英語語源辞典通読ノート A (angle-animal)

研究社『英語語源辞典』を通読しながら見つけた語源の面白いネタをメモしています。今回はp46からp47まで "an-"から始まる単語です。

angle

『英語語源辞典』では「角度」の語義を "angle¹"、古い「釣針」の語義を"angle²"として立項されているが、語源的つながりの広がりがなかなか強い。
"angle²"(釣針)はゲルマン祖語 "*anʒulaz" から古英語 "angul" に発達しており、印欧語根 "*ank-"(曲げる)に由来する。つまり、釣針の曲がった形状が語源になっている。一方 "angle¹"(角度)は同じ印欧語根からギリシャ語、ラテン語、古フランス語を経由して中英語に輸入されている。同じ語源だが時間差で合流した兄弟のような同綴異義語だ。
また、大文字から書く "Angle" は「アングル族」を意味する。これはアングル族がいた地方が釣針のような形をしていたことに由来するらしい。ということは当然 "England" や "English" の語源も "angle" と同じ「釣針」ということになる。
釣針から連想できる語として、"anchor"(錨)も印欧語根 "*ank-"に由来する。また、綴りや音が似ている "ancle"/"ankle"(足首)も同じく印欧語根 "*ank-"に由来する。
「釣針」と「角度」と「英国」と「足首」の語源が同じ、というのは意外性があっておもしろい。

anigh

"near"と同義語らしいが、知らない単語だった。だが、語源の解説にさらっと書かれた一文が「そんなことあるの」と二度見してしまった。

♢ ME anigh との直接の関連はない。

そんなことある?

animal

現代英語では「動物」だが、この意味で使われるようになったのは1600年前後かららしい。それまでは "beast" がその意味で使われていたようだ。
語源は古フランス語 "animal" または ラテン語 "animāle"(生き物)からの借用で、ラテン語 "animālis"(命のある、活気のある)から派生している。さらにこれは "anima"(空気、呼吸)に由来し、印欧語根 "*anǝ-"(息をする)にたどり着く。この意味変化について、『英語語源辞典』では日本語の「イキ」と「イキモノ」の対応と関連付けている。これはかなりおもしろい。この辞典に書かれているのは英語の語源だけじゃない。
しかも "animal" や "beast"に取って代わられた「動物」の本来語 "deer" も、別の印欧語根 "*dʰwes-"(息をする)に由来しており、同様の対応がある。もっといくと、"beast" の語源であるラテン語 "bestia" も、不詳ではあるが一説として印欧語根 "*dʰwes-" に由来すると言われるらしい。すごい一貫性だ。
ちなみに、印欧語根 "*anǝ-" に由来する他のものとして "anemo-" 接頭辞がある。これは原義のとおり「風」の意味を加えるもので、 "anemometer"(風速計)などに見られる。


今回はここまで。いそがしかったので見開き2ページだけだったが、濃い2ページだった。