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八千代座で最高のエンターテイメントに出会う

昨日、ずっと楽しみにしていた市川團十郎さん、ぼたんさん、新之助さんの八千代座特別公演へ行ってきた。

團十郎さんの襲名披露公演、実は去年博多座で観たのだが、娘さんのぼたんさんをどうしても観たくて、今回熊本の八千代座まで足を延ばした。

博多駅から新幹線「つばめ」に乗って約40分。新玉名駅で下車し、そこから更に、八千代座のある山鹿までタクシーで30分。

福岡と熊本はお隣同士なのに、熊本の自然の美しさは福岡のそれとは全く違う。

新玉名駅から会場までの車内から見えた風景。緑はとても輝いており、川は広く、水が綺麗なのが良くわかった。そこに特別な景色がある訳ではなかったが、豊かな緑を見ているだけで、会場までの道のりはとても楽しかった。

八千代座が近づくにつれ、何本もの興行のぼりが見えてくる。普段は静かであろう山鹿の街にとって、この公演が特別なものである事が伝わってくる。

徐々に風情ある観光通りへと差し掛かり、成田屋さんの家紋の入った提灯がずらり。街を挙げてのお祭りムード。私もどんどんワクワクして来る。

車が入れるギリギリの会場手前で降ろしてもらい、何となく参道っぽい道を歩いて進むと、ジャジャーン!そこには「八千代座」と堂々と書かれた武家屋敷風の立派な建物が!


思わず「お〜っ」と声をあげてしまう佇まい。靴を脱いで早速中へ。流石、江戸時代の伝統的な芝居小屋様式で建設された小屋だけに、席番号は、座席に配置された座布団に記してある。何とまあ粋な!

会場内は今回写真撮影NGだったので写真を掲載することは出来ないが、会場は全て木で作られ、花道、舞台、座席間、全ての距離が驚く程に近かった。壁や天井にはカラフルな明治時代?の看板が敷き詰められており、まるでタイムスリップしたかのような空間。

観客は満ち満ちの状態で、皆小さくなりながらお弁当を食べ、普段着でぺちゃくちゃとお喋りしながら、暑い暑いと扇子で仰ぐ。

今でこそ歌舞伎はやや敷居が高く、正装して観にいかなければならないイメージがあるが、この光景を見ていると、江戸時代は皆こんな風に気軽に歌舞伎を楽しんでいたのだろうと想像してしまう。

暫く江戸気分に浸っていると、早くも開場の時間。隣に座る母の真横の花道から、簡単に触れられそうな距離で、團十郎さん達が暖簾をくぐってサッと出てくる。会場が一瞬で沸く。

だが、歌舞伎座や博多座のようなピリッとした空気感ではなく、非常にアットホーム。和気藹々とした雰囲気で、親子3人による、演目や見所の紹介が行われる。

紹介が一通り終わると、端から司会者が登場。何と今日はスペシャルゲストにお越し頂きましたと、急にゲストの紹介が始まる。

まだ見ぬゲストに、観客はそれを勝手に「くまモン」だと予想し、あちこちから「くまモン」、「くまモン」という声が聞こえる。

そして司会者の「それではご登場頂きましょう」の後に続いたのは「チヨマツくんです!」だった。花道から、羽織袴のような衣装を着た松のゆるキャラが、「みんな、お待たせ〜」的な感じで現れる。

全員、一応拍手はしているが、またあちこちから「チヨマツくんって誰?」っという声が聞こえてくる。私もくまモンを迎え入れる気満々で拍手の準備をしていたものだから、チヨマツに出鼻をくじかれたような気持ちになる。

観客の困惑した反応を即座に察知した司会者。すぐさま、チヨマツくんは、八千代座の100周年を記念して作られたキャラクターなのだと説明する。

そしてこの謎の松のモチーフは、八千代座の舞台背景に使われている松羽目(まつばめ)から来ているそう。これ以上にない適任者であったチヨマツくんの正体に、皆一同ホッとし、改めて大きな拍手を送る。

