施されると考えられています。正直なところ、会合A、B、Cのどれで実施されるかはあまり重要ではありません。あるFOMCをスキップして、ある会合で50ベーシスポイントの利下げをするという可能性もあります。
 但し、それは私にとってはノイズに過ぎません。ノイズに基づいて取引することもできますが、目的地がどこかはわかっています。パウエル議長は、先週水曜日のFOMCの記者会見で、経済と労働市場の「正常化」という言葉を11回も使い、我々に多くの情報を発信しました。そして、2019年に3回利下げして1.75%まで引き下げたときが最後の「正常化」だったと述べました。特に2019年を持ち出す必要はなかったのに、インフレの背景や労働市場が2019年の状況と同じだと言及しました。
 2019年には失業率が1.75%で、パウエル議長は「正常化」を11回も言及していますが、唯一正常化していないのはFF金利です。ですから、今後のFOMCで利下げを行うかどうか、もしくはスキップするかどうかに関わらず、年末までにFF金利は1.75%から2.75%の間になると思います。利下げが25ベーシスポイントか50ベーシスポイントか、あるいはFOMC間での利下げかについて議論するよりも、目標水準について話す方が私にはしっくりきます。


[ジュリー・ヘイマン](Yahoo Finance)
 今年の年末までにですか?


[デビッド・ローゼンバーグ](David Rosenberg)
 いえ、来年の今頃までにです。


[ジュリー・ヘイマン](Yahoo Finance)
 最後に、今後の株式市場への影響についてお尋ねします。
 今日、ゴールドマン・サックスが興味深いレポートを出しており、売りの動きを分析し、今後何が起こるかを予測していました。彼らは、S&P 500が5%の下落をした場合、その後の1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月でポジティブなリターンが得られることが多いと指摘していました。私たちはすでに5%の下落を経験していますが、これが続くかもしれません。その後、どうなると思いますか?


[デビッド・ローゼンバーグ](David Rosenberg)
 それを何と呼べばいいのか分かりません。それは分析と呼べるのでしょうか? 例えば、高校生に宿題として出すようなもので、市場がこれだけ下がると80%の確率でこうなる、というようなものです。
 質問は、株式投資家として、株式リスクを負うためにお金を払うべきか、それとも株式リスクを負うことでお金を得るべきかということです。私は「数学」と呼ばれるものを尊重します。つまり、株式のリスクプレミアムのこと、株式市場の利回りと10年物国債の利回りとのスプレッドのことです。

 この調整局面では、株式のリスクプレミアムは上昇し、債券利回りは下がっていますが、それでもまだ低い水準にあり、長期的な平均はおおよそ300ベーシスポイントに近いです。ですので、今の「数学」の状態は気に入っていません。
 私は、株式市場にビハインドな数学は好きではありません。私は逆風ではなく追い風の中で投資するのが好きです。現在のリスクとリターンを見てみると、実際には債券市場の方がリスク調整後の相対的な価値が高くなっています。これは単なる宿題をこなすようなものです。ですから、「5%下がったからこうする」といった理屈で投資を行うことは決してお勧めしません。
問題は、今の時点で株式の将来の予想PERが20~21で、一方、10年物国債の利回りが約4%に達していることです。結果、リスクフリーレートと比較すると、株式市場はそれほど魅力的ではありません。
 私が言いたいのはまさにその点で、現在の市場はまだ高すぎるということです。評価額はタイミングを計るためのものではないことは分かっていますが、それでも追い風の中で投資しているのか、逆風の中で投資しているのかを教えてくれます。今は逆風の中にいると思います。

[ジュリー・ヘイマン](Yahoo Finance)
 どうなるか見ていきましょう。ご参加いただき、本当にありがとうございました。


(2)オリジナル・コンテンツ

 オリジナル・コンテンツは、以下リンクからご覧になれます。
尚、本投稿の内容は、参考訳です。また、意訳や省略、情報を補足したコンテンツを含んでいます。

Yahoo Financeより
Original Published Data : 2024/08/06 EST

【出演】
 ローゼンバーグ・リサーチ
  創業者兼社長
   デビッド・ローゼンバーグ(David Rosenberg)

 Yahoo Finance
   ジョシュ・リプトン(Josh Lipton)
   ジュリー・ヘイマン(Julie Hyman)


以上です。


御礼

 最後までお読み頂きまして誠に有難うございます。
役に立ちましたら、スキ、フォロー頂けると大変喜び、モチベーションにもつながりますので、是非よろしくお願いいたします。 


だうじょん


免責事項


 本執筆内容は、執筆者個人の備忘録を情報提供のみを目的として公開するものであり、いかなる金融商品や個別株への投資勧誘や投資手法を推奨するものではありません。また、本執筆によって提供される情報は、個々の読者の方々にとって適切であるとは限らず、またその真実性、完全性、正確性、いかなる特定の目的への適時性について保証されるものではありません。 投資を行う際は、株式への投資は大きなリスクを伴うものであることをご認識の上、読者の皆様ご自身の判断と責任で投資なされるようお願い申し上げます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?