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スターバックスの業績回復なるか? : ブライアン・ニコル氏の手腕と実績


 2024年8月13日、スターバックスは、現チポトレ・メキシカン・グリル(CMG)のCEOであるブライアン・ニコル氏を新たなCEOとして迎え、9月9日付けで正式就任する旨の発表を行いました。この発表を受けて、その日のスターバックス(SBUX)の株価は11%上昇し、一方、チポトレの株価は9%下落しました。

 ブライアン・ニコル氏は、2018年3月にチポトレのCEOに就任し、それ以降、チポトレは目覚ましい成長を遂げており、現在は、CEO兼会長を務めています。チポトレの前には、タコベル(Taco Bell)のCEOを務め、デジタル戦略の推進、朝食メニューの導入、ソーシャルメディアを活用したブランド構築などによって、タコベルの業績へ多くの貢献を行っています。
 チポトレにおいては、デジタルオーダーシステムの導入や顧客体験の向上など、数々の戦略を実行し、同社の業績を大きく改善させ、そのリーダーシップと事業オペレーションへのアプローチは、外食産業において高く評価されています。
 その彼が、チポトレよりも規模が大きく、成熟が進むスターバックスの課題に対し、これまでの過去の経験が活かすことができるのか、フード&レストラン業界に詳しい、モーニングスターのアナリストとのインタビューを通じて、ニコル氏の手腕や改革の見通しについて議論されています。また、フード&レストラン業界において投資妙味のある有望銘柄の幾つかについて、推奨コメントを聞くことができます。

 以下、Barron’sのポッドキャストより抜粋のコンテンツをご参考下さい。

[このコンテンツが提供するもの]
・ブライアン・ニコル氏による改革が期待されている課題と株価への影響
・フード&レストラン業界の推奨銘柄について





1. プロローグ


[ジャック・ハウ](Barron’s)
 チポトレ・メキシカン・グリル社(CMG)のCEOがスターバックスに移籍することになりましたが、このことが株価にどのような影響を与えるのか、そして他のレストラン銘柄の選び方についてもお話ししようと思います。

 私自身は、スターバックスの常連ではありません。外でコーヒーを買うとしたら、マクドナルドやダンキン、もしくは地元のベーグルショップが多いです。でも、スターバックスに対して特に嫌悪感があるわけではありません。ホテルのロビーや空港などにあると、ふと思い立って入ることもありますが、そういう時に限って行列ができていることが多い気がします。
 この後、待ち時間やそれに関連する問題について話しますが、これは今のスターバックスが直面している重要な課題です。長い待ち時間に嫌気がさして注文をキャンセルする、いわゆるアバンダンメント(Abandonment)という現象が問題になっています。もちろん、すべてのスターバックスで待ち時間が長いわけではありませんが、それでも投資家たちが注目している問題です。


 実際、スターバックスの株はここ数年、他の銘柄と比べてあまり良いパフォーマンスを見せていません。一方で、チポトレの株価は2018年にブライアン・ニコル氏がCEOに就任して以来、急成長しています。ちなみに、「チポトレ」は、チポトレペッパーという唐辛子の名前です。  

 このチポトレは、とても順調です。今年のバロン誌で、ブライアン・ニコル氏を「ブリトーのドライブスルー界のトーマス・エジソン」と呼んだことがあります。
 彼はパンデミックの混乱を利用して、ビジネスを再設計し、デジタルオーダーのための待ち行列ラインや高度なソフトウェアを活用して、スタッフの配置を柔軟に変え、顧客の待ち時間を短縮できるようにしました。その結果、顧客からのクレームが減り、従業員も満足するという、ビジネスにとって非常に良い状況を作り上げました。
 多くのチェーン店が、デジタルオーダーとカウンターサービスのバランスに苦労している中、チポトレでの彼の成功を参考にしています。しかし、スターバックスの取締役会はさらに一歩進んで、直接ブライアンを雇うことにしました。彼は来月からスターバックスで働き始めることになります。
 この発表があった日、スターバックスの株価は25%も上昇しました。これはかなりの期待値を表しています。彼には「ラテの救世主」として、投資家の期待に応えることが求められています。
 


