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『ひとりの妄想で未来は変わる』(佐宗邦威)を読んで

佐宗邦威著『ひとりの妄想で未来は変わる VISION DRIVEN INNOVATION』を読みました。

“VISION DRIVEN INNOVATION”についての現場での実践知を、「36の智慧」としてまとめたのが本書。前作『直感と論理をつなぐ思考法』は会社のビジョンづくりの文脈で読みましたが、新規事業とも密接に関わることがあらためて理解しました。

Kindleでバーっと読みましたが、企業内の新規事業に関してここまで実践的な本はなかなかないなあと。素晴らしい!

響いたポイントだけクリップします。

ビジョン・ミッション・バリュー

新しい取り組みの言いだしっぺ=創業者は、企業が目指す理想の状態=ビジョン、現状とのギャップ を埋めるベクトル=ミッションを事業を通じて体現していく。そのなかで、チームにおいて無意識に信じる価値観=バリューが生まれ、日常の業務における行動指針にしているうちに、独自の文化が育まれる。これらは、創業時につくられるDNAのようなものだ。

会社によってさまざまなラベルで、ビジョン的な言葉を定義し、世に発信をしています。正解はない。そのなかで、個人としてはしっくりきている考え方です。

とくにバリューの定義。どうしてもバリューって判断基準といったように解釈してしまうけれど、「チームが無意識に信じる価値観」なんですね。結果としてそれが判断基準にもなり得る。そう考えよう。

すべての会社が世界を変えなくてもいい

パーパス型が理想の変化を起こすという未来志向の行動に主眼をおくのに対し、「我々は〇〇であり 続ける」というミッションは、自分たちそのものの状態(アイデンティティ)に主眼をおく。

日本でいうところの「〇〇を欲す」という綱領はパーパス型であり、「〇〇べし」で語られる社是はアイデ ンティティ型のミッションだ。

言い換えると、社会変革そのものを志すリベラル型の事業にはパーパ ス型が、社会における価値を保全し、維持していく保守型の事業にはアイデンティティ型が適しているといえる。

「変わらないために変わり続けています」と郷ひろみさんがかつてテレビでおっしゃっていたことを思い出しました。ビジョンを考えると、ついGAFA的な世界をどうしたいかというパーパス型が正と思いがち。

日本の山本山のような老舗企業は、be=その状態であり続けるってこともある。たぶん「保守的」にこだわる必要はなくて、変わらないために挑戦し続けるアイデンティティ型ってあると思います。いいヒント。

新規事業をどう評価する?

既存事業では売上、利益、粗利益、資本利益率など〝稼ぐ力〟をKPIで測るのが一般的だ。しかし 新規の取り組みは、大きなスケールのものほど時間をかけなければ黒字化が難しく、それと同じ指標 ではすぐにダメだと判断されやすい。

イノベーション文化をつくる過程では、結果指標としての売 上・利益だけではなく、新規事業の失敗の数、成長率、ユーザー数など先行指標としてのKPIを合意して設定することが必要である。仮に結果指標を使うなら、初年度は売上・利益ではなく、NPV (Net Present Value:正味現在価値)で見ていくといった、既存のものとは違う指標を取り入れるといい。

企業内で新規事業を興しましょう。で、実現したとして、どのように評価をしていくか。もちろん卵を産めばOKなわけはありません。ただ、売上・利益を早々に求めて「育つ」のか。ここではマクロ的にみて、新規事業の失敗の数まで書いてある。NPVで見ていくっていうのも目から鱗。

いやー、勉強になります。というわけで以上です!

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