企業のAIへの向き合い方に変化:IPOが視野に入ったDatabricks
長らくユニコーン企業のまま未上場ステータスを続けるDatabricks社のCEOであるアリ・ゴドシ(Ali Ghodsi)氏への直近のインタビューを共有します。語られた内容は、現在のハイテクセクターへの株式市場の反応に対する見解、そして顧客に近いAI関連企業としてのビジネス概況、また市場から期待されているIPO(新規上場)の可能性と見解についてです。
未公開企業のため、公開市場で株式を購入することはできませんが、マーケットにおける昨今の一番の懸念となっている「AIへの投資回収の是非」について、企業顧客のAIユースケースに近い領域でビジネス活動を行っているDatabricksの肌感覚を聞けるのは、昨今のAIモメンタムの理解の助けになるかもしれません。よろしければご参考下さい。
(1)Databricksの簡易紹介
ビジネスモデルがB2Bであることから、Databricks社の名前は、B2Cビジネスを展開するByteDanceやSHEIN、OpenAIやxAI、Anthropicと比べると知名度としては一般的ではないかと思いますが、ユニコーン企業(評価額10億ドル以上の非上場のスタートアップ企業)でいえば、現在、評価額では上から数えて3番目の432億ドルという値付けがされている企業です。
数年来、この位置につけており、そのIPOが待ち望まれていましたが、過去、数年にわたってIPO市場の地合いが決して芳しくないこともあり、未だに上場を果たしていない企業の筆頭にあげられる会社です。
Databricksは、データエンジニアリングやデータサイエンス、AI・機械学習をエンド・トゥ・エンドで支援するデータ分析統合プラットフォームをクラウドで提供する企業です。元々、Apache Sparkの原型を開発し、主たるコントリビュータとしてそのエコシステムを拡げながら、DeltaLakeなどのその他OSSの開発や独自拡張機能を加えながら、企業のデータ分析ニーズに応えるデータ・サイエンス統合プラットフォームを展開しています。昨今は、独自の大規模言語モデルの開発に加え、大規模言語モデルの推論基盤として、生成AIアプリケーション開発を支援するプラットフォーム・サービスを提供しています。尚、Databricksが展開するソリューション領域と被る比較対象としては、Snowflake(SNOW)の名前が挙げられます。
(2)インタビュー(参考訳)
CNBC Television
Original Published Data : 2024/08/03 EST
[ケリー・エヴァンス](CNBC)
ご参加頂き、ありがとうございます。現在のハイテク業界を取り巻く状況や目に見えているマーケットの暴落、決算に対する悪い市場の反応について、何かお考えがあればお聞かせください。
[アリ・ゴドシ](Databricks)
そうですね、今起きていることについてお話しすると、二つの要因があると思います。
1つはマクロ経済です。長期間にわたり不安定な状態が続いていましたが、今それが終わりに近づいており、雇用市場やインフレ、10年物国債の利回りの低下などでその影響が出ています。
もう1つはAIです。AIに対して人々は非常に興奮しており、世界を大きく変えると期待しています。ハイパースケーラーたちもAIに多額の投資をしています。
我々の会社は、データとAIに10年間投資を続けてきました。その結果、売上は着実に成長し、顧客もその価値を実感しています。しかし、大量の資本が投入されているため、ROIがすぐに得られるかどうかが問われています。これは大きな課題です。ただ、AIは素晴らしいものであり、今後も価値を提供し続けると思います。ただ、昨年のような大規模な投資があった中で今後の需要がマクロ経済の影響でどうなるかが問題です。
[ケリー・エヴァンス](CNBC)
そうですね。それと、確認のためにお聞きしますが、視聴者の中にも疑問を持っている方がいると思います。貴社はAmazonやGoogleのような大手クラウドと競合しているのですか?それとも彼らのインフラを利用しているのですか?
