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ホストを好きになった話♯4

離婚の相談をしたら気分転換も兼ねてホストクラブに行こうと誘われた。絶対に相入れない人種だと思っていたのに、まさかのホストを好きになった話。

|思わぬ展開、ホスト初指名。

今考えてみても、やっぱりすごい。びた一文でもホストなんかに払うもんかと頑なだったのに、自らの意志でホストに行くことになろうとは夢にも思わなかった。まぁ、出会った時期と彼が辞めようとしていた時期が重なったから...というのもある。

とはいえ、指名料は1万5000円。

お酒を飲んで...となると1回遊ぶのに3万前後が相場だという。うー...最低価格ですら高い。3万も出すならちょっといいフレンチ行けるじゃないか。すんごいもったいない!!!と、本音が喉まで出かかった。

つかお金出してわざわざ飲みに行って...なんて、そこまでする程のことかな?と自問自答したりもした。だって、この時点ではまだ時間とお金をかけるほど彼に入れ込んでいたわけではなかったから。不思議な話、いいなと好意的に思う反面で彼との関係が急になくなってもそれはそれで仕方ないかと割り切れられたのだ。

それなのに私が時間とお金をかけてお店に会いに行ったのは何故か。

お店に行かないと会えないからでもない。
彼との関係が切れるのがこわいからでもない。
たぶん、彼が先に私に一番大切なギフトを与えてくれたから。


|勇気ある一歩を踏み出せた

彼と出会う前からすでに離婚の話はあったし、概ね離婚への道を決めていたものの最後の最後で気の迷いが出てきて私は、リミットとなる離婚する・しないを決める6月まで自分の選択に自信を持って決断できずにいた。

「本当に離婚をして後悔しないかな」
「いざ夫が離れたら寂しくなって後悔するかな」
「この先、一生一人で生きていく覚悟はできている?」

自分が選ぼうとしている未知の人生に何の不安もなかったわけじゃない。むしろ誰にも言えないでずっと悩んでいたし、迷っていた。誰かに相談したところで誰かが答えをくれるわけじゃない。ずっと自分と向き合っていたけれど、1日1日、決断が揺れ動いていてすごく苦しかった。ほんの少しでも後悔するかもしれないと思うと一歩を踏み出せなかった。

そんな私にとって彼の存在は、先の人生を明るく照らしてくれるようなものだった。たとえ彼との関係が短い期間のものでも、彼が私にくれる好意的な言葉が嘘でも。それでも、こんな年下の可愛い男の子が私に対して懐いてくれる。

それだけで自分の女としての自信を取り戻せた。
この先、誰かと一生添い遂げることがなかったとしても。

離婚間際に出会った可愛い男の子が
「すももさんはキレイですね」と言ってくれた。

その思い出ひとつで、何だかこの先も頑張れるような気がした。
今思えばきっかけは何でも良かったのかもしれない。

でも。それでも。
彼が存在してくれたことで、優しい言葉をかけてくれたことで私は迷っていた気持ちが嘘のように晴れて自信を持って「離婚しよう」と思えた。

これが彼が私にくれた大きなギフトだ。

だから彼との関係がこれからどうなっていこうとも、どうもならなくても。既に彼には大きな恩ができていたのだ。私が彼のために時間とお金をかけて店に行こうと思ったのはこの恩を返したいという気持ちが一番にあったから。

|営業終了後...

私が来店したのは、彼の最終出勤日の1日前。もしかすると、私が彼に会うのはこの日が最後かもしれないと覚悟をした。私に大きな決断をさせてくれてありがとうという気持ちと、一緒にいられるこの瞬間を大事にしようとお店に行った日は予算内で思う存分楽しんだ。

次の日も相変わらずラインがくる。
彼は「最終日、頑張ってくるね」と私にラインを入れて最終出勤日を迎えた。私はといえば、この日で彼の私との関係が切れるか切れないかの瀬戸際であることを理解し、身構えていた。

いつもと同じように淡々と仕事をこなしながらも刻一刻と迫る営業終了の時間を気にしている自分が何だか恥ずかしい。関係が切れることを覚悟していても、いざその瞬間が来るとなればやはり多少の不安や恐さもある。もし、これで今日連絡がこなかったらどうしよう。もし、私からラインをしても返事がこなかったらどうしよう、と。

