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人の往来を創造し、多様性が受け入れられる地域づくりを | LAC三好コミュニティマネージャー・西崎健人さんインタビュー

2021年11月、徳島県三好市にLivingAnywhere Commons(以下、LAC)の新拠点が誕生しました。三好市は古くから宿場町として栄え、さまざまな人が往来する町です。四国の中央に位置し、「四国のへそ」と呼ばれます。自然が豊かで、ラフティングなどの川のアクティビティも盛んです。

三好拠点はJR阿波池田駅から徒歩約10分の立地。日本家屋の宿泊施設が2つと、納屋を改修して作られたワークスペースがあります。周辺には飲食店や銭湯などがあり、徒歩圏内で地域の魅力を楽しむことができます。

LAC三好のコミュニティマネージャーを務めるのは、西崎健人さんです。「新しい "オウライ"(往来)インフラの創造」をコンセプトに、ワーキング&宿泊施設「heso camp」(LAC三好)や地元食材を使った飲食店「heso salon」など、さまざまな事業を行なっています。

今回の取材では、西崎さんのご経歴や拠点の魅力、今後の展望などについてお話しを伺いました。

西崎健人さん プロフィール
オウライ株式会社代表取締役。ワーキング&宿泊施設「heso camp」(LAC三好)や地元食材を使った飲食店「heso salon」、JR四国と連携した宿泊施設「4S STAY」などを運営。その他、自治体や大学と連携して起業家育成を行ったり、旅先でおもしろい人に出会うことができるプラットホーム「So-Gu」の運営を行うなど、「新しい "オウライ"(往来)インフラの創造」をコンセプトにさまざまな事業を展開している。


考古学をきっかけに、まちづくりに興味をもつ

--地方ビジネスに興味をもったきっかけを教えてください。

大学で考古学を学んだことがきっかけです。学生時代は、夢だった考古学者になるためにエジプト考古学を学んでいました。古代エジプトの都市の変遷を研究テーマにしていて、都市自体に興味がありましたね。

しかし、古い都市の変遷を考えることよりも、これからのまちづくりに関わることのほうが面白そうだな、と考えるようになったのです。

--古い都市の変遷を研究し、これからのまちづくりに興味を持たれたということですね!

そうですね。それで地域に関わる仕事をしようと考えたのですが、当時の私は「まちづくりは人を知らないといけない」と考えて、人材系の企業に就職しました。今思うと、人を知ることと人材紹介って全然関係ないのですが(笑)。

その後、もっと地域と関わる仕事がしたいと考え、ビジネスコンサルティング会社に転職しました。

--転職するにあたり、何かきっかけがあったのでしょうか?

きっかけは東日本大震災です。東京の高層ビルで被災し、死の恐怖を感じましたね。それを機に、人生いつどうなるかわからないなら自分がやりたい仕事をしようと考えたのです。

そこで、新しく農業事業部を立ち上げるというビジネスコンサルティング会社に興味を持ち、転職しました。

--ビジネスコンサルタント会社ではどのような仕事をしていたのですか?

農作物の生産や6次産業化(※)です。さまざまな品種の野菜を作り、生産した野菜で作ったカレーをキッチンカーで販売していました。また、自分たちが育てた野菜だけでなく、有機栽培を行っている農家さんの野菜も販売していましたね。

事業の作り方や考え方など、ビジネスの基礎をみっちりと教えていただきました。そのときの経験が、今の事業にも活かされているのだと思います。そして2014年に起業を決意し、退職しました。

(※)農林漁業者が、農林水産物の生産だけでなく製造・加工や販売などを行うことにより、生産物の価値をさらに高め、所得向上や雇用の確保を目指す取り組み。

「だめだったら東京へ帰ろう」。軽い気持ちで三好市へ

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--三好市を知ったきっかけを教えてください。

2014年、その当時関わりがあった団体が三好市の廃校活用に携わっていることを聞き、そこで初めて三好市を知りました。率直におもしろい地域があるのだなと思いましたね。東京での起業も考えていましたが、自分から地域に出向いて事業を組み立ててみたいと考えました。

--三好市に移住するにあたり、どのような準備を行いましたか?

