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純粋に美しいと思える【ウォーターハウス】

Podcastアフタートーク
第118回イギリス・ラファエル前派第三世代、ウォーターハウスの収録が終わりました。(といっても、もう119回も終わってますが笑)

今回も凄く面白かったです。なにせイギリス美術というものが、西洋美術史全体で見たときに浮上してくる時期ってそんなにない。この黄金の時代(産業革命以降、ヴィクトリア女王の時代)ですら、産業技術はのちにドイツにすぐ追いつかれてしまうし、文化的にも、フランスの系譜や、その後爆発的に伸びたアメリカ美術と比べたら、目おとりしてしまうかもしれない。

マガジン@2x

追い抜くわけではないラファエル前派

ウォーターハウスは、その当時のイギリスの若手アーティストが掲げた派閥「ラファエル前派」を継承するような形で自らに取り入れるわけですが、そのラファエル前派の思想自体も、イタリアルネサンス以前の美術を尊重してのことだったので、そもそも芸術史上、追い抜こうという精神ではないわけです。

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シャーロット姫(1888年) 油彩・カンヴァス 153×200cm

非ドラマチックな人生

そうなると後世にのこるには良い意味でのスキャンダラスさがあると記録に残るのですが(ドラマチックな人生といったほうがいいでしょうか)
ウォーターハウスについてはそのようなドラマチックさは無いわけです。

画家である父の元でキャリアをスタートさせて、腕をあげるための道を順当に進み、既得権益に認められ、良い年ごろに同業者と結婚し、慎ましやかに生活したという。イギリスからするとどれまでのアヴァンギャルドな派閥であったラファエル前派を受け入れる表明になった、一つの分岐点に存在した画家ではあるものの、とはいえウォーターハウスの声掛けによってそれが成されたとは思いにくい。

ということは裏を返せば、ウォーターハウスは美術史的な側面を度外視でき、純粋に彼の作品を楽しむことができると捉えることもできるでしょう。

フェルメールとの対比

そう考えると、フェルメールと似ているところもある。

オランダ17世紀の画家ヨハネス・フェルメールは、当時カメラの技術進化に伴い、画法の進化や「バロック期」という大きなバックボーンがあったという点では後世でも注目される人物ではあります。

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聖ルカ組合にて、史上最年少で理事になったフェルメール。
そして経済的にもオランダ最盛期であり、美術史・音楽史としても「バロック」というとても輝かしい時代。
そこには彼自身のマンパワーで大きなブレイクを勝ち取ったというインパクトさはさほど感じられない。(もちろんフェルメールが提示している技法的革命もあったものの)

だからこそフェルメールの作品は、純粋に美しいと感じられる、いや、感じてもよいという安心感があるのではないでしょうか。

彼らが後世まで名を残したのは、マンパワー的ブレイクや、ハイライトなスキャンダラスさではなく、純粋に、美しい。そう感じた人々が残してくれたものではないか。

今週も沢山メールをいただきました

さて、一週あいてしまったのがよかったのか悪かったのか。ウォーターハウスに対してのメールをいただきましたのでご紹介します。

【ラジオネーム:直(ちょく)】
ウォーターハウス
刺さりました!
人物画は、
モデルに対する画家の想いを
強く感じてしまうので、
あまり好きではないのですが、
この人の作品は、いいです!

今回、取り上げられた、
シャーロットの姫は、
描かれている女性が、
なんだか浮世離れした美女なので、
男なら、だれでも
見入ってしまうのではないでしょうか?

画家ダイジェストでは、
父の弟子になってという部分が
興味深かったです。

私の場合は、
父との関係もそうだったのですが、
現在の、息子との関係も、
微妙な感じで、
お互いに、尊重はしあっているんですが、
あまり干渉したくないという感じ。

男同士なので、
親子という関係があっても、
負けたくないという
気持ちが働くんでしょうね。

父親の立場で考えると、
負けたくないけど、
乗り越えていってほしいですし

息子の立場で考えると、
勝ちたいけど、なかなか勝てない、
どうかすると
勝てそうもないと思ってしまう感じ...

