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夫が30万円を落とした話。

ある朝、事件は起きた。

深夜、べろんべろんに酔ってご機嫌で帰宅した夫。
コートを脱がせて、スーツを脱がせて、ズボンを脱ぎながら半ケツ状態になり、靴下を履いたまま、リビングの絨毯の上でそのまま寝てしまった。
絵に描いたような”変態の図”だ。

朝、目が覚めた夫が
夫:「俺のバッグの中、見てみ。良い物入っているよ(ニヤニヤ」

鞄を開けると、使って丸まったティッシュ(汚い)、レシートの残骸、空っぽのフリスクが2つ(だから捨てろって)、財布、雑巾と化したハンカチ。

私:「ゴミしか入ってないけど。」
夫:「(ニヤニヤ)それ開けていいから。」
私:「何を開けるの?マジでゴミしか入ってないって。」
夫:「え?」
私:「え?」

二日酔いでグデグデだった夫は、瞬時に飛び起きてカバンの中を確かめる。

夫:「え??どうなってるの?オレ落とした?!」
私:「何が入ってたの?」
夫:「昨日、会社の表彰式でもらったアワード(賞金)の30万円が…」
私:「あら、表彰されたの?凄いじゃん!おめでとう!で、30万円て?」
夫:「いや…ここに…」
私:「…」

あれはもう10年以上前。
通常は、受賞時には目録だけ渡し、賞金は銀行振り込みなのに、この年だけは実際に現金を入れて渡されたらしい。
夫は受賞を大いに喜び、飲みすぎてお金を落とした、らしい。
曖昧な記憶をたどると、その賞金袋から一万円札を1枚抜いて、タクシー代を払った記憶があるという。

そこで夫は気が付いた。
あれ、ノートパソコンもない。携帯もない。

バカ野郎。

GPSで追跡する。
すると、某警察署にあることが分かった。
誰かがこのバカ野郎のPCと携帯を警察署に届けてくれたらしい。

早速連絡してみる。
残念ながら現金は届いていないという。

もらった賞金を、そのあと皆でパーっと飲んで使っちゃった!って言われた方がまだマシだった(それはそれで激怒するけど)。

今頃はゴミとなり東京湾の一部になっているかもしれない。
もしくは物語のように、お金に困った誰かが拾って、その人の人生に役立ったかもしれない。

できれば後者であってほしい。
きっとそうだ。そうに違いない。
そう思わないと、怒りがおさまらん。

「賞金をもらった」なんて聞かなければ、例え夫が全額そのままパッと使ってしまっても、私は知る由もなく、怒りも湧かなかっただろうに。
不幸にも、私にただ怒りだけを残していった、夫の賞金。

あれ以来、夫はアホみたいな飲み方はしなくなった。
当たり前じゃ。
大学生じゃあるまいし。

しかし高いレッスン料だった…

ほんとしょーもないエピソードだけが増えていく私の人生。
楽しくて仕方がない。

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