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「人生の目的は一つじゃなくていい」 訪れる変化を軽やかに楽しむ生き方 #羅針盤のつくりかた

ラブソルにたまに訪れては、美味しい食事を作ってくれる女性。

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お名前は、松嶋有香さん

代表2人のご友人であり、ラブソルに「NPO法人Reジョブ大阪」のWEBサイト制作を依頼してくださったクライアントさんです。


いつもハツラツと、精力的に活動されている有香さんのお仕事は、文章力養成コーチ、ライター、国語教師、教育コンサルタント。脳損傷者と家族を支援する「NPO法人Reジョブ大阪」の理事も勤めながら、本当はこれを本業にしたかったのだというバンド活動も行なっています。


バンドでの成功を夢見た20代生活のために始めた仕事での海外転勤海外での結婚・妊娠・出産を経て始まった子育ての日々。社会との隔たりを感じてしまったこともあるといいます。そこからどのように今の仕事にたどり着き、様々な思い込みから脱却したのでしょうか。

多くの女性がライフイベントの変化を見据えて感じやすい「まだ見ぬ不安」。今回の #羅針盤のつくり方 では、その不安をパワフルに打ち砕いていただきます。

#羅針盤のつくりかた ー このシリーズは、LA BOUSSOLEと共にお仕事をしてくださるクライアントさんやクリエイターのご紹介を、記事にしてお届けしています。


<Profile>
松嶋 有香(まつしま・ゆか)
1966年北海道釧路市出身。海外を含め転々とし、現在は東京都在住。文章力養成コーチ、ライター、国語教師、教育コンサルタント。インターネット国語塾「かきまくれっ! こくごトレーニングペーパー」主宰。NPO法人Reジョブ大阪理事。小金井市青少年健全育成委員、小金井市いじめ防止条例検討委員。趣味は料理と楽器演奏。

夢を追う日々から一転、海外を舞台に働く日々へ

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ーー弊社の代表2人が、人生経験豊富で面白いから有香さんにお話を聞いてごらんと声をかけてくれて、今回のインタビューになりました。今日はよろしくお願いします!

松嶋さん(以下:松嶋):はーい! よろしくお願いします!

ーーでは早速…有香さんはたくさんの肩書きをお持ちですが、どのようなキャリアを経てこの形になったんですか?

松嶋:元々は高校生の頃から女の子だけのバンドを組んで活動していて、大学卒業後も就職もせず、ずっとバンドひとすじだったの。本格的に活動しようと東京に出てきたものの生活していけなくて、塾で教材作成のアルバイトや家庭教師なんかも始めたんだよね。
もともと人にものを教えることは好きだったから、楽しんで出来るだろうなって。それが今の仕事に繋がるとは、想像してもいなかったけど。

ーーその塾の仕事の関係で、海外でも暮らしていたんですよね?

松嶋:そう。勤めたのは海外で日本人学校のそばに塾を作って、日本人に国内と同じレベルの教育を提供する事業をしている会社で、ニューヨーク・シカゴ・ヨーロッパ全域って広げていくタイミングだったんだよね。

夫は1年間現地で塾を運営して、軌道にのったら他の国に移動してっていうのを繰り返していた人で、アメリカに1年、ドイツに1年、ロンドンに2年住んだかな。その間に結婚して、妊娠・出産をロンドンで経験しました。

ーー出産まで海外で! 旦那さんと一緒とはいえ、日本を離れてどんどん新しい土地にいくことは、怖くなかったんですか?

松嶋:んー、怖くはないかなぁ。どっちかって言うと「楽しそう!」の方が勝ってた。でもシカゴからドイツにいく時に、ある人に「移動ばかりで、あなたのキャリアはどうなるの?」って言われたの。

ーー有香さん自身のキャリア…。

松嶋:「実績が出来た頃には別のところへ行って、また0からのスタートでしょう?」と、 親切心で言ってくれたんだろうけど「キャリアってなんですか?」って(笑)、わたし本気でわからなくて。「次ドイツ!?楽しそう〜!」って感じだった。起こる変化はさ、仕方ないじゃん!

