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『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 』を読んで

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 』を読みました。

イギリスで生活する著者、ブレイディみかこ氏は、配偶者と12歳の息子の三人家族。本書で初めて著者を知りました。

イギリス。それは観光の印象しかなくどこか遠い存在のよう。けれど、「生活」に焦点を当ててカメラが寄っていくと、階級社会で移民の受け入れてきたその国に根差している、確かな人々の営みがあります。

元・底辺中学校に通うことになった息子。彼の日常周辺を中心に描かれていますが、そこから垣間見える差別・ジェンダー・貧富の差。これらはイギリス特有の問題ではなく、ひとりひとりの話なのだと思わさせられます。

それは、未知の世界なのに誰もが共感できるから。そんなふうに感じました。

で、テーマの普遍性はあれど、その共感は何からきているかというと、息子が持つ高い感受性です。彼は達観している印象も持ちますが、もちろんら悩みもあるわけです。著者は息子に対してときには感心しながら、その心の機微をすくいとります。

その息子さんの気づきにハッとした箇所がありまして、ここから一つ紹介します。

人間は、罰するのが好きなんだ

息子にはハンガリー出身の友人ダニエルがいます。彼とは演劇『アラジン』をきっかけに仲良くなりました。彼は演技が上手く、俳優のようなら顔立ちでスター性がある。ただ、差別的な発言をする傾向があり、ケンカしながらも息子は彼のことを気にかけます。

しかし学校から問題視され始めると、周りの接し方がいよいよ変わり、いじめへと発展します。ダニエルが火に油を注ぐような行動を取ることもあるのか、いじめは終息する気配はありません。

「・・・・・・・人間って、よってたかって人をいじめるのが好きだからね」

わたしが言うと、息子はスパゲティを食べる手を休めて、まっすぐにわたしの顔を見た。そしてあまり見たことのない神妙な顔つきになって言った。

「僕は、人間は人をいじめるのが好きなんじゃないと思う。・・・・・・罰するのが好きなんだ」

何でも「いじめ」というラベリングをしては本質を見失うこともあるかもしれない。日本のネットのある状況に対して「正義を振りかざす」なんて表現もありますが、そうした行動の裏側にはまさに「罰したい欲求」があるとも考えられる。自戒をこめてクリップしました。「罰し欲」たまってはいないか?

イギリスの社会問題を知るというより、自分はどうなのかと考えるとよりおもしろい本だと感じました。というわけで以上です!

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