すると司会者の男性、「実は本日、チヨマツくんのお友達も駆けつけてくれました。それではどうぞ!」

皆、チヨマツくんのサブキャラみたいなのが出て来ると思っていた。しかし何となんと、今度は本当にくまモンが現れた。私も一度騙されたので、このサプライズくまモンに、物凄く興奮する。「あ、くまモン!くまモン!本物だ〜」と騒いでしまった。

私はこれまでくまモンをテレビでしか観たことがなく、ずっと熊だけに、相当にデカいのだと思い込んでいた。しかし実物はそんなに大きい訳ではなく、また後頭部が結構平らだったのに驚いた。

だが、可愛さは想像通り、いやそれ以上。くまモンはご当地キャラ界で群を抜いて可愛い。

ゆるキャラたちと、出演者お三方のハグや写真撮影が終わると、ぼたんさんと新之助さんは、準備のために舞台袖へ戻られた。

舞台に残られた團十郎さん。軽く締めの挨拶をして去られるのだろうと思っていたら、何とQ&A セッションが始まった。こんなこと、大きな会場ではあり得ない。何と贅沢な。

観客4〜5人からの簡単な質問に答えられ、ご挨拶が終了。いよいよ演目の始まり。まずは、ぼたんさんの「羽衣」。三保松原に伝わる羽衣伝説を題材にした演目で、ぼたんさんは天女の役。

子供の可愛い演技を期待していたら見事に裏切られた。あんなに優雅に舞う子供がいるのかと、本当に見惚れてしまった。まさに天女が舞っているかのような姿。ため息が出そうだった。

そして次が新之助さんによる「猩々(しょうじょう)」。中国の伝説に登場する、水の中に棲む、酒好きな霊獣猩々を題材にした演目。

最初のご挨拶の時、お姉さんに比べまだ幼い印象があったが、流石役者さん。お化粧して衣装を来て舞台に上がると、もう目つきが違う。

新之助さん演じる猩々が、酒売りの前で酒を飲み始め、ほろ酔いになり、水上を舞い遊んでいる姿が、まるで鬼の妖精が舞っているようで、こちらも新之助さんに目が釘付けになってしまった。

そして最後が團十郎さんとぼたんさんによる「素襖落(すおうおとし)」。團十郎さん演じる太郎冠者が、自分が仕える大名の代わりに、伯父の家へ、約束していたお伊勢参りへ一緒に行くために迎えに行く。

ぼたんさん演じる、伯父の娘である姫御寮が対応してくれるのだが、生憎、その伯父は不在。また彼は多忙のため、伊勢へは同行出来ないと断られる。

太郎冠者は帰ろうとするが、姫御寮は、折角なので、太郎冠者の伊勢参詣の門出を祝おうと、酒宴を催す。

お酒が大好きな太郎冠者。酔いが回り、姫御寮に、屋島の合戦の折の源氏武将、那須与一が平家の船に立てられた扇の的を射抜いた物語を踊ってみせる。喜んだ姫御寮は、太郎冠者に褒美として武士の礼服である素襖を与える。

ご機嫌で大名の元へ戻る太郎冠者。だが一方、彼の帰りを待ちかねていた大名は不機嫌。まだ酔っている太郎冠者は、うっかり素襖を落としてしまう。

これを拾った大名が、素襖を隠し持ち太郎冠者をからかう、、、とやっている内に幕が降りる。

ぼたんさん、この演目で踊りを披露されることはなかったが、まあ佇まいが美しい。姫になりきっている。そして團十郎さんが演じる太郎冠者は見事にひょうきんだった。

これまで、ひょうきんな役を演じられる團十郎さんは見たことがなかったので、あんな役もこなされるのかと、その意外さに感動した。

今までに観た歌舞伎で、私のダントツのお気に入りは「ワンピース」だった。だが、今回八千代座へ足を運んだことで、そのナンバーワンは見事に塗り替えられた。

本当に心から楽しかった。また機会があれば是非行きたい。

八千代座公式ホームページ↓
https://yamaga.site/?page_id=2

チヨマツくん↓
https://w.atwiki.jp/yurupedia/pages/1817.html

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