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episode:4 2100年も鱒が棲める湖へ

Lakeside Storiesの横塚です。

今年の中禅寺湖は、水位がかなり低く、華厳滝が枯れるなど、釣りや観光業などへの影響が心配されているところです。

そこで、今回は湖の水位について、現状と僕の考えを整理しましたので、共有させてください🖐️

1 標高が高くて深い湖

中禅寺湖は、標高が高く、深くて、水量の多い山岳湖沼です。

【中禅寺湖の諸元】
 水面標高  1,269m(4㎢以上の湖で最高)
 湖面積     11.4㎢
 周囲長     約28km
 最大水深     163m
 貯水量  2,510万㎥

出典:栃木県HP

流出部にダムが設置されていますが、一般的なダムとは異なり、表層2mの水位をゲートで調整しています(オーバーフローの量を調整)。

中禅寺湖の断面図(イメージ)

2 水位は流入と流出のバランスで決まる

湖の流入と流出の内訳はこんな感じです。
赤が流入、緑が流出です。
(見にくいので拡大して閲覧してください🙇‍♂️)

出典:中禅寺湖の富栄養化現象に関する基礎的研究(環境省国立公害研究所:1984)から図を作成

流入(7河川)

◯“湯川”(正式には地獄川)
・流入量の30%を占める最大の流入河川
・富栄養化しており、湖の水質に影響を与える

◯“菖蒲清水”
・流入量の25%を占める
・水量・水温が安定し、鱒の生育に最適な水

◯“千住5河川”
・各河川の水量は少ないものの、イワナ、ホンマス、ブラウントラウトなどの産卵の場

流出(1河川+漏水)

◯“大尻川”
・唯一の流出河川で、華厳滝を形成し、観光業や水力発電などに活用

◯“漏水”
・男体山の噴火によって湖が堰き止められた際の境界部から毎秒4.6㎥漏水し、華厳滝やいろは坂周辺から湧出

湖の水位は、流入と流出のバランスによって決まります。

水位低下の要因は次の2つです。
・流入が少ない(降水量・降雪量の減少)
・流出が多い(ダムの放水量の過多)
※前述したとおり、流出については、漏水が大部分を占めるので、ダムの放水の仕方を議論しても、根本的な課題解決にはなりません。

なお、水位低下について、漁協にクレームをいれる釣り人がいらっしゃいます。
「水が少ないのは漁協のせいだ!努力しろ」

漁協は悪くありませんから、矛先を向けるのはやめましょう💦

3 水位低下が生態系に与える影響

水位の低下によるに生態系への影響については、分からないことが多いですが、ヒメマスへの影響が報告されています。

【水位とヒメマスの関係】
中禅寺湖はすり鉢状でどん深な形状のため、
流入量の低下・水位の低下→生産力の高いシャロー帯の減少→生息域の減少→ヒメマス稚魚の生残率低下

出典:吉原ら(2000):産卵回帰ヒメマスの大型個体出現の周期性とその要因について

また、シャロー帯は、ウグイやワカサギなどの産卵の場となるほか、水生昆虫や抽水植物など様々な生き物にとっても大切なエリアなので、水位の低下は湖にとってプラスではなさそうですね。

水位低下の主な要因は、
“気候変動による降水量・降雪量の減少”

そして、気候変動を引き起こしているのは、皆様ご存知の“地球温暖化”です。

4 地球沸騰化時代をどう生きるか

2100年の地球

地球の気温は、ここ100年間で確実に上昇しており、今後2100年までに最大5.7℃上昇する見込みです。

出典:全国地球温暖化防止活動推進センター


先日、気象庁から発表があり、栃木県内の4月の平均気温が観測史上最高を記録しました。
4月で最高気温30℃越えです💦

温暖化は気候変動を引き起こし、台風の大型化やゲリラ豪雨による水害、水不足による干ばつなど、災害が激甚化します。

2100年の地球🌏

僕はもうこの世にいないですけど、子供や孫はどんな暮らしをしているのか。
想像するだけで怖いです
💦

ちなみに、日本の二酸化炭素排出量は“世界第5位”
こんな小さな国なのに5位。

衣食住を輸入に依存しているので、それらを作る際に海外で排出した二酸化炭素も含めると、日本の実質排出量はもっと多くなるそうです。

僕はいつも“中禅寺湖の未来”とか言ってるけど、2100年の湖は、鱒が棲める環境なのか?
特に、冷水を好むレイクトラウトやヒメマスが心配。

中禅寺湖の温暖化

中禅寺湖の水温は確実に上昇しています。

出典:栃木県水質年表から図を作成

水温上昇は、湖にどのような影響を与えるのか🤔

目に見えている影響としては、藻類の異常繁茂です。

2023年夏の中禅寺湖(コタンの桟橋から)

実は、いま世界中の透明度の高い山岳湖沼で同じ現象が問題になっています。


他にも、様々な影響が出てくるはずです。

水質の悪化をはじめ、プランクトンや水生昆虫の種類や量の変化、それらを起点とする食物連鎖や鱒の生態への影響などなど。

「生き物は温暖化に適応して進化するから問題ない」という考え方もあると思いますが、

「温暖化のスピードが速すぎて、適応する隙も与えてくれない」というのが僕の考えです。

温暖化を引き起こしたのは人間。
これは紛れもない事実。

自分たちの豊かな暮らしと引き替えに、地球を壊してしまった🌏

僕は毎日地球に負荷をかけ、資源を食い潰し、豊かな人生を送っています。

でも、自分勝手だけど、できる限り地球とフェアな生き方をしたい。

いまを生きる者として、様々な矛盾を抱えながら、責任を負い、役割を果たしたいと思っています。

5 雲の上のサステナブルリゾート「奥日光」

温暖化を食い止めるには、温室効果ガスの排出を減らし、カーボンニュートラルの実現が不可欠です。

昨年、中禅寺湖を含む奥日光は、環境省から、カーボンニュートラルの実現を目指す「脱炭素先行地域」に選定されました。

“雲の上のサステナブルリゾート「奥日光」”を掲げ、多様な観光資源と脱炭素により地域をアップデートし、サステナブルツーリズムを推進していきます。

温暖化を止めるって簡単に言っても
雲を掴むような話だし、スケールがデカすぎて個人にはどうすることもできないと思ってしまいますよね。

でも、中禅寺湖の未来、鱒釣りの未来を考えた時に、温暖化は避けて通れない課題です。

僕は、釣り人だからこそ、温暖化を自分事として捉え、行動できると信じています。

だって、鱒が棲めない未来、ワクワクしますか?

冷水を好む鱒にとって、温暖化って最悪なシナリオ。

僕らの何気ない毎日が、鱒たちを着実に追い込んでいく。

僕が温暖化を防ぎたいと思えたのは、中禅寺湖のおかげです。

「釣りとトラウト」が「僕と地球」を繋いでくれました。

加えて、僕の親友であり、サステナブルな生き方を体現しているRiverlineの「綱っち」が、そばにいてくれて、色々な視点をくれることも大いに影響しています。


人は生態系の一部であり、地球を大切にしなきゃいけないことに気付くことができる。

これは“鱒釣りの価値(チカラ)”だと思っています。

Lakeside Storiesでは、温暖化という地球規模の課題に対しても、中禅寺湖から具体的にアプローチしていきます。

今の行動が未来を創る。

「昔はよかった」と嘆くよりも

「昔は悪かったけど、今はこんなにも良くなったよ」って言えるお爺さんに僕はなりたい。

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