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「道がそこにあると感じられ、勇気を得られた」森川結子さん

私たちが2015年から毎年開催してきた「Creative Leadership」。職種や組織、地域を超えて、のべ1000名もの多種多様な方々に受講していただきました。これまで受講されたアラムナイ(同窓生)の方々に登場いただき、受講のきっかけや見つけたクリアボイス※、受講後の変化についてお話を聞いていきます。

※クリアボイスとは
「クリアボイス」とは、リーダーとして自分はどうありたいのか、 内側から湧き上がってくる想いに向き合い、言語化すること。「迷いなき“クリアな声”」に由来してネーミングされています。クリエイティブリーダーシップのプログラムでは「クリアボイス」を見つけていく過程で、人々が内省を深めながら、自身が背負う「べき論」と「本音」を識別し、例え心地悪くとも「本音」に徹底的に耳を傾け、自分の信念を見つけ、そこから発せられる「クリアボイス」を見つけていきます。

今回は2018年に「Creative Leadership」を受講した森川結子さんにお話を聞きました!


●お話を聞いた方

森川結子(もりかわ・ゆうこ)さん
独立行政法人 国際協力機構にて、モロッコ、ペルーでの駐在を含め、国際協力プロジェクトの形成、実施などに従事。各地のカウンターパートと協力して仕事をする中で、人やチームの奥深さを感じたことをきっかけにコーチングを学び、2020年プロ資格を取得。

●リーダーとして行き詰まっていたときに出会った

私は現在、JICA(独立行政法人 国際協力機構)で働いています。幼少期にパナマや香港で暮らした経験があった私にとって、国際協力ができる仕事に就くことは高校生のころからの希望でした。途上国で生まれた子どもたちに比べて、自分がいかにチャンスに恵まれているかに気づき、その格差を減らす仕事がしたいと思ったのがきっかけです。
JICAは、途上国といわれる地域に対して、さまざまな支援を行う国際協力機関です。途上国の政府からの依頼――たとえば、水道施設を作るような公共事業など、さまざまな社会課題を解決するためにサポートを行うのが主な仕事です。

2018年に「Creative Leadership(以下、CL)」を受講したとき、私はペルー事務所で働いていました。その2年前からペルーに行き、ペルー政府の行う公共事業をサポートする現場側のマネジメントをしていて、初めてチームリーダーの仕事に就いていた時期です。日本人の担当者とペルー人のスタッフ、あわせて10人くらいのチームを束ねていたのですが、そのチームが深刻なコミュニケーション不全に陥ってしまいました。
日本政府やJICAからの連絡を受け、日本人スタッフはペルー人スタッフを通してペルー政府に申し入れや依頼、確認を行うのですが、次第にその伝言ゲームがうまくいかなくなったのです。ペルー人スタッフは「なんでそんなことを日本人が言ってくるのかわからない」と言い、日本人スタッフは板挟みになって苦しむという、ストレスフルな状態が続いていました。

リーダーとして何とかしなくてはと思いながらも、どう動いたらいいかがわからずに悶々としていました。そんなときに出会ったのがCLです。ペルーから一時帰国したタイミングで偶然CLを知り、モジュール1を受講しました。当時は講師のPaul(ポール)とDavid(ディヴィッド)が日本に来て、対面での開講でした。

●「問いの力」を実感し、無意識の自分に気づく

印象に残っているのは「問いの力」を実感したことです。Davidが中央に座り、彼自身の個人的な話をもとに参加者から質問を募り、その質問に対して点数をつけるという内容でした。その点数は、Davidの心にどれだけ響いたかを数値化したものだったと思います。
私はそれまで、どんな質問をすれば相手の心にインパクトを与えられるか、考えてきませんでした。でも、Davidと質問者とのやり取りを見て、人の心に対して問いを投げかけることで、目の前の人の価値観や感情にまでアプローチできると気づいたのです。

ほかにも、学んだことはたくさんあります。クリエイティブ合気道では通常「話に詰まったら相手にバトンタッチする」というルールがありますが、私はなぜかそのルールが頭から抜け落ちてしまい、無理してひとりで頑張ってしまったんです。
途中でそのルールを思い出し、「相手に助けを求めてもいいんだ」と気づくとともに、ひとりでやろうとばかりしている自分にも気づけました。ひとりで全部はできないから、時には手放してメンバーの力を借りることも大切なのに、私は普段それができていなかった。無意識の行動パターンが出ていたのです。

