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フルブライト奨学金ジャーナリストプログラムとMITのフェローシップを受験してみた話

1.このnoteを書く理由


まず、結論から言うとフルブライト奨学金は合格してません(涙)。合格体験記をお求めの方には期待外れとなります。ご承知おきください。時期的にはMITの最終面接で「ダイヤモンドプリンセス号が云々」と話すくらいの頃です。情報自体はそれほど古くないですが、コロナ前後の傾向変化はカバーしていませんので併せてご斟酌ください。

有名なフルブライト奨学金には毎年1~3人の記者が給付型奨学金を得て、米国で最長9カ月間、好きなテーマを研究できる「ジャーナリストプログラム」があります。地方紙でも全国紙でもフリーでも5年以上の経験があれば受験できます。渡航費や生活費など数百万円が給付される大型奨学金です。

受けてみたら?と会社の後輩たちに言ってきましたが、なかなか挑戦者は現れず。まず隗より始めよで、自分で受けてみることにしました。結果はどうあれ、より具体的な後押しができるようになればと。

何より、今この話をnoteに書きたかったのは、タイミングです。例年3月に募集要項が発表され、4月1日から5月31日がオンライン登録期間となります。今すぐ準備をすれば最新の応募に間に合う時期です。少しでも興味を持たれた若い新聞記者の方々には、ぜひ挑戦してみてほしいと思います。
※(3月15日追記)3月15日にオンライン登録が始まりました。締め切りは5月15日まで。例年とは異なるオンライン登録期間になっています。正式な書類の締め切りは7月15日のようです。https://fulbright.jp/scholarship/

2.フルブライト奨学金ジャーナリストプログラムとは


詳細は必ず日米教育委員会のサイトをご覧ください。正式な説明や合格者の体験記はそちらでしっかりご覧になれます。2月12日現在、掲載されているのは前年度の情報なのでご注意を。24年度給付分の募集要項や選考日程は3月に発表されると思います。

対象者は次の通り。

対象者
1)a.またはb.のいずれかに該当する者。
a.日本の一般的報道機関(新聞社・雑誌社・通信社・テレビ局・ラジオ局)に5年以上勤続しているジャーナリスト。
b.上記に該当する報道機関に定期的に寄稿執筆・出演している経験5年以上の評論家。
2)米国で支障なく研究を行えるだけの十分な英語能力があること。
3)米国在住経験の少ない者を優先する。

日米教育委員会ウェブサイトより

例年4月1日から5月末までにオンライン登録をし(今年は3月15日から5月15日)、7月末まで(今年は7月15日まで)に申請書類一式(願書、履歴書=和文と英文=、英⽂推薦状3通、自分の記事のサンプル)を提出します。書類審査を経て10月~11月に永田町の日米教育委員会で面接(英語)を受けます。12月までに合否が通知され、合格者は翌7月以降に渡米する流れになります。

オンライン登録の時点では、そこまで詳しく書く必要はないので、とりあえず登録をして第1歩を踏み出すことが重要です。7月末までに申請書類一式をかき集めることになりますが、オンライン登録を躊躇して遅らせるほど、その取り掛かりが遅れるからです。最終的に受験できるかどうかとか、時間が取れるかどうかは気にせず、とにかくオンライン登録をし、申請書類の準備に取り掛かるのがいいと思います。

願書の肝はProject Statement。自分が研究したいテーマ、なぜ今それが重要か、なぜ米国でやる必要があるか、どう実行するか、結果は社会にどう貢献するか、などを英文で書きます。明確な目的意識が問われます。ジャーナリストプログラムの目的はスキル向上ではなく、あくまで研究という趣旨を踏まえる必要があります。自分はRedefining Local Journalism in the SDGs Eraと題し、米国のnews desert(ニュース砂漠)と各州・各地域のSDGsの達成指標に相関があるかを研究テーマとしました。

冒頭はこんな感じでした(実際は英語。DeepLで抄訳)。

日米ともにローカルジャーナリズムの存続が危ぶまれている。一方、国連は、2030年までに各国が目指すべき17の目標を定めた「持続可能な開発目標(SDGs)」を採択した。この目標は、世界が「利益至上主義」を脱却し、市民の幸福の重要性を認識することを意図している。この意図は、ローカル・ジャーナリズムの使命とぴったり重なる。したがって、SDGsとローカル・ジャーナリズム、そして地域住民の関係に注目することは、新しいローカル・ジャーナリズムのあり方を考える上で貴重なヒントを得ることができるだろう。

My Project Statement

3.申請書類の難関ポイント

最も大切なのは目的意識ですが、それ以外に困難を感じたのは(1)時間の捻出(2)英語力(3)推薦書3通(4)志望大学院の選定―でした。

つまるところ(1)に集約される気もしますが、社会部の管理職という立場、3児の父親という立場など、言い訳すればきりがないですが、時間の捻出はなかなか厳しいのが実情。しかし最優先はあくまで本業と家庭とし、受験の準備の優先順位が上がって本末転倒になってしまわないように通勤時間や休日・夜中のすきま時間を使いました。

(2)は留学経験が全くない上に日常的に英語で話す機会もないので苦労しました。フルブライトも大学院もEnglish Proficiency(英語運用能力)の担保が求められます。TOEICやTOEFLを一度も受けたことがないので、学生時代に経験のある英検を四半世紀ぶりに受けました。40歳も半ばで受けるとは思いませんでしたが、なんとか1級を取得。大変でしたが、資格試験のためではなく明確な目的があったたことが大きかったです。英検は実用性に乏しいと批判されがちですが、まさに奨学金や大学院受験のためのアカデミック寄りの資格だと実感しました。

(3)の推薦書3通は真面目な大学生活を送っていないと怯んでしまうかもしれません。専攻は何か、大学の経験をいかに人生に生かしているかが問われます。やはり指導教官の推薦書はあったほうがいいようです。若い記者はまだ指導教官と交流があると思うので、良好な関係を保ち、相談してみることをお勧めします。指導教官が無理そうなら、取材でお世話になった大学教員に相談してもいいかもしれません。自分は不真面目な大学時代と不義理を後悔しましたが、指導教官がもともと自分の記事を長年熱心に読んでくれていたので恵まれていました。会社もこうした挑戦には理解があるので、当時の編集局長が推薦書を快諾してくれました。

(4)に関しては、申請書提出期限の7月末の段階で、希望する大学院(教授名)を3つ明記する必要があります。他の書類を揃える作業で一杯いっぱいになってしまうことが予想されるので、希望する大学院3つを慌てて探す羽目にならないように注意が必要です。自分は少しだけ縁のあったMITのフェローシップを第一志望としました。

4.結び

面接の雰囲気などまだまだ書き足りませんが、長くなったので続きは次の機会に。一つ受験して再認識したことはフルブライトはやはり若者のための奨学金ということです。ぜひ若い方こそ遠慮せず挑戦してほしいと思います。関心がある方がいれば自分ができる範囲でご協力します(会社に合格された先輩がいれば、その方に聞くのが一番ですが)。こうしたことは会社の壁なんて関係ないと思いますので、お互いそれぞれの紙面をより良くするための挑戦を続け、一緒に新聞業界を前向きに盛り上げていきましょう。

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