特にないですね。キッチンカーに布団だけ積み込んで三好市を訪れ、そのまま現在まで住み続けています。「だめだったら東京へ帰ろう」と、軽い気持ちでしたよ。地方移住や田舎暮らしに憧れていたわけでもないですしね。ただ、地方で事業を起こすことが面白そう、という1点です。そのため、今でも移住したというよりは長期滞在しているというイメージですね。

--思い切った決断ですね!しかし、長く三好市に住んでいるということは居心地の良さや魅力があったのではないですか?

とても暮らしやすい地域だと思いますよ。なぜなら、空間的な余裕があって落ち着くからです。働いている時間は東京にいた頃と変わりませんが、精神的に余裕があるのでパフォーマンスも上がっていると思います。周りの人々に恵まれたこともあり、仕事が楽しいです。

--三好市に来た当初はどのような仕事をしていましたか?

三好市に移ったあとは1~2ヶ月廃校活用の仕事を手伝って、その後はキッチンカーでカレー売っていました。そのため、いまだに「カレーのにいちゃん」と言われます。

--地方でビジネスをはじめてみていかがでしたか?

考え方が浅すぎましたね(笑)。地方は顧客の母数が少なく、地元向けの商いだけだと厳しかったです。そのため、外からの顧客に目を向けようと考えました。

一方で、競合が少なく事業を立ち上げやすい点はよかったです。アイデアを実現しやすい環境で、周りのサポートにも恵まれました。

コンセプトは「新しい "オウライ"(往来)インフラの創造」

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--heso camp(LAC三好)をオープンした経緯を教えてください。

三好で何ができるか考えていたときに、地元の方から徳島県や三好市がサテライトオフィスを積極的に誘致していることを聞いたんです。

ただ、企業がいきなりサテライトオフィスを導入するのはハードルが高いですよね。なので、まずはお試し体験ができるワークスペースや宿泊施設を作ろうと考えました。

こうして生まれたのがheso campです。

--サテライトオフィス導入や移住の準備施設としての役割を担っていたのですね。

そうですね。お試しで暮らしてみることで、地方で業務がまわるか、地域との相性は良いか、地方での暮らしはどうか、ということを確かめてみて欲しいと考えていました。

よく、スポーツチームの合宿のことを「camp」と言いますよね。heso campの「camp」はそれをイメージしています。

--「新しい "オウライ"(往来)インフラの創造」をコンセプトとされていますが、地域づくりと往来が結びついたのはなぜですか?

地域(=社会)には多様性があるほうが良いという想いが根本にあったからです。自分が知らない文化や会ったことのない人など、新しいものに触れると視野が広がりますよね。その積み重ねが多様性のある地域なのではないかと思っています。そのため、新しい往来の創造に行き着いたのです。

往来を創造して、多様性が受け入れられる社会を実現していきたいですね。

--往来を生みだす観点でいうとheso campはどのような役割を担っているのでしょうか?

どちらかといえば、heso campは往来ができたときの受け皿ですね。それに対し、往来のきっかけをつくるのがSo-GuというWebサービスです。So-Guは旅を通して人と人をむすぶプラットホームで、地域にいるおもしろい人に出会えます。

--事業全体で新しい往来を生み出しているのですね。

そうですね。So-Guで外から人を呼び込み、heso campやheso salonで訪れた人を受け入れるという形です。また、2021年11月にLAC拠点としてオープンしたことで、これからさらに新しい往来が生まれることを願っています。LACは地域とのコミュニケーションやコミュニティを重要視している点が共感できますね。

--今まで、どのようなお客さまが訪れましたか?