2. ブライアン・ニコル氏のCEO就任を聞いて


[ジャック・ハウ](Barron’s)

 でも、25%の株価上昇というのは、彼がまだ何も始めてもいない前に、すでに成功したかのように見えますよね。例えば、彼が「スターバックスに来て、最初の年で株価が25%上がりました」と言えば、「素晴らしい仕事をした」と思えてしまいますし、もうその成果が出てしまったわけですから、これからの期待はますます高まります。彼を雇えば、こんなに株価が上がるのであれば、あちこちから、いろんな会社から引っ張りだこになってしまいますね。
 一方で、避けたいのは、チポトレの株価に起きたことです。このニュースを受けて、チポトレの株価は1日で8%も下がってしまいましたから。ブライアン・ニコル氏を次々と引き抜くのではなく、複数の企業が順番に彼を雇う「ローテーション制度」を導入するというのは、面白いアイデアだと思います。彼がS&P 500に含まれるすべての企業を管理すれば、みんなの401kが「ニコルの魔法の手」で一気に上がるかもしれませんね。

[ジャクソン・カントレル](Barron’s)
 確かにブライアン・ニコルがいれば、金利の引き下げなんて必要ないかもしれませんね。

[ジャック・ハウ](Barron’s)
 彼はもはや「歩く株式市場の刺激策」と言える存在ですね。

[ジャクソン・カントレル](Barron’s)
 とはいえ、何らかの結果が必要ですよね?例えば、利益の成長とか。

[ジャック・ハウ](Barron’s)
 細かいことにはこだわらない。大局を見ているんです。
 ブライアン・ニコルをインテルに送り込めば株価は上がりますよ。半導体のことは、他の誰かが解決すればいいんです。ただ言いたいのは、とにかくブライアン・ニコルを連れてくれば良いということです。


3. チポトレの経験をStarbucksに活かせるか


[ジャック・ハウ](Barron’s)
 チポトレのCEOとしての経験は、スターバックスを運営する上で適任ではあるものの、完全に一致するわけではないでしょう。これらのビジネスの類似点をいくつか見ていきましょう。
 
 どちらも競合他社と比べて、プレミアムな商品を販売していると考えられます。顧客は質の良さを感じて、少し高くてもお金を払うことをいとわないんです。また、どちらもデジタルオーダーを活用し、アプリを通じたリワードプログラムも展開しています。しかし、重要な違いもあります。スターバックスは店舗数の点で、チポトレの約10倍の規模がありますし、グローバルビジネスの規模もはるかに大きいです。また、スターバックスはチポトレに比べて「より成熟した企業」と言えます。
 ブライアンがチポトレを引き継いだ時、彼は創業者からバトンを受け取ったわけですが、その前には、大腸菌やノロウイルスの発生など、チポトレの評判に大きな打撃を与えた出来事がありました。その頃、株価は大きく下落していたため、ブライアンはタコベルで培ったモダンなサプライチェーンの運営方法や、安全対策手順の強化を導入しました。チポトレのような特に店舗で調理や食材の取り扱いを行う会社では、その効果が顕著に表れ、それがチポトレでの大成功につながりました。

 スターバックスは何年にも渡って、メガコーポレートな管理下にある、はるかに大規模な企業です。今年初め、顧客の待ち時間について批判を受けた際、経営陣はブログ投稿で、従業員の配置に関して導入している高度なソフトウェアシステムについて説明しました。つまり、ブライアンがチポトレで導入した施策の一部は、すでにスターバックスでも実行されているということです。
 では、ブライアンに残された課題は何でしょうか?そして、彼の成功の可能性はどれくらいあるのでしょうか?株価への影響はどうでしょうか?
初日の大幅な株価の上昇の後、スターバックスの株価にはまだ上昇の余地があるのでしょうか?

