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『近代から現代までのデザイン史入門―1750‐2000年』を読んで

本書は、前産業的な時代から現代までの250年間にわたって、デザイン現象を文化・社会史的な見地から幅広く読み解く、解説書。ざっとデザイン史を追いたい人にはうってつけではないでしょうか。

1752年、ベンジャミン・フランクリンが避雷針を発明。産業革命以降、プロダクト・デザインが必要となった時代を起点に、その歴史を追ってゆきます。

原著のトーマス・ハウフェという方はどちらの人か存じません。印象として「椅子」と「ドイツ」多めだなあと感じましたが、おそらくバランスは取れているのかと。ちなみに日本では唯一、ソニーのウォークマンが載ります。2000年以降も含めるなら、ジョブズはぜったい入るのだろうなあ。

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アール・ヌーヴォー

小さな地方都市が大きな意味をもったフランスのアール・ヌーヴォー。ウィリアム・モリスが主導したイギリスのアーツ・アンド・クラフトの流れを汲んだ国際的な運動です。

産業革命による大量生産的な主義からの反動としての自然回帰。バウハウスなどへ影響を与えていますが、どうやら一様に素晴らしい!と評価されているわけではないようです。ヘェ〜。

国際的なアール・ヌーヴォーは、今日では実際失敗したものとみなさざるを得ない改革運動だあった。歴史主義と粗悪な産業的大量生産に対するその正当な反乱は、多くの点で後退に行き着き、そのうえ近代的な産業デザインの発展を遅れさせした。
アール・ヌーヴォーの芸術家はしかも古いアカデミーへの突撃のラッパを吹き鳴らし、歴史模様を植物模様に取り替えたが、しかし彼らの多くはこれらの新様式を、以前に歴史主義の代表者がそうしたように、とことんまで利用したその結果、ひとつの装飾術が他のものと取り替えられたにすぎなかったのである。

芸術と産業をどう考えるか問題。芸術にふりきったのがスペインのガウディであり、イタリアのブガッティ。彼らは特殊例とみなされ、目立ちました。センセーショナルな様式ではありましたが、アール・ヌーヴォーは1910年頃には消滅。時代は第一次世界大戦に突入します。

あとは細かいところでおもしろかったのは、

*ペーター・ベーレンスがAEG社の芸術顧問に就任。デザインの統一を図り、コーポレート・アイデンティティ(CI)を確立。デザイン切り口のブランディングの原点を感じました。

*有名な建築家ミース・ファン・デル・ローエはバウハウスを指揮。1927年の工作連盟展では彼の下にあのコルビュジエがいた。

*ちなみにコルビュジエは1925年のアール・デコ展でセンセーションと憤激を起こしたそう。出展していたのが驚きだし、憤激というのは、フランスがなんだかんだ伝統を捨てきれない保守的な空気に対しての批判という説もあるとか。

デザインがマーケティング的活用に傾き始めたのは80年代の「デザイン・ブーム」からとのこと。というわけで以上です!


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