純粋に美しいと思える【ウォーターハウス】
Podcastアフタートーク
第118回イギリス・ラファエル前派第三世代、ウォーターハウスの収録が終わりました。(といっても、もう119回も終わってますが笑)
今回も凄く面白かったです。なにせイギリス美術というものが、西洋美術史全体で見たときに浮上してくる時期ってそんなにない。この黄金の時代(産業革命以降、ヴィクトリア女王の時代)ですら、産業技術はのちにドイツにすぐ追いつかれてしまうし、文化的にも、フランスの系譜や、その後爆発的に伸びたアメリカ美術と比べたら、目おとりしてしまうかもしれない。
追い抜くわけではないラファエル前派
ウォーターハウスは、その当時のイギリスの若手アーティストが掲げた派閥「ラファエル前派」を継承するような形で自らに取り入れるわけですが、そのラファエル前派の思想自体も、イタリアルネサンス以前の美術を尊重してのことだったので、そもそも芸術史上、追い抜こうという精神ではないわけです。
非ドラマチックな人生
そうなると後世にのこるには良い意味でのスキャンダラスさがあると記録に残るのですが(ドラマチックな人生といったほうがいいでしょうか)
ウォーターハウスについてはそのようなドラマチックさは無いわけです。
画家である父の元でキャリアをスタートさせて、腕をあげるための道を順当に進み、既得権益に認められ、良い年ごろに同業者と結婚し、慎ましやかに生活したという。イギリスからするとどれまでのアヴァンギャルドな派閥であったラファエル前派を受け入れる表明になった、一つの分岐点に存在した画家ではあるものの、とはいえウォーターハウスの声掛けによってそれが成されたとは思いにくい。
ということは裏を返せば、ウォーターハウスは美術史的な側面を度外視でき、純粋に彼の作品を楽しむことができると捉えることもできるでしょう。
フェルメールとの対比
そう考えると、フェルメールと似ているところもある。
オランダ17世紀の画家ヨハネス・フェルメールは、当時カメラの技術進化に伴い、画法の進化や「バロック期」という大きなバックボーンがあったという点では後世でも注目される人物ではあります。
聖ルカ組合にて、史上最年少で理事になったフェルメール。
そして経済的にもオランダ最盛期であり、美術史・音楽史としても「バロック」というとても輝かしい時代。
そこには彼自身のマンパワーで大きなブレイクを勝ち取ったというインパクトさはさほど感じられない。(もちろんフェルメールが提示している技法的革命もあったものの)
だからこそフェルメールの作品は、純粋に美しいと感じられる、いや、感じてもよいという安心感があるのではないでしょうか。
彼らが後世まで名を残したのは、マンパワー的ブレイクや、ハイライトなスキャンダラスさではなく、純粋に、美しい。そう感じた人々が残してくれたものではないか。
今週も沢山メールをいただきました
さて、一週あいてしまったのがよかったのか悪かったのか。ウォーターハウスに対してのメールをいただきましたのでご紹介します。
いつもありがとうございます^^
男性目線だと、両親と同じ仕事に就くのは抵抗があるのでしょうか。
と言ってる私も、両親(父と母は同じ職業)とやってる仕事は全然違うのですが笑
ウォーターハウスはどれを見ても美しいと純粋に感じられるから素敵ですね。受胎告知も、いわゆる「受胎告知」ではない幅の良さが、made in UKだからなのか、彼の魅力なのか。
ビアズリーは、原田マハさんの回で少し触れましたが、彼もまた、魅力的な人物です。その「魅力」は今回取り上げたウォーターハウスとは全く違う方面だという所も、また美術史の面白いところですね。
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