 この点について、Morningstarのエクイティアナリストであるショーン・ダンロップさんに話を聞きました。以下がそのインタビューの一部です。



[インタビュー : Morningstar アナリスト]


[ジャック・ハウ](Barron’s)
 ブライアン・ニコルがスターバックスに移ることについてどう思いますか? 彼がチポトレで素晴らしい成果を上げたことは理解できますが、スターバックスで彼がどのようなことを成し遂げると思いますか?

[ショーン・ダンロップ](Morningstar)
 いい質問ですね。ニコルの実績は、確かにレストラン業界では非常に優れています。彼はタコベルでの成功に続き、2018年にチポトレに移りました。当時、チポトレは大腸菌の発生で非常に厳しい状況にありました。しかし、2018年から2024年にかけてチポトレが見せた成功が、今度はスターバックスでも再現されることが期待されています。要するに、それが狙いだと思います。

[ジャック・ハウ](Barron’s)
 スターバックスに対する不満は何でしょうか? アクティビストたちにも注目されていますが、彼らが指摘している問題とは何でしょうか? 具体的に、スターバックスが改善すべきだと考えている点や、今どこに間違いと思われることがあるのか、について教えてください。

[ショーン・ダンロップ](Morningstar)
 いくつかの不満があがっています。 まず、前CEOのラクスマン・ナラシムハン氏がCEOに就任したタイミングが、非常に悪かったのは間違いありません。消費者の気分が落ち込み、支出を控えている中で、スターバックスに乗り換える人はあまりいません。それに加え、会社固有の問題もありました。特に、米国の店舗のうち約500店舗が労働組合結成を目指して投票したことが大きいです。
 また、労働関係だけでなく、PR面でも問題がありました。特にイスラエルとガザの紛争に関連したもので、両方から同時にボイコットされたのは今回が初めてではないでしょうか。
  そして更に中国市場では、消費者需要が急速に減少して、競争も激化しています。特に「ラッキンコーヒー(Luckin Coffee)」のような二列目や三列目の専門店が、スターバックスの約4分の1の価格でコーヒーを販売しているため、スターバックスには、強い競争圧力がかかっています。
 これらの幾つもの要因が重なって、スターバックスはプロモーション活動を強化せざるを得なくなり、そのためにプレッシャーが増している状況にあります。

[ジャック・ハウ](Barron’s)
 競争環境についてですが、アメリカ国内ではどうでしょうか。最近、ダンキンドーナツが多くの店舗で改装を行っているのをよく目にします。彼らも本腰を入れてきているようですね。
 先日、ダンキンに行ったとき、娘が「パパ、アプリをダウンロードすれば、2週間くらい毎日無料でドリンクがもらえるよ」と教えてくれました。実際にアプリを入れたら、本当に2週間毎日無料ドリンクをもらえました。そして、マクドナルドも、99セントでアイスコーヒーが買えるクーポンを出しています。これに比べると、スターバックスでのコーヒーは5、6ドルかかりますから、競争はかなり厳しいですよね。
 競争が激化しているのか、それともコーヒー業界ではいつもこのくらい厳しいのか、どうなんでしょう?

[ショーン・ダンロップ](Morningstar)
 確かに、競争は一段と厳しくなっています。例えば、直近の四半期を振り返ると、スターバックスが割引に費やした金額がかなり増加していることがわかります。これが店舗レベルでの利益率を圧迫しているわけです。最新の四半期では、14%の注文に何らかのクーポンや割引が適用されていたと報告されていますが、これはスターバックスにとっては異例の高さです。ただし、業界全体で見ると、その割合は約29%に達しており、スターバックスの2倍以上です。
 このように、非常に厳しい競争環境の中にあるのですが、公平に見ても、スターバックスは消費者に経済的余裕がない時期に強いブランドではありません。スターバックスの商品はプレミアム価格であり、通常の顧客はメニューの中で安い商品に切り替えることすらせず、訪れること自体をやめてしまう傾向があります。実際、ここ数四半期でそのような傾向が顕著に見られています。

[ジャック・ハウ](Barron’s)
 最近アナリストと話をしました時、彼女は「先日スターバックスに行ったとき、コーヒーをもらうのにすごく時間がかかりました。10分か15分くらい待っていたと思います」と言っていました。
 顧客満足度の管理はされているのでしょうか?待ち時間に対する顧客の不満が表れている兆候はありますか?