ーー確かに、築き上げてきたものが度々0に戻ってしまうことは、なんとなく怖いと感じてしまうかも…。ましてや国が変わるなんて、自分が持ってる常識が全く通じないかもしれない、とか…。

松嶋:いや、電圧の違いくらいじゃない? 国って。

ーー電圧!(笑)

松嶋:それは極論だけど(笑)、見てもいないもの・知らないものを怖いと思ってシャットダウンしちゃうのは勿体無いよね。

ドイツに引っ越した日にスーパーに行ったらさ、缶詰とか瓶詰めしか売ってないの。お腹がペコペコだったから、旦那と2人で何か食べる所ないかなって近くのバーに入ったんだよね。
ドイツ語を全く喋れなかったから「何か食べるものありませんか?」ってガイドブックを指差して。そしたらね、目の前に生肉をぼんって置かれたの。

「人種差別だ!」って、「これでも食べてろ」って言われたみたいですごくショックだった。でもあまりにもお腹ペコペコだったから食べてみようって口にしてみたらめっちゃ美味しかったの!今思えばさ、ユッケだったんだよね!

よそものは雑に扱われるんじゃないかって、思い込んでいたのは自分だった。


「楽しい」から続けたことが、いつしか評価につながった

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ーー柔軟に生きようと思っていても、知らぬ間に色々な思い込みって持ってしまっているのかもですね。その後も海外を転々とされて、ロンドンで出産された後もお仕事は続けていたんですか?

松嶋:それがさ、私子供を産んだらお母さん業をやるのが当たり前だと思っていたの。だから、専業主婦になった。

ーーそうだったんですか! 有香さんはずっと昔から、色々な役割を並行して働いていらっしゃるのかと思っていました。

松嶋:今と違って、あの時は仕事と育児を両立するっていう感覚がそもそもなかったんだと思う。でも社会との距離が空いちゃったこと、ましてや海外で子育てをすることに精神的にちょっと滅入ってしまって。社会との関わりを何か持ちたくて、旦那さんの事務作業とかを家で手伝ったりはしていたかな。

ーーバリバリ働いていた女性が家庭に入ると、同じようなことに悩む方が多いような気がします。

松嶋:海外にある日本人のコミュニティが苦手で、ほとんど子供と1対1で過ごしていたんだよね。息子が2歳のときに帰国して、育児サークルに入ってからは楽しかったな〜! 同じ年齢の子供がいるママたちと、イベント企画したり運営をしたり。その延長でPTAとか子供会とか始めたんだよね。

「子連れでパーティーしよう!」とか「焼き鳥屋に行こう!」とか。「子供を連れて動き回るなんて!」みたいな時代だったから、お店に承諾得るのも大変だったし「松嶋さんが子供を集めて変なこと始めた」って幼稚園の先生に目をつけられていたくらい(笑)。でも何もないところから作り出すことが、すっごく楽しかった。

ーーそこからまた、動き始めたんですね。

松嶋:あの時代、自分を表す肩書きが「専業主婦」であることにすごく違和感があったんだよね。仕事をしていないから確かに“専業主婦”だけど、そうしたらみんな“専業〇〇”ってつくはずじゃない? 主婦は他のことをしちゃダメなのかなって。自分的には“めっちゃ遊んでる母さん”って感じだったよ。

でもそんな風に活動しているわたしを見て、「社会貢献だね」っていう人がいたの。その頃から青少年健全育成や子供会活動なんかも、全部ボランティアでやっていたから。びっくりした。

それが今のNPOの仕事にも繋がっていくんだけど、わたしは仕事がしたかったわけじゃなくて、誰かを支えることで、自分も頑張ろうって思えるタイプなんだと思う。


「やるか・やらないか」を決めるのは自分自身

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ーー仕事に復帰したのはどういうタイミングだったんですか?

松嶋:息子が小学生になったとき。やっぱり教える仕事がしたいなって思って。

ーーもともとは生活のために始めた仕事だったのに、戻るなら「先生」だったんですか!

松嶋:そうなの。教えた相手が「わかった! そうか!」ってなる顔を見るのが好き。国語って答えを教えるんじゃなくて、考え方を教えるじゃない? 毎回答えも違うし、問題ごとにどう思う?って話をしながらやっと答えが出てくるのが好きだなって気づいたの。テキストも全部自分で作ったよ。仕事してPTAも子供会もやって…忙しかったけどすごく楽しかった。今も子供会には在籍してるしね。今思ったけど、わたし辞めないからどんどん肩書きが増えていっちゃうんだよね。

ーー「楽しそう!」という感覚が一番大切なんですね。その中で、やってみたけど辞めた、合わなかったという経験はないんですか?

松嶋:関係ないことは断ってるから、そもそも始めない。

ーーその、「やる・やらない」の判断はどうしているんでしょう?

