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20年前、タイ人の彼氏がいる日本人女子とご飯を食べた話

すっごい旅に行きたいから、今日は旅に行った時のことを書こうと思う。

若い頃、ディカプリオ主演の「The Beach」に憧れ、よくバックパックを背負って足繁くタイに通っていた。

当時バンコクにある「カオサンロード」という通りが、バックパッカーの聖地と言われ、世界各国のバックパッカーたちがカオサンに集まり、次の行先のチケット買ったり情報交換をしていた。

私の旅も、たいがい「とりあえずカオサン行っとけ」で始まっていた。

当時インターネットはギリあったけど、まだ速度が限りなく遅くて、iモードとか使っていた時代。

SIMやWi-Fiなんて便利なものはなく、見様見真似で作ったホットメールを旅で出会った人達と交換し、3日に一度、1時間程度ネットカフェに行ってメールをチェックする感じであった。

でも、1時間ネットカフェに居たとしても、ネットの速度が遅すぎて、そのうちの3分の1はサイトにアクセスする時間だったし、自分の前に使った人が自国のランゲージに設定してたりすると直せなくて、「アラビア語っぽい画面を勘で操作する」みたいなことも日常茶飯事だった。

しかも、無事メールをチェックして返信しても、次にまたメールを見られるのは3日後なわけで、今思うと「どんだけタイムラグあんねん、、」という感じだが当時はこれが普通の感覚だった。

たまに運良く、メールした相手もたまたまネットカフェにいて、リアルタイムでやりとりが出来たりすると、相当テンションが上がったものである。

さて、私は昔からびっくりするくらい偶然や奇跡的な出会いが多い人生なのだが、タイでも印象的な出来事があったので書いてみようと思う。

あれは、20歳くらいの頃、例によって、また一人でバックパックでタイに行った時のことだ。

暇でカオサンロードをブラブラしてた私は、とあるタイ人の男の子に声をかけられた。

「今夜一緒にご飯どう?」みたいなナンパ的なお誘いで、普段そんな誘いに乗らないのだがなぜか約束してしまった。

たぶん一人でヒマだったし、「悪い人ではなさそうだからご飯くらいいいか」とか思ったんだと思う。

その夜、誘ってくれた割にはかなり質素なタイの庶民的な食堂に現れた彼の横には、男女のカップルがいた。

よくよく見ると、女の子の方はタイ人っぽい顔をした日本人で、彼氏は全身刺青のタイ人だった。

女の子の名前はミホ。

年齢は私と一緒、タイ語ペラペラ。

この夜は、出会ったばかりの謎の4人でシンハビール片手にカオマンガイを食べながら、ポツポツと会話をする。

そして、どうやらその女の子はタイに2年ほど住んでいて、フリーランスのデザイナーとして働いているということが分かってきた。

ふうん、なるほどね。

しかし色々と会話はしてみるものの、なんだか掴み所のない不思議な雰囲気の女の子で、せっかちな私は彼女との会話にもどかしさを感じた。

「やっぱりタイにずっと居ると、人に無理やり合わせなくなるのかなぁ」なんて考えながら、連絡先も交換せずご飯会終了。

タイメンズもいい奴だったが、特にトキメキもなくバイバイ。

その後、私はタイで一人旅を続け、日本に戻った。

日本に戻ってから、私はこの一件は完全に忘れており、また働いては旅に出たりを繰り返し、適当に生きてきた。

さて、タイに行ってから3年が経ったある日、沖縄のとある小さな島にまたしてもバックパッカーとして旅に出ることになった。

とても小さい島で、いまでこそリゾートホテルがひしめき合ってるが、当時は本当に何もなく、知る人ぞ知る秘境のような島だった。

そんな離島に、なぜかぽつんとゲストハウスがあって、確かドミトリーで1泊1500円程度だったと思うのだが、貧乏旅行だった私は迷うことなくそこを予約。

ドミトリーとは、大部屋で他の旅行者と2段ベットをシェアするスタイルなのだが、若い頃は出来るだけ節約して旅をしたかったので、国内外でよく利用していた。

そのドミトリーの上段ベットで寝泊りすることになった私は、下の段に一人旅のバックパッカー女子が泊まってることを知る。

バックパッカーは「誰かと関わりを持ちたいタイプ」と「極力一人で過ごしたいタイプ」といるため、どっちのタイプか見極める前はとりあえず挨拶程度がマナー。

ということで、下の段のバックパッカー女子とも2,3日は挨拶を交わす程度だったのだが、ある夜ゲストハウスの「共用スペース」で一人でご飯を食べていたら、彼女が近くにいたので自然と会話することになった。

だいたいのゲストハウスにあるこの「共有スペース」は、旅人の情報交換や憩いの場に最適な場所で、ガイドブックや地図など旅に役立つ物が置いてあったり、自炊してご飯を食べてる人、読書をしてる人、ハンモックで寝てる人、飲み会をしてる人、など、みな思い思いに過ごしている。

この共有スペースの雰囲気で、そのゲストハウスの客層、雰囲気、コンセプトがわかる気がする。

さて、ベット下段のバックパッカー女子と会話していくうちに、彼女が無類のタイ好きということがわかってきた。

なんと、フリーランスの仕事をしながら現地に住み、タイ人の彼氏がいたこともあると言うではないか!

あれ??

なんか昔似たような話を聞いたことあるな…。

どこだったっけ??

あ、そういや3年前にタイで同じような女の子いたな。

…と、思い出が蘇った途端、完全に目の前にいる人物と合体!!

あっ!!!!

あの時の不思議ちゃん!!ミホだ!!

「えーーーーーー!!私あなたに会ったことあるかも!カオサンで!!!」

「え?!」

「ほら、3年くらい前にタイの男の子たちと食堂でご飯食べたじゃん!!ミホは彼氏と来てた」

「ああ!思い出した!!!ウケる!!!!」

その後はミホから「タイの男談義」をたくさん聞かせてもらい、大盛り上がり。

3年前に会ったときは話があまり噛み合わない気がしたが、こうやって奇跡的な出会いを果たしたことで一気に距離が縮まり、昔からの友人だった様な気持ちになった。

あの時は彼氏と一緒にいておしとやかだったミホも、なんだ、二人で話せばめちゃノリいい奴じゃないか。

「やっぱさ、好きな土地って似ちゃうから、こうやってどっかで会っちゃうんだねえ~」なんて会話しながら、3年越しの連絡先を交換したのである。

あれから20年、今でも定期的に連絡を取り合うミホは、自分の本当の価値観を共有できる数少ない友達の一人だ。

ミホも私もお互い結婚して子供もいて、側から見ると落ち着いたように見えるが、根本の「風来坊気質」は全く変わってない。

時間や状況が整えば、いつでもバックパッカーに戻れる気持ちの準備は出来ている。

旅の出会いは一期一会。

されど、またどこかで、然るべきタイミングで、再会出来るのもまた旅の良さである。

ラエコ

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