[ショーン・ダンロップ](Morningstar)
 良い質問ですね。スターバックスは顧客満足度に関する非常に優れたデータを持っていますが、残念ながらそれを公開していません。ただ、参考になるデータとして、先々期に発表された「カート放棄率(かご落ち率)」があります。これは、顧客がオンラインで注文を開始し、アイテムをカートに入れた後、待ち時間を見て注文を取りやめる率のことです。彼らはこの「カート放棄率」が10%台半ばであるとしていますが、これが通常時に10%なのか、0%に近いものなのかは明示されていません。そのため、この数字を評価するのは難しいです。
 また、Bloomberg Second Measureというデータ提供サービスも参考になります。ここでは、スマートフォンのデータを元に注文の待ち時間を分析しており、10分から15分以上かかる注文の割合がかなり増えていることが確認されています。
 さらに注目すべき点として、米国のスターバックス店舗での名目賃金が、今期および前期の第1四半期で前年同期比で減少していることが挙げられます。これから推測できるのは、スターバックスが十分な人員を確保できておらず、少数の高賃金スタッフで店舗を運営している可能性があるということです。この影響がサービス時間の延長として表れていると考えられます。

[ジャック・ハウ](Barron’s)
 これらの問題は、決して最悪というわけではないと思いますが、どうでしょうか。ある程度、人気のある場所で生まれる傾向があることだと思いますが。お客さんがたくさんいるので、待ち時間が長くなることがありますよね。デジタルオーダーやオペレーションについて詳しい人がいれば、微調整して解決できそうなことです。労働力にもう少し資金を投入する必要があるかもしれませんが、そう簡単ではないようですし。
 以前から何度も試みられてきたことだと思うので、実際には簡単な仕事ではないのかもしれませんが、スターバックスの問題解決について、あなたのご意見をお聞かせください。

[ショーン・ダンロップ](Morningstar)
 いい質問ですね。最終的には解決できると思います。スターバックスは非常に賢いブランドですし、ニコル氏は、優れたオペレーションの経歴を持っています。
 たとえば、チポトレを見てみると、平均して1時間に100個のブリトーを作って売ることができます。これをスターバックスのオペレーションに当てはめてみると、何らかの改善方法が見つかるはずです。例えば、デジタルオーダーの制限を設けることで、15分ごとの注文数が一定の閾値を超えた場合に待ち時間を延長するようにすれば、顧客が店で長時間待たされることを防げるかもしれません。また、別の店舗に振り分ける方法も考えられます。その他にも、米国内の店舗で徐々に展開しているコールドバーのような、容量を拡大するイニシアチブも考えられます。あるいは、単純にスタッフを増やすことも解決策の一つかもしれません。
 ただし、スターバックスがデジタルビジネスの管理に苦労していることは事実です。ご指摘のように、アメリカでの売上のうち6ドルから10ドル程度がロイヤルティプログラム経由で、約40%の注文がモバイルオーダーとピックアップを通じて行われています。これを店舗内の注文フローとバランスさせることが非常に重要です。これは、ブライアンさんがチポトレでうまくやってきたことであり、スターバックスの投資家たちも彼がスターバックスで同じことを実現できることを期待しています。次の四半期での解決は難しいかもしれませんが、今後数四半期の間に解決されることを願っています。

(訳注)「コールドバー」
アイスコーヒー、フラペチーノ、リフレッシャーなどの冷たい飲み物を専門に提供するエリアやステーションを設け、ドリンクの提供量を拡大するためのスターバックスの施策やその該当エリアを指す

[ジャック・ハウ](Barron’s)
 たとえば、タコベルからチポトレに行くのと、チポトレからスターバックスに行くのとでは、どちらが良い選択だと思いますか?タコベルとチポトレのどちらでもタコスやブリトーが提供されていますが、スターバックスだと少し高価格帯の顧客層が来ることが多く、付加価値のある商品が求められます。質問が極端ですが、彼のスキルがどの程度うまく適応できると思いますか?