レゴブロックを使ったワークも印象に残っています。私はリーダー役を割り振られたのですが、そのときは一歩退いたところから全員を見て、それぞれの状態を把握したうえで足りないところにコミュニケーション促すことができたと思います。その経験から、リーダーは何も全部を引っ張っていく必要はなく、俯瞰的に全員を見ることもリーダーのひとつの在り方なのだと体感できました
その経験は、ペルーでチームリーダーとして気を張っていた私が、少し肩の力を抜けるようになったきっかけのひとつだったと思います。

●受講したことで「道がそこにある」と感じられた

「In my life, What I stand for~(私が人生において、立ち向かうもの/大切にしたいことは~)」を見つけるワークのこともよく覚えています。これが現在のクリアボイスに近いものだと思うのですが、参加者同士でインタビューしながら、自分を体現するものを見つけていきました。このときは確か、私自身の弱さ……あえて弱い部分を見せたり使ったりすることを大切にしたい、というお話をしました。先ほどの無意識の行動パターンに気づくことで、見出した答えです。

CLを通して、先天的であれ後天的であれ、自分で自分を変えていけること、そしてそれをガイドしてくれるPaulとDavidのような人たちがいることがわかって、本当に安心しました。当時の私はどこに活路を見出したらよいのかもわからず、かなり悩んでいました。でも、PaulとDavidのおかげで「道がそこにある」と感じられ、勇気を得られたのです。

私自身が「自分ひとりでなんとかしなきゃ」という気持ちから解放され、ペルーに戻ってからは、上向きに変わりました。チームコーチングを行う外部コーチにも入ってもらっていたこともあり、プロの力を借りながら「自分たちがどんなチームになりたいかを全員で考えよう!」とみんなをリードできるようになりました。
問題があるのがわかっていても見ないふりをしていた以前の状態から、みんなで一緒に問題と向き合い、変化を起こすために何をしていくかを考えられるようになったのは大きな進歩でした。

そのうちに、チームメンバーの「人となり」に興味を持つようになっていきました。日本人スタッフはペルーに駐在している身なので、仕事と生活が一体化しているところがあります。でも、ペルー人スタッフにとって、仕事はあくまで生活の一部。仕事の優先度は、日本人スタッフとは違います。その違いが少しずつわかってきて、仕事だけにとどまらない人間関係を作る方向にアプローチできるようになりました。結果的にギスギス感はなくなっていき、チームの危機的な状況を脱することができたと思います。

●苦しいときほど、新しいものに抵抗なく入っていける

ペルーに駐在したあと、私は夫の留学について約1年アメリカに渡り、そのあとに日本のJICA本部に戻ってから4年ほどが経ちました。去年(2022年)はJICAの研修制度を用いて、デンマークデザインセンター(デザインの力でさまざまな社会課題を解決する組織)に3か月間在籍しました。

デンマークデザインセンターの目指すものは社会課題の解決であり、JICAと近いミッションを持っています。同じような目的を持ちながらも、規模や性質、カルチャーがまったく違っていて、「自分たちにしかできない、新しい地平を切り開くのがミッションだ」という考えのもと、クリエイティブなやり方を試みています。
それを見て学ぶうち、JICA自体が、カウンターパート(受け入れ先の機関)となる国に対して、コーチのような役割を果たせたらいいのではと考えるようになりました。その国自体がどうしていきたいと思っているのかを、いかに引き出せるかが大切だと思います。外側からあれこれアドバイスするより、「本当はこうしたい」という想いを引き出すこと。そして、いかにその国の人々にイニシアティブを持ってもらうかが、この仕事の本質だと感じるのです。

この考えにたどり着けたのも、もとをたどるとCLがあって、後から思えばいろいろなことが繋がっていました。CLを受けたときは苦しくて、藁をもつかむ思いでしたが、そういうときほど新しいものに抵抗なく入っていける。あのときの私のように、やりたいことがあるけれど、どうやったらいいかわからずに悩んでいる人に、ぜひ受講してほしいです。日本では「リーダーシップ」というと、何かしらの役職がついている一部の人だけのものというイメージがありますが、そんなことはありません。「自分から始まるリーダーシップ」もあることを知らない人ほど、受けてもらいたいと思います。

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次回Creative Leadershipのプログラムは、2024年10月に開催を予定しております。ぜひチェックしてみてください。

Creative Leadershipプログラム開催予定
10月:対面で学ぶコース

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