訪問の目的としては、ビジネスと観光が半々くらいですね。ちなみに、新型コロナウイルスが流行する前は8割が外国からのお客さまでした。これから外国人のお客さまが戻ってきたら、より多様性のあるコミュニティになると思いますよ。

魅力は地域との交流が楽しめること

--LAC三好の概要を教えてください。

heso campとheso houseという2つの宿泊施設があり、それに付随してワークスペースNayaがあります。広い中庭がるので、暖かい時期はバーベキューもできますよ。私もスタッフや地域の人とバーベキューを楽しみます。heso campには2つの宿泊施設共有のスペースがあるので、ゲスト同士の交流も楽しめます。

--2つの宿泊施設の違いは何ですか?

heso campは築70年ほどの古民家で、昔ながらの和風なイメージを大切にしています。外国からのお客さまが多かったので、敷布団や畳にして日本らしさを楽しんでもらっていました。どちらかというと観光客向けの短期滞在者向けですね。

heso houseはビジネス目的や中長期滞在者向けなので、ベッドやデスクを設置しています。落ち着いて過ごしたい方にはheso houseがおすすめですね。

画像3▲中長期滞在者向けで落ち着いた雰囲気がある「heso house」

--heso campの魅力は何ですか?

地域のお店が近く、地元の人たちと交流できることが魅力ですね。heso campがある池田町は、駅を中心にコンパクトにまとまっている町です。徒歩や自転車でいろいろなスポットが楽しめます。例えば、居酒屋さんですね。徒歩圏内にたくさんあります。

あとは地鶏の焼き鳥屋さん、ニュージーランドコーヒーのコーヒースタンド、昔ながらの銭湯などもありますね。また、酒造も2箇所あって、事前に連絡すれば見学もさせてくれますよ。少し足を伸ばせば、ラフティングなどの川のアクティビティも楽しめます。

私が運営するheso salonにもぜひ遊びに来てください!LAC会員専用のまかないディナーもご用意しております。

--LAC会員専用のまかないディナー、気になります!

1食500円の日替わりディナーです。19時までに来店していただければ提供可能です。ちなみにheso salonは昼がカフェ、夜が居酒屋になっています。地元のジビエを中心に食事を提供していますので、ぜひお楽しみください。

ゲストハウスではゲスト同士の交流は可能ですが、地域の人や私と話したいという場合には、heso salonに来てもらうと良いと思います。heso salonでは地域の人との交流も楽しめますし、他のお店も紹介することができますしね。

画像4▲川のアクティビティも盛ん

目指すは四国のハブ。地域とのつながりを生む拠点に

--今後の展望についてお聞かせください。

まず、同じ四国にあるLAC三豊・LAC美馬と協力し、3つの拠点でうまく会員さんの流れを作っていきたいと考えています。三好は四国の中央にあるので、ハブのような拠点にしていきたいですね。

2つ目は会員向けに仕事の紹介を行うことです。仕事といっても、イベントスタッフやまき割りなど軽微なもので良いのです。仕事をすることで地域とのつながりができ、また来ようかなと思いますよね。できれば三豊や美馬の求人も紹介していきたいです。

--最後に、LAC会員のみなさんにメッセージをお願いします!

どのような方でも大歓迎ですが、積極的に地域に関わっていきたい方や地域と関わることが好きな方に楽しんでいただける拠点だと思います。LAC三好の醍醐味は、徒歩で地域の魅力を楽しめることです。ぜひ、さまざまな人たちとの交流を楽しんでください。

古くから宿場町として栄えた三好市は、外から人が訪れるということに対して昔から比較的オープンだったのではないでしょうか。「新しい "オウライ"(往来)インフラの創造」を実現するためには、ぴったりの地域なのかもしれません。

地域と関わるのが好き、さまざまな人に出会うことが好きという方は、ぜひLAC三好を訪れてみてください。


《ライター:岡野友美

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