[ショーン・ダンロップ](Morningstar)
 タコベルは非常に独自の市場を持っていて、主に若年層に人気があり、夜遅くに利用されることが多いです。一方、チポトレは「お金に見合う価値」を提供するコンセプトが特徴です。どちらもスターバックスほどのグローバル展開や消費者向けのパッケージ商品やフード販売の規模を持っているわけではありません。しかし、レストランの運営や基本的な業務においては、彼のスキルはしっかりと活かされると思います。
 彼がチポトレに入社したのは2018年で、その時にはすでに消費者との強い関係性やブランドの勢いがあったため、そのブランドを立て直すことができました。スターバックスにおいても、今後数四半期で彼は、現在見られる問題を前任者のせいにできる立場であるほか、2025年後半には消費者の支出が回復するというメリットも享受できると思います。タイミングに関して言えば、彼は非常にうまく立ち回っていると言えます。

[ジャック・ハウ](Barron’s)
 「前任者たちがやったことは私の責任ではなく、私はそれを修正するためにここにいるだけです」という状況に立てるのは、気持ちがいいものです。
 スターバックスの株価がニュース発表時に大きく跳ね上がったことを見ても、投資家たちが「この仕事にふさわしい人を見つけた」と評価しているのでしょう。ただ投資家にとって、これからのスターバックスの株はどうでしょうか?今の株価に価値はあるのか、それとも割高なのか。どうお考えですか?

[ショーン・ダンロップ](Morningstar)
 リーダーシップがブランドを活かして競争優位性を高め、長期的に成長を促進する上で重要だというのは、確かにその通りだと思います。そして、ブライアン・ニコル氏は業界でも非常に優れた経営者の一人であり、スターバックスでも素晴らしい成果を上げるでしょう。ただ、彼が前任のラクスマン氏よりも25%も良い成果を上げるかというと、それにはかなりの楽観的な見方だと思います。
 正直に言えば、市場はスターバックスがすでにピークを迎え、今後は問題を抱え続けるかのように評価していましたが、スターバックスは依然として大きなブランド力と高い店舗経済性を持っており、それがレストラン業界での成功を左右する最も重要な要素の一つになります。
 最終的にはうまくいくと思います。我々は以前から、スターバックスの株価の目標として95ドル程度をフェアバリューとして見ていました。唯一変わった点は、ブライアン・ニコル氏が新たに指揮を執るということで、現時点では株価は妥当な水準だと考えています。
 一方、今日の取引中にチポトレの株価が7~8%下落したのは、ブライアン氏がどれほど市場から信頼されているかを示しています。ただ、彼が実行する変更は、効果が現れるまでに2、3、あるいは4四半期ほどの時間がかかることを考えると、短期的な視点だけでは判断しきれないかもしれません。

[ジャック・ハウ](Barron’s)
 ブライアン・ニコル氏が新たに就任した際の最初の動きについて、いくつか予測を立てることができますが、もちろん、これは新しい展開ですので、予測が難しいことも理解しています。彼がまずレビュー期間を設け、数ヶ月後に大きな方針転換や新たな計画を発表する可能性は十分に考えられます。
 彼が最初に取り組むべき課題としては、企業の戦略やビジョンを再評価し、それに基づいて今後の方向性を示すことが挙げられるでしょう。具体的には、製品ラインナップの見直しや新しいマーケティング戦略の導入、さらには顧客体験の向上を目指した施策などが考えられます。