松嶋:自分がやっている姿を想像できるかじゃないかな?その物事を知っているかどうか。ありがたいことに認知症の支援や犬猫の殺処分を考えるグループへの支援など色々なお話をいただくんだけど、どちらも今の私にはどれだけ大変なことかが想像出来ないから、どうしてあげたらいいのかがわからない。嫌いとか好きとかじゃなくて、自分ごとにならないとできないんだよね。逆に身近に感じるものだったら、全力でやっちゃうと思うから。

ーーなるほど…。「必要とされているから断れなかった」という経験などは…?

松嶋:ない。自分にできることをするんだよ。「相手が望んでいることをしましょう」ってよく言うけど、そうじゃないと思う。いくら相手が望んでも、できないことはあるじゃん。そういう時は、なるべく早く「それは出来ないです」と返事してあげることだよね。


「知ってもらいたい」から、わたしは言葉の力を使う

ーーNPO法人の理事というお仕事は他のものとちょっと離れている気がしますが、身近に高次脳機能障害の方がいらっしゃったんですか?

松嶋:ううん、「高次脳機能障害の方の手記を出したいから手伝って」って言われたのが最初で、その後理事になったの。逆にNPOの理事やってって先に言われていたら、断っていたと思う。

ーーどういう障害なのかを、手記を作りながら知っていったという感じなんですね。

松嶋:脳の障害だから外見からはわからないし、なかなか理解してもらえない。お医者さんですらちゃんと理解している人が少ない障害なんだよね。

ーーそれこそ身近にそういう人が居たり、自分ごとでないとなかなか知る機会もないかもしれないです。

松嶋:そうなんだよね。わたしはたまたまこの障害を知ったからこのNPOの理事になったけど、断ってしまった認知症にだって悩んでいる人は沢山いる。でもこれも一つの縁だと思って、自分にできることはやりたいんだよね。文章を作って伝えることならわたしの専門だから、手伝える。

実際理事をやってみて思ったのは、NPOってそれだけで生真面目な印象が強いし、活動を知ってもらおうにも、文字ばっかりのWEBサイトじゃ読み進める気にならないじゃん。そこで障害を知る人を増やして支援を集めていきたいわけだから、何とかならないのかなってラブソルさんにWEBサイトを作ってもらったの。

10月には大阪で「関西まるっと文化祭」ってイベントをやる予定で、春には東京でもやる。うまくいけば、毎年続けていきたい。今の今は、夏休みの読書感想文に追われてるけど…!(笑) この文化祭がうまくいくように、しばらくはこれに向けて一生懸命かな。

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(実はこの日、みんなで千葉にキャンプに来ていました。)


いくつになっても、夢は減らない

ーー色々なライフステージを経て、今も新しいことにチャレンジしたり生き生き過ごしている女性が身近にいると、歳をとるのが怖くなくなる気がします。有香さんの夢を聞いてもいいですか?

松嶋:夢かぁ…。まだまだずっと先でいいんだけど、家に人を呼んでパーティーしたい! 普段は自由に仕事したり遊んだりして、週末にみんなおいでよって集めて自腹で美味しい料理を振る舞うの。だから、お金持ちにならないといけないね(笑)。それはずっと思っているかなぁ。

ーーめちゃめちゃ楽しそう! お金も必要そうですけど、呼びたいと思える仲間も必要なわけですよね。

松嶋:私転勤ばっかりだったからなかなか友達って定着しなくて、友達100人作るのが夢だったんだよね。だって私が死んだときに、お葬式に親戚しか来ないんじゃ寂しいじゃん。「いい人だったね」って沢山の人に来て欲しいなと思ってたの。だから、今までやってきたことって社会貢献とか立派なことじゃなくて、友達を作ることが大きな目的だったのかもしれないな。

今ならきっと100人くらい来てくれる気がする。

ーー大人になっても、そういう存在はできるんですよね。結婚や出産などで周りが変化したりするのが怖いと思う女性も多いかもしれないですけど、勇気がでるような気がします。

松嶋:変化は仕方ないけどさ、心配しなくていいよね。離れることがあっても戻る縁は戻るし、出会いは増えていくものだから。

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ーー有香さんを見ていると、相手が大切にしているものに共感して一緒に力を尽くしてくれるから、相手にとってもどんどん大事な人になっていくのでしょうか?