しかし彼がこれまで私にかけてくれた言葉が本当か嘘かは、彼がホストじゃなくなってからハッキリわかることだ。私は、まるで告白の返事を待つような心持ちでいた。

営業が終了した1時すぎ。彼から電話がかかってきた。
電話口は彼が泥酔しながらタクシーの運転手さんに道案内する様子が伺えた。

「終わったー、うぅ...酔ったぁ」

こんなに酔っ払ってる声は聞いたことがないくらいの泥酔ぶりで驚いた。

「もう出勤した瞬間から飲まされて飲まされて」
「もうやばい。でも終わってすぐ電話しようと思って」

「俺、もうホストじゃないから」
「これから言う言葉はちゃんと信じて」

「今まで出会った中で一番好きだよ」
「ずっと一緒にいて」

残念ながら、本人は泥酔し過ぎて電話で話したことはキレイさっぱり全部忘れてしまっていたが、この時ほど嬉しい告白はなかった。多分人生でいちばん嬉しい告白だったと思う。

|人生でもっとも嬉しい告白

自分で言うのもなんだが、初めて付き合った人から今日に至るまで数々の人にいろんな告白をされてきた。それに対し、いつも“告白されて当然”という気持ちがあった。

それもそのはず。私は恋愛において常に自分優位な恋しかしてこなかったから。自分よりも相手のほうが自分を好きでいることが前提の恋愛しか選択していなかったのだ。なので、告白もその時々で嬉しい気持ちはあったが、自分が振られるという不安やリスクは皆無であったので安心して気持ちを伝えていたようにも思う。

が、今回ばかりは違う。

彼から好意は示されるものの、それが真実であるかどうかは、あの電話を受けるまでは分からなかった。もし、彼に“仕事”という大義名分がなくなってもなお、私に好意を示してくれるのか。その自信はハッキリ言ってあまりなかった。

電話が来ないかもしれない。
それどころか関係がなくなるかもしれない。

いつも好意的な言葉をもらう反面でそういう不安が隣り合わせにあったのだ。

だからこそ泥酔しているにも関わらず、そんな不安を真っ先にかき消そうとしてくれた彼の私に対する誠実さに改めて感動したし、この子を好きで良かったと心底思えた瞬間だった。

まさか30歳を過ぎて、人と気持ちを寄り添い合うことにこんなにドキドキするとは思わなかったなぁ。しかし、こうして振り返って言葉にするとなかなかに気持ち悪い女だな、自分。

|これはもしかしたら、初恋かもしれない


彼に対しては今までしてきた恋とは違う何かを感じている。

というのも、先にも伝えたように今までは相手からアプローチをされる受け身な恋しかしてこなかったから。

彼の場合も、はじめこそ彼からのアプローチだった。でも次第に彼よりも私のほうが彼を好きになっている気持ちが日に日に強くなっている。

それもあってか私たちが特別な関係になってからもう半年近くが経つのだが、いまだに彼に対して初恋のようなときめきを覚える。この半年の中で、別れの危機も何度か訪れたが、その度に彼にすがるような気持ちがあったし、今でも私が意見や主張を譲っている。

自分主体で自分の思い通りの恋愛をしてきた私にとってこんな恋は初めてだった。我を通すような生き方を良しとしてきた私がパートナーに意見を譲るなんてこの33年間、ただの一度もなかった。

私を知る周りの友人も、私もこの事実に驚きを隠せない。
そういう意味で今回の恋は私にとって他と比べることのできない初恋だ。

離婚という一大決心を決めたことで、間違いなく私は彼との出会いを引き寄せたんだと思う。離婚は自分主体で我を通すような恋愛じゃきっとうまくいかない。だから、いかに我を抑えてでも相手と寄り添えるか。私は離婚をするなら今度こそ、それくらい愛せる相手に出会いたいと思った。

そうしたらその相手がまさかのホストだったなんて本当に人生は面白い。
実際にこの関係がどこまで続くかはまだわからないが、時間をかけて一緒にいることで本当の恋にしていけたらと思う。

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