[ショーン・ダンロップ](Morningstar)
 今回の発表からも感じ取れるように、スターバックスの働き方について変化が見られるのではないかと考えています。具体的には、従業員の福利厚生への投資や、適正なスタッフ配置の調整が進むのではないでしょうか。
 これは、チポトレがここ数年で成功を収めた要因の一つであり、プレスリリースでもニコル氏の成功の理由として強調されています。また、オペレーションの効率化に関連した取り組みも行われると思います。特に、最近のスターバックスではサービスのスピードが課題となっているため、その改善に向けた施策が期待されます。



5. フード&レストランの推奨銘柄


[ジャック・ハウ](Barron’s)
 ショーン・ダンロップ氏は、モーニングスターでレストラン関連の株を担当されています。彼にお気に入りのレストラン株や、モーニングスターでの評価方法について聞いてみました。

[インタビュー : Morningstar アナリスト]


[ショーン・ダンロップ](Morningstar)

 我々はディスカウントキャッシュフローモデルを使用しています。基本的には、最終的にビジネスの価値は、それが投資家に還元するキャッシュフローによって決まると考えています。特に、ウィングストップ(WING)チポトレ(CMG)のような高成長企業では、株価が市場予想に基づいて非常に高くなりがちで、慎重に対応しないと、かなりの株主価値が損なわれるリスクがあります。一方で、しばらく低迷していたものの、健全な状態にある企業は、かなり大きな買いの機会を提供することがあります。
 例としては、パパ・ジョンズ(PZZA)が挙げられます。この8月にトッド・ペネゴール氏がCEOに就任しました。彼は以前、ウェンディーズ(WEN)のCEOを務めていた人物です。パパ・ジョンズは、チポトレが現在直面しているように、数ヶ月の間にCEOとCFOの両方を失うことになりましたが、もし私が米国で新たにパパ・ジョンズを開店するなら、5年で元が取れるでしょう。
 フランチャイジーの視点から見ても、これは非常に魅力的ですし、食品の品質や消費者の評価という点でも、パパ・ジョンズは依然として健全です。現在のフェアバリューは69ドルと見積もっており、現在の価格から見ても25~30%の上昇余地があります。

[ショーン・ダンロップ](Morningstar)
 もう一つの良い例として、レストラン・ブランズ・インターナショナル(QSR)が挙げられます。今年の売上成長目標を引き下げましたが、米国におけるバーガーキングブランドには、足元の経済のプレッシャーにもかかわらず、店舗のリノベーションを始めるなど、基盤となる力強いモメンタムがあると見ています。更に配下のティム・ホートンズも明らかに勢いづいており、カナダ式ドリップ・コーヒー市場で驚異的な70%のシェアを持ちながらも、4.9%の売上成長を達成しています。

[ジャック・ハウ](Barron’s)
 レストラン・ブランズ・インターナショナルは、バーガーキング、ティムホートンズ、ポパイズ、ファイアハウスのブランド展開をしているのですね。

[ショーン・ダンロップ](Morningstar)
 そうですね。

[ジャック・ハウ](Barron’s)
 バーガーキングはどうでしょうか。 バーガーキングについてどう感じているのか?どう表現すればいいでしょうか。

[ショーン・ダンロップ](Morningstar)
 米国ではまだ健全な状態にあり、その他の地域でも順調に成長しています。

[ジャック・ハウ](Barron’s)
 彼らのビジネスは再建済みですか?

