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『 シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成』(安宅和人)を読んで

先日の「東京ポッド許可局」は熱海礼讃の回でした。プチ鹿島さんがひと言。

「新幹線で40分であっという間だし、地元の若い人が街おこししていま盛り上がってるんだよ!」

ラジオを聴きながら、ふと『熱海の奇跡』を思い出しました。著者の市来さんは、IBMを辞めて地元の熱海の盛り上げへ。ひとりの想いが、街に新しい息吹を吹き込むんだなと。それが確実に広がっている印象を受けました。

さて、本書は著者のシン・ニホン実現に向けた提案・提言であり、データ×AIをはじめ、おもに未来について書かれています。

終盤、著者のビジョン型の活動が、これまでにない新しい街づくり(運動)に感じておもしろかったので、絞って紹介します。

風の谷という希望

今、データ×AIや、それ以外にも数多くのこれまででは不可能だったことを可能にする技術が一気に花開いているが、これらはそもそも人間を解放するためにあるのではないか。テクノロジーの力を使い倒すことにより、僕らはもっと自然と共に生きる未来を創ることはできないのか?そうだ!「風の谷」だ!

「風の谷」が大切にする精神

・自然と共に豊かに人間らしい生活を営む価値観。ただし、「人間らしさ」は人それぞれである。
・多様性を尊び、教条的でないこと。ただし、まとまらなければならいことがある。
・コミュニティとしての魅力があるのと。ただし、人と交流する人も、一人で過ごしたい人も共存している。
・既存の価値観を問い直すこと。ただし、現代社会に背を向けたヒッピー文化ではない。ロハスを広げたいわけでもない。
・既得権益や過去の風習が蔓延らないこと。ただし、積み重ねた過去や歴史の存在を尊ぶ。

都市集中型となっている社会に対してのアンチテーゼ。本書ではスマートシティ化とも一線を画すると言います。あれは効率化に重きが置かれている。

個人として「包摂」と「フラットさ」を両立させる何かが必要と思ってます。単純な隠居でもなく、アメリカの理想郷である人口が少ない田舎にどでかい家を建てるのともちがう何か。白洲次郎の武相荘もいいけれど、もっと合っている生き方があるはず。その意味でヒントをもらいました。

著者をはじめとした方たちがビジョンを持ち、社会に対してインパクトを与えていくのは大賛成だなあ。

以下はメモです。

マネジメントの本質

国であっても企業同様のマネジメント(≒経営)が必要なことは変わらない。マネジメントはドラッカーの生み出した概念で、「組織に成果をあげさせるための道具、機能、機関」のことを言う。ではマネジメントとは何をやっているのかといえば、結局のところ、

(0)あるべき姿を見極め、設定する

(1)いい仕事をする(顧客を生み出す、価値を提供する、低廉に回す、リスクを回避する他)

(2)いい人を採って、いい人を育て、維持する

(3)以上の実現のためにリソースを適切に配分し運用する

マネジメント対象として国も企業も同じである。シンプルに考えればいいんだ。著者はこのフレームで日本をアップデートする、つまりシン・ニホン実現をしようと提言します。

で、一般の社会人にも応用は可能のはず。組織に所属する者からすれば役割は(1)、以上となる。でも意識としては、(0)と(3)にもアンテナは張っておいた方が良さそうです。

価値創造のパターン

価値創造について、本が変わりますが関連する箇所がありますので『自己紹介2.0』を紹介します。仕事の価値創造の3種類です。

「仕事」とは「それをやる前に比べ、なんらかの価値を創造した行為」と考えることができます。そしてその価値創造には次の3種類がありそうです。

1)「A→A」増減させること
2)「A→B」変形・変質させること3)「0→1」創出すること

で、ここから本書に戻ります。

価値創造のパターン要素は同じ。企業の事例も交えて言及されています。

①N倍化(大量生産):GM トヨタ
②刷新(A→B):FedEx 大塚製薬
③創造(0→1):BTTFのドク

N倍化はわかりやすい。刷新の例でいえば、医療用輸液をベースにポカリスエットを生み出した大塚製薬。創造はジョブズのiPhoneがわかりやすいが、フィクションでいえば、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』ドクのタイムマシン。

ポイントは影響の強さの変化。これまでは①→②→③の順番だったが、これからは③→②→①となる。「刷新」と「創造」が重要。

領域は広いので興味のあるところから読むだけでもおもしろいと思います。

というわけで以上です!


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