見出し画像

いちごの冬眠

 島根県に移住して1年が経ち、雪や雨を気まぐれに降らせる陰鬱な空、強い季節風と寒気が再びやって来ました。太平洋側育ちの自分には正座一時間と同じくらい厳しい肉体的試練ですが、濃厚な味のいちごを作ろうと思っている自分には、原産地のヨーロッパに似た、この環境が必要です。それに、山陰の人たちは親切だから耐えられます。

画像1

 この季節にぴったりの話題をひとつ。いちごは放っておくと冬眠するのをご存じでしょうか。しかも、冬眠には2パターンあり、知れば知るほどいちご愛が深くなります。
 生育旺盛な夏が過ぎ、秋の短日・低温を敏感に察知していちごは冬支度を始めます。寒い冬をやり過ごすために体の表面積を小さくし、地熱を得て寒風を避けるため、地面に張り付いた容姿にかえていきます(わい化、ロゼット化)。この変化を、自らの意思で休眠に入る「自発休眠」と呼んでいます(他に学術的呼称あり)。


 植物が休眠する、というだけでも面白いのに、さらに驚異の生態が。ある一定期間、寒さを経験すると今度は「強制休眠」という、起きたのに寝たふりの状態にはいります。春になったら栄養成長をスタートできるよう、前もって気持ちの準備をするのです。外からは、春になるまでずっと同じ状態で休眠しているように見えるのですが、いちごは、どこかのタイミングで覚醒しているんですね。布団に入っている人間にも「睡眠中の人」と「寒くて布団からでられない人」の2つの状態があるのと同じですね。そう思うと、なんともいじらしいというか、可愛いというか!

イチゴとチョコを使った商品が増えてます。激ウマ

 ちなみに、皆さんがこの季節に食べているいちごは、ほぼ100%促成栽培という方法で育てられています。眠りそうないちごに「もう春だよ」と勘違いさせ、寝ぼけながらせっせと作る果実を人間が頂戴している構図です。だまし過ぎると果実を作るのを止めて「いい天気だ!」と体を作るばかりにイチゴの意識が傾くので、温度、湿度、日射量、肥料等を微妙にコントロールしながら間隙をつくような管理が求められます。まるで、足立美術館の庭のような繊細さです。
 先人たちの英知、苦労と工夫の数々に感謝です。

安来市 足立美術館の名庭園

「How's it going?つながるイラスト」様のnoteみんなのフォトギャラリーで公開されたイラストが、タイトルにぴったりすぎるイメージだったので使用させて頂きました。厚く御礼申し上げます。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?