[ショーン・ダンロップ](Morningstar)
 良い質問です。将来的に考えが変わるかもしれませんが、今のところは、管理された緊縮状態にあると言えるでしょう。現在、米国では年間約2%のペースで店舗を閉鎖しています。レストラン業界全体を見ても、店舗の3分の1は健全、3分の1は非常に好調、そして残りの3分の1は通常赤字というパターンが多いです。
 フランチャイズ契約の仕組み上、店舗を閉鎖するには高額な違約金が発生するため、強い抑制が働きます。そのため、変動費がカバーできている限り、企業は店舗を維持しようとしますが、時間が経つにつれて、そのような店舗は徐々に閉鎖されていくことになるでしょう。その結果、規模は小さくなったとしても、より健全なバーガーキングが残るのことになると思います。ただ、ユニットエコノミクスの観点から見ると、バーガーキングの店舗建設コストはマクドナルドやウェンディーズとほぼ同じですが、1店舗あたりの売上は約170万~180万ドルです。これに対し、マクドナルドは1店舗あたりの売上が300万ドルを超えていますので、その点を考慮する必要があります。

[ジャック・ハウ](Barron’s)
 彼らの株価に対する期待や価値は、事業のどの部分に基づいているのでしょうか?

[ショーン・ダンロップ](Morningstar)
 それは、ほぼすべてに基づいています。例えば、カナダではティムホートンズが比較対象の売上の観点で非常に強い成長を見せています。また、アジア太平洋地域でもかなりの手応えを感じています。ポパイズもチェーンの中で強い成長ブランドであり、長期的には営業利益の15%から20%を占めると期待しています。バーガーキングのグローバル事業は、EBITDAの観点でそのブランド全体の約60%を占めており、今後ますます重要になってくるでしょう。このブランドは、国際的なフランチャイズとのクロスセリングで多くの成功を収めており、それが大きな魅力の一つです。例えば、インドやインドネシアのバーガーキングのフランチャイジーがポパイズや、少なめではありますが、ファイヤーハウス、そして最近ではティムホートンズをクロスセリングして成功を収めています。これが大きなストーリーの一部です。グローバル事業を見ると、現在の利益の25%は、10年以内には、ほぼ40%に達すると期待しています。

[ジャック・ハウ](Barron’s)
 では、あなたのお気に入りのレストラン・ブランズについて、最後に1つ教えてください。

[ショーン・ダンロップ](Morningstar)
 ええ。我々はマクドナルド(MCD)を高く評価しています。正直なところ、マクドナルドは現在の多くの業界トレンドにうまく乗っています。キャッシュを生み出す力が強く、営業利益率も40%台後半と高く、所有している土地の影響でさらに拡大する見込みです。
 マーケットは同社のロイヤリティプログラムの価値を過小評価していると考えています。現時点で約1億6600万人のロイヤリティプログラム会員がいて、このプログラムは2021年に開始されたばかりです。このプログラムによる顧客の来店頻度の増加で、年間で既存店売上高を2ポイント以上押し上げる可能性があります。もちろん、マクドナルドにとっては厳しい時期ではありますが、価値競争でマクドナルドに挑むのは避けたほうが良さそうです。

[ジャック・ハウ](Barron’s)
 ショーン、ありがとうございました。



6. オリジナル・コンテンツ

 オリジナル・コンテンツは、以下リンクからご覧になれます。
尚、本投稿の内容は、参考訳です。また、意訳や省略、情報を補足したコンテンツを含んでいます。

Barron's
(Original Published date : 2024/08/21 EST)

[出演]
  Morningstar
    ショーン・ダンロップ(Sean Dunlop)
    Senior Equity Analyst

  Barron’s
    ジャック・ハウ(Jack Hough)
    ジャクソン・カントレル(Jackson Cantrell)



以上です。


御礼

 最後までお読み頂きまして誠に有難うございます。
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だうじょん


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 本執筆内容は、執筆者個人の備忘録を情報提供のみを目的として公開するものであり、いかなる金融商品や個別株への投資勧誘や投資手法を推奨するものではありません。また、本執筆によって提供される情報は、個々の読者の方々にとって適切であるとは限らず、またその真実性、完全性、正確性、いかなる特定の目的への適時性について保証されるものではありません。 投資を行う際は、株式への投資は大きなリスクを伴うものであることをご認識の上、読者の皆様ご自身の判断と責任で投資なされるようお願い申し上げます。


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