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ホストを好きになった話♯3

離婚の相談をしたら気分転換も兼ねてホストに誘われた。絶対に相容れない人種だと思っていたのに、まさかのホストを好きになったという話。

前回の続き

| ホスト〈なのに〉が仇となる

デートは予想外にもすごく楽しかった。てか、いつも話にオチがついていて喋り上手で驚いた。そこはやはりホストらしいところでもあろう。でも、本人も言っていたが彼は決して売れているほうのホストではない。ホストにしては要領が悪すぎるというか、人として優しすぎる性格なので自分でも「俺、向いてないんだよね」と言っていた。

確かにな。ホストをするには恋愛観も結婚観も仕事観も金銭感覚もフツーすぎるくらいフツーだ。それが逆にホストクラブの中だと新鮮味があるので一部のお客さんからウケているといった様子。私としても、いかにもなホストは毛嫌いしているのでホストの中にもこんなフツーの感覚を持つ子がいるんだと感心した。

多分、彼の性格上、お客さんにも分け隔てなく自分の素を見せているからそう思えたのだと思う。通常、ホストはお客さんに対して夢を見させる立場なので源氏名ではない「本来の自分」のキャラクターはひた隠しにする。どうやって1回会えたこのチャンスから店に呼び込もうかと計算しながらその場を回そうとするだろう。だけど彼にはそういう策略が全く見えなかった

それどころか、一本気のある生き方、考え方に深い共感を覚えた。ホスト〈なのに〉すごく誠実でまっすぐだな。いま現在がどうであれ、過去これまでに生きてきて彼が考えて選んできた人生の道筋はとても気持ちの良いものだった。純粋にその生き方は私にはできる芸当ではないと尊敬した。こういう経緯もあって、ホスト嫌いの私の彼に対する印象は一気により良いものへとなってしまった。

しかも彼の纒う空気感がやたらと色っぽくて惹きつけられる。

|ホストと馴れ合ってから心に決めたこと

私の生きる人生の中で、絶対に存在しうることのなかったホスト。仲の良い友人たちもまたホストという人種が好きな人はほとんどいなかった。ハマるなんてもってのほか。だから、私がホスト行ったという話はもちろんのことホストを好きになりそうという話をしたら開いた口が塞がらない状態の友人たちが続出した。

まず一言めに「だ、大丈夫なの?」「貢いでない?」「離婚するからハジけちゃったの?(笑)」と言われた。そりゃそうだ、私もそう思うもん(笑)私も私の人生でまずホストに出会うことはなかったし、好きになるなんて天地がひっくり返ってもなかったのでどう対処しようものか困っていた。ただ、いくつか彼と接するなかで心に決めていた鉄則があった。

1つ、店には絶対に行かないこと。
 2つ、相手の好意は仕事であると捉えること。

ラインのやり取りが続いて、1ヶ月もすると彼の仕事終わりに電話がかかってくるようになった。私は当時夜中の3時過ぎまで仕事をしていたので、営業終わりにかかってくる彼の電話が取れることもしばしばあった。ほぼ毎日に近い頻度で、2時間以上の長電話を続ける中でひたすら彼は自分の話に加えて、私に対する好意的なアプローチを続けていた。可愛いと思う相手に純粋に好意を向けられることは嬉しかったが、それが彼の仕事だ。

いつも投げかけてくる彼の「会いたい」「可愛い、美人」「嘘じゃないから信じて」という言葉も半分は受け止めつつ半分は信じなかった。本心で思ってくれている部分もあるのだろうけれど、ホストとして働いている以上、仕事として捉えている部分もあることは私にもわかっていた。

彼の言葉を100%鵜呑みにしていいのは、彼がホストという仕事を辞めてもなお私にそのような言葉を投げかけてくる場合にのみと心の中で判断していた。そして、どんなに私が彼を好きになっても店には行かない。行くことがあるとすれば、彼が以前言っていたようにホストを辞めるとなった最終日くらいだろう。

いつになるかも分からないその日まで連絡のやりとりがこのまま続くワケはないし、彼の気が済むまでおままごと的な疑似恋愛に付き合えばいっか。その間は私も好意を与えてもらって楽しく過ごせているのだから。と心の中で線引きをしていた。

|ホスト辞めるってさ

私が、彼に対してあまり多くを求めないスタンスでいるのは彼がホストという仕事をしていたからというのもあるかもしれない。ホストをしている以上、私に対する好意も鵜呑みにしてはいけないと思っていたから。

想像しうる最悪なパターンとして、ある日ふとした瞬間に彼が「コイツどんなに頑張っても店に引っ張れないわー」と彼が諦めて急に連絡がなくなることも考えていた。だから今日、彼の意思で連絡が来たことにも有り難みを感じられるのかもしれない。そんな覚悟と裏腹に、彼からホストを辞めるという連絡がきた。出会って2ヶ月ちょっとくらいの出来事だったので、まさか本当に辞めるとは思わなかった。

とはいえ、もともと今年辞めることは本人の中で決めていたことだったらしい。ホストは上がるのが大変だ。続く人間が少ないからこそ、続けているホストに辞められては困るからなんとかして言いくるめて辞めさせないようにするらしい。彼も言いくるめられそうになったその1人だった。

でも、これまで誠心誠意をもって働いて、努力に努力を重ねて同店の先輩・後輩ホストから信頼を得てきた経緯もあって、辞めるという彼の選択を応援してくれたホストはとても多かったという。簡単ではなかったが、彼の決めていた通りの時期でホストを辞めることができたという。

何の仕事をしているかではなく、どのように向き合って働いているかが大事なんだと彼から学んだ。私もそういう誠実な彼の性格を認めていたので「俺が辞めるまでに機会があったら遊びに来てよ」という言葉に応えることにした。


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