見出し画像

日米の中央銀行のファンダメンタルズについての見解:モルガンスタンレー


 現地8月12日(月)に収録されたモルガン・スタンレーのエコノミストの発言です。日銀の利上げと米国の雇用統計によって引き起こされた市場の混乱は、偶然の不運が重なったものとの見解を示し、米国はソフトランディングの道を進んでいるが、市場を動かすテーマは、いくつもある散在しているとの市場認識とのこと。 尚、小粒で副次的なマクロデータに市場が躍らされやすい季節に入っているとのことで、要注意ではあります。

[主なトピックス]

  • 7月末日から先週半ばまでの市場の混乱は、偶然の不運が重なったもの

  • 米国経済はソフトランディングの道を歩んでいると見ている

  • 日銀の次の利上げは、来年1月と予想

  • 米国はデータの閑散期に入り、副次的な指標に動かされやすくなる

  • 日本のインフレと金利の正常化には、数年が必要

  • 金融政策におけるFRBと日銀の足並みには、今後も変動あり




(1)ポッドキャスト


 本日は、中央銀行、特に日本銀行とFRBについて、また、それらのデータが市場の変動に与える影響についてお話しします。

 先々週から先週初頭にかけて発生した市場の混乱は、偶然の不運が重なったことによるものでした。
 日本銀行が7月31日に開催した金融政策決定会合を前に、市場では9月の利上げが予想されていましたが、7月の可能性も視野に入っていました。会合後の市場の初期反応は比較的穏やかでしたが、記者会見で上田総裁が将来の利上げに言及したことにより、市場に驚きが広がりました。いくらかの利上げはすでに織り込まれていましたが、上田総裁の発言を受けてさらに約8ベーシスポイントの織り込みが進み、その後の市場の変動につながりました。
しかし、その後、内田副総裁が日本銀行の根本的な戦略に変化はなく、市場が不安定な状況では利上げを行わないことを強調したことで、再び状況が安定に向かいました。
 しかし、日本銀行の利上げサイクルに対する注目が高まっている中で、2日後に発表された米国の非農業部門雇用者数のデータが、重要な局面を迎えるきっかけとなりました。
 市場は、日本銀行が利上げを行い、FRBが利下げを行うと予想していましたが、上田総裁の発言と予想を下回った米国の雇用統計が、相互に関連する2つのリスクを表面化させました。それは、米国経済の成長鈍化と円キャリートレードです。
 
 FOMCの7月の会合は日本銀行の決定と同日に行われ、パウエル議長は9月の利下げを示唆しました。それまでFOMCは第1四半期のインフレ上振れを受け、インフレに強く焦点を当てていましたが、インフレが和らぐにつれて、雇用とインフレというデュアル・マンデート(2つの使命)のバランスを取る姿勢に変わりました。そして、FRBの関心がシフトする中で、7月の雇用統計が約11万4千人と予想を下回り、市場はこれに大きく反応しました。この数字は、決して絶望的な数字ではありませんが、注目が集まっていたタイミングでの予想外の結果だったため、市場に大きなサプライズを与えました。
 
 我々の基本的な見解としては、米国経済はソフトランディングをすると考えています。通常、市場は転換点に着目して取引を行いますが、今回のサイクルでは、変化だけでなく経済水準にも目を向ける必要があると強調してきました。第2四半期のGDP成長率は2.6%で、個人消費は2.3%増加し、雇用統計の3カ月平均も、7月の予想外の結果を考慮しても17万人に達しています。
これらの数字は、特に懸念すべきものではありません。失業率は4.3%で、依然として米国にとって低い水準にとどまっています。先月の失業率の0.2%上昇のうち、17ベーシスポイントは労働参加率の増加によるもので、この数値が労働市場の失敗を示していないことは明らかです。確かにこれらは過去のデータですが、景気後退は示していません。また市場は常に将来を見据えていますが、現在の経済の実体データを無視することはできません。
 我々は経済がソフトランディングする道を歩んでいると考えていますが、市場は経済が急速に悪化する兆候を常に警戒しています。しかし、現時点でのデータは、経済が急速に悪化していることを示していません。
  また、我々の外国為替戦略チームは、FRBの利下げと日本銀行の利上げが円高を引き起こすと予測していましたが、最近の動きは少し急速すぎたと言えます。ただし、為替レートは金利差だけを考慮すれば、我々の目標におおむね一致しているにすぎません。

 日本銀行のファンダメンタルズについても言及したいと思います。
我々は、日本銀行が慎重に利上げを進めるという見解を維持しており、次の利上げは来年1月になると予想しています。この利上げは劇的なものではなく、全体の予測を考慮すると、実質金利は2025年末までマイナスのままであると見込んでいます。米国の成長鈍化と円高のテーマは、しばらくの間続くでしょう。
 
 これから数週間は、米国のデータが少なくなり、失業保険申請件数のような季節要因に影響されやすい二次的な指標や、小売売上高のように月ごとの変動が大きく、最近では総支出とあまり相関しないデータが主役となるデータの閑散期に入ります。他に強力な指標がない中で、これらのデータに注目が集まることになるでしょう。
 
 日本のインフレと金利の正常化には、数ヶ月どころか数年かかる可能性があります。FRBと日本銀行の間での政策の歩調合せのペースには、今後も波があるでしょう。
 しかし、現在のところ、そして市場の変動にもかかわらず、我々は両国の経済および中央銀行に対する見通しを維持しています。経済のファンダメンタルズは依然として、我々の基本シナリオに合致していると考えています。

本日は以上です。ご清聴ありがとうございました。



(2)オリジナル・コンテンツ

 オリジナル・コンテンツは、以下リンクからご覧になれます。
尚、本投稿の内容は、参考訳です。また、意訳や省略、情報を補足したコンテンツを含んでいます。


 (Original : 2024/08/12 - 10:00am EST)

[出演]
  モルガン・スタンレー
    グローバル・チーフ・エコノミスト
    セス・カーペンター氏(Seth Carpenter) 


以上です。


御礼

 最後までお読み頂きまして誠に有難うございます。
役に立ちましたら、スキ、フォロー頂けると大変喜び、モチベーションにもつながりますので、是非よろしくお願いいたします。 
だうじょん


免責事項


 本執筆内容は、執筆者個人の備忘録を情報提供のみを目的として公開するものであり、いかなる金融商品や個別株への投資勧誘や投資手法を推奨するものではありません。また、本執筆によって提供される情報は、個々の読者の方々にとって適切であるとは限らず、またその真実性、完全性、正確性、いかなる特定の目的への適時性について保証されるものではありません。 投資を行う際は、株式への投資は大きなリスクを伴うものであることをご認識の上、読者の皆様ご自身の判断と責任で投資なされるようお願い申し上げます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?