[アリ・ゴドシ](Databricks)
良い質問ですね。我々は彼らのインフラの上で動作しています。ですので、大量の資本を投入してデータセンターや冷却システムを構築する必要はありません。他社の既存インフラを活用することで、我々は顧客や顧客のユースケースにより近い立場にいます。そのため、企業は我々を通じてAIの価値を実際に享受でき、数千の顧客がAIユースケースで我々を利用しています。
[ケリー・エヴァンス](CNBC)
では、Salesforceのような存在と考えてよいのでしょうか?Salesforceは顧客獲得モデルに近いですよね。貴社は、企業がデータを活用し、最適化し、理解し、AIを使ってそれを行うのを支援しようとしているように感じます。
[アリ・ゴドシ](Databricks)
例えば、Rivian(RIVN)は、車内でAIを活用し、電池消費の最適化や車線変更をデータを活用して行っています。JetBlue(JBLU)では、使って顧客とのコミュニケーションに生成AIを役立てています。また、Block(SQ)では、アプリ内で音声入力が可能になり、画面上で文字を入力する必要がなくなりました。これらは企業がデータとAIがもたらす利便性を顧客に提供するユースケースです。我々はAIが成功しているかどうか、そしてそれが顧客にどれだけの価値をもたらしているかを直接確認しています。しかしながら、我々はソフトウェアのマージンでビジネスしており、データセンターに数十億の投資をする必要はなく、既存のインフラを活用しているのです。
[ケリー・エヴァンス](CNBC)
では、貴社の最大の投資は、あなた方が開発するアルゴリズムやソフトウェアで、あなた方はそれらを販売し、顧客の定着を目指しているということですね。その説明を聞いて、貴社が評価の高い非公開企業である理由がよく分かりました。
昨日、ジェフリーズ・グループのCEOリッチ・ハンドラー氏がIPO市場が再開したという大きな声明を出しました。 NASDAQの視点から見ると、ここ48時間は不安定でしたが、今年はいくつかの成功したIPOがありました。これについてはどのようにお考えですか?
従業員からのプレッシャーもあって公開企業にするべきか、それとも規制当局の監視を避けて、M&Aを行いながら数年後の状況を見極める方が良いとお考えなのでしょうか?
[アリ・ゴドシ](Databricks)
そうですね、我々はタイミングにあまりこだわっていません。第1四半期は、これまでで最も好調な四半期の一つであり、第2四半期も前年同期比で60%の成長を遂げ、データインテリジェンスとAIのユースケースで年間売上が24億ドルに達しました。そのため、世界市場で見られる多くの逆風はあまり感じていません。
タイミングが合えばIPOする予定ですし、従業員もそれを望んでいますので、いずれ公開するつもりです。但し、市場がピークに達した時に公開する必要はなく、会社の準備が整った時に公開すると共に、データとAIを通じて顧客に価値を提供し続け、今後何十年も成長し続けることを目指しています。
[ケリー・エヴァンス](CNBC)
AIのコストなどにマーケットが注目しているのを見て来ましたが、もう1つの大きな疑問は、AI需要とAIから得られる生産性についてです。
例えば、Copilotが多くの企業にとって投資に見合うものかどうかについて疑問があがっています。貴社の立場から見て、企業の現場にAIを導入する際の最大の効果はどこにあるとお考えですか?
[アリ・ゴドシ](Databricks)
そうですね、我々は様々なユースケースで効果を実感しています。10年間この分野で活動し、成功を収めてきましたが、2022年11月にChatGPTが登場してから市場が一気に活気づき、期待値が非常に高まりました。
昨年は、ほぼすべての企業が「AIを構築しなければならない」「多数のAIユースケースを作らなければならない」と言っていました。しかし、今では少し落ち着き、より合理的な視点で「自社の特有のデータはどこにあるのか」、「自社の独自の強みをどのようにAIと組み合わせて活用可能な秘伝のタレがあるのか」といったことを考えるようになってきています。
例えば、顧客サービスでは、ますますタスクのオートメーション化が進んでいますし、金融セクターでは、生成AIを使って証券取引委員会(SEC)向けの大量の提出書類を精査して、そこからシグナルを得るといった興味深いユースケースが生まれています。また、機械学習は依然として売上の予測や損失の予測、リスクの最小化において重要な機能を提供しており、ユースケースは多岐にわたり、増え続けています。但し、2023年には少し期待が過剰になりすぎた面もあったのは事実だと思います。
以上です。
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だうじょん
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