親子で、同じ職業、
しかも、
師弟関係ってどんな感じなんでしょう?

私なら、絶対いや!
同じ、職業に就くにしても、
だれか別の人に教えを請いたい。

ウォーターハウスの時代では、
そんなことも
言ってられないんでしょうけどね!

有料版は、
まだupされていないので、
聴けてませんが、

保守と革新
どちらからも好かれていたというところ、
早く聴きたいです。

普通は、
どっちつかずは、
評価されないと思うんですけどね…

それでは、次回も楽しみにしてますヨ!

<追伸>
106回も聴き直しちゃいました(笑)

いつもありがとうございます^^
男性目線だと、両親と同じ仕事に就くのは抵抗があるのでしょうか。
と言ってる私も、両親(父と母は同じ職業)とやってる仕事は全然違うのですが笑

【ラジオネーム:やまみ】
◆ウォーターハウス拝聴させていただきました。
ラファエル前派とは逆の、アカデミー側の立場といっても、
素人目ですと、パッと見一緒じゃんという感じですね。
西洋人からみたら、日本人も韓国人も中国人も区別つかないのと似てますかね。
民族紛争などで、フツ族とツチ族といわれても、
日本人からみたら一緒にしか見えなかったりしますものね。
この頃のイギリス絵画は、どこぞの少女漫画でないですが、
美男美女ばっかりですね。
風景や建物の描写も非常に美しい!
個人的に好きなウォーターハウスの作品は、下記あたりでしょうか。
・『オフィリア』(特に1894年版、『シャロット姫』もですが、同じテーマで何種類も描く人ですので)
・『アネモネ』(ちょっと、ジョジョっぽいポージングですが(^_^;))
・(一昨年物議を醸した)『ヒュラスとニンフたち』
・『受胎告知』(伝統的な構図なのに、草花がいっぱいでいかにも受胎告知、という感じがしなくて面白く感じます)
ウォーターハウス絡みですと、
ほぼ同年代のアルマ=タデマが、個人的にかなり好きです。
機会があれば、彼も取り上げていただけると嬉しいです。

イギリスですと、
オーブリー・ビアズリーなども
取り上げていただけると面白そうですね。
普通ですと『サロメ』に落ち着くことになってしまうと思いますが…
日本でいうと春画のような、ポルノグラフィカルな作品も手掛けています。
(アリストパネス『女の平和』や『美神の館(ヴィーナスとタンホイザー)』など)
そちらはオマケ音声にするとかではいかがでしょうか?
たった25年の短い人生でしたが、
珠玉の作品と大きな影響を残した人でしたね。
音楽ですと、
ちょうど同時代にベルギーにギヨーム・ルクーという天才作曲家がいますが、
彼も24歳で夭折していますね。
地理的にも時間的にも関われることはなかったと思いますが、
短い生涯で、ユニークかつ、
多くの素晴らしい作品と影響を残した天才という点で、
親しいものを感じます。

それでは、
次回も楽しみにしております。

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[オフィーリア]1894年 キャンバス、油絵 124.4*73.6cm
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[アネモネ]1902年 キャンバス、油絵 114*79cm
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[ヒュラスとニンフたち]1896年 キャンバス、油絵 98.2*163.3cm

2018年の記事はこちら

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[受胎告知]1914年 キャンバス、油絵 99*135cm

ウォーターハウスはどれを見ても美しいと純粋に感じられるから素敵ですね。受胎告知も、いわゆる「受胎告知」ではない幅の良さが、made in UKだからなのか、彼の魅力なのか。
ビアズリーは、原田マハさんの回で少し触れましたが、彼もまた、魅力的な人物です。その「魅力」は今回取り上げたウォーターハウスとは全く違う方面だという所も、また美術史の面白いところですね。


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