松嶋:そうだといいな。週一回ランチするくらいの友達じゃなくて、思い出話をできるような人が100人以上集まったらいいなって思う。まだまだこれからだし、若い友達も作らなきゃ(笑)。

ーーすごく素敵です! お葬式なのに、来てくれた人たちが思い出話で笑ってるくらいがいいですよね。

松嶋:そうそう。そうなれるようにさ、みんなしたいことしたらいいよね、いつか死んじゃうんだから。

ーー頭ではわかっているつもりで、若い頃の夢は追えないとか、自分に勝手に制限をかけてしまっていたような気がして…。

松嶋:わかるなぁ。私だってまさか、子育て終わって今またバンドをやってるなんて思いもしなかったよ。でも私が憧れたはるか上の年代のミュージシャンたちが、それこそ70歳で復活LIVEとかやってるのを見て、「私にできないはずないじゃん」って、「じゃあ今からでもギター弾かなきゃ!」って思ったんだよね。

ーー30代になったからって、なんだか色々諦めていた自分はなんだって感じです…。でも、毎日お忙しい中で、趣味も充実させるにはどうしたらいいんですか?

松嶋:普通のサラリーマンってさ、平日は仕事して土日に趣味をするんだよね。今私の音楽活動は「セッション」っていう即興LIVEをするんだけど、そのために練習をしなきゃいけない。だからプリントアウトしてる時とか煮物してる間とか、手があくじゃん? そういう時にだらだら携帯いじるのやめて、隙間でギターひいてるの。

ーーやりたいことがいっぱいあるから、どうにか時間を見つけていく感じなんですね…。好きなことをしたいけど時間がないって言えなくなっちゃいますね。

松嶋:好きなんだから、やるでしょう? 子供だったら親が禁止したって好きなことやるじゃない。時間がないとか、出来ないって思って諦めるなんてもったいないよ。

なんだってそうだよね。自分の目で見て、どうするかを考える。それで自分にできることを一生懸命やる。そういうことを私はずっとやっていきたい。その結果、将来週末に人が集まったりしたらいいなって思う。

ーーそんな光景が、想像できます。

松嶋:そう、想像できるよね。そこには障害者の方もいるだろうし、面倒見た子供やそのお母さんがいたり、もちろんみんなもね。やれるんだよ。想像できるものは、やれる。人生の目的は1つじゃなくていいんだから、想像力をたくましくして、できる範囲を広げていこうよ。その方が絶対楽しい!

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仕事を頑張る時期や、趣味に時間を使いたい時期。
友達づきあいを大事にする時期や、家族を大事にする時期。
大人になるほど大事なものが増え、優先順位はころころと変わっていく。どれかを大切にすればどれかを落としているんじゃないか、そんな気がしてどこかずっと焦っていました。

今の有香さんは仕事も趣味も全部自由に楽しんでいるように見えて、先を歩く人生の先輩がそんな風に楽しそうなことは、私たちにとってすごく励みになる。でもそれはきっと、有香さん自身がこれまでの様々な変化に時に悩みながらも、受け入れてきた結果なのだと思います。怖がってばかりいても仕方がないし、その時々を受け入れながら、時には欲張りに抱えていくしかないな、そう感じました。


「人を支えることで、自分も頑張ろうと思える」もれなく支えてもらっている私たちが、有香さんにお返しできることは?

有香さんが多くの人に知ってもらいたいと弊社に依頼してくださった「NPO法人 Reジョブ大阪」のWEBサイトを、これからもどんどんアップデートしていくこと。この記事を読み、気になった方がいらっしゃれば、一度ぜひ見てみてください。

取材・執筆・編集 : 柴田 佐世子 , 柴山 由香
撮影 : 池田 実加


<NPO法人 Reジョブ大阪のWEBサイト>

デザイン : 柴田 佐世子
コーディング : 児島 大
トータルディレクション : 柴山 由香


<関西まるっと文化祭 開催要項>

10月14日 (祝) 13:00~16:30
大阪府立中央図書館 (ライティホール&会議室)

<有香さんからのコメント>
高次脳機能障害の方々が実行委員になって支援者が支える、そんな文化祭を開きます。コンサートや講演会、家族のケアのための部屋なども用意してお待ちしています。
当事者や家族の方にもきて欲しいけど、特に今、勉強中の医療系の学生さんに来て欲しいんだよね。教科書に載っている高次脳機能障害じゃなくて、本当の高次脳機能障害の人とお話をして、「こういうことなのか!」って肌で感じて欲しい。普段、介護で大変なご家族には、当事者は私たちが見るので、思いっきりリラックスして過ごして欲しいです。

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