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Vol.7:「壊す」「作る」「口を出す」「取り上げる」「任せる」「認める」

もうダメだ・・・と思うほどの混乱期を乗り越える蘇生術とは

今回は、製造業を率いるWさんにお話を伺いました。自社の管理部門の再構築や管理部長、経営企画、新しい部署立ち上げと、様々な形成期を乗り越えてきたそうです。そんなご自身の経験と、今、自社で起きている混乱期の話など、リアルな状況を伺いました。

どんな状態の部署でも、【壊す】か【作る】

ご自身が、順調な部署に異動することはほとんど無かったと振り返られました。では、部署の配属後は、どんな取り組みをされていたのでしょうか。
「そもそも、パターンがありますね。組織を立て直せっていう場合と、全くなかったところから作ること。逆に何もないところから作る方が、難しくはないかもしれません。元々ある部署の場合、立て直すにしても、1回壊さなくてはいけないのが、大変です」
建て直すためには、「壊す」必要がある。ただし、壊すのは労力と精神的な負荷も高い。その上で、Wさんは、組織の成長自体も、行ったり来たりなのではないか、と問いかけられます。
「作ったり、壊したりを行ったり来たりが激しいです。会社全体で見ると、製造部門が悪い時に、営業が好調だったり。製造が機能し出したと思ったら、今度は営業が混乱したり」
自社の現状を踏まえて、組織が右肩上がりに行くというよりも、
少しずつ改善を加えながら、膨らむ様子をこのように表現くださいました。
すでにある組織が機能していないところに飛び込む時、微調整で対応しきれないことも多いとわかっていながら、抜本的に壊して、更地から作り上げることを決意し、取り組む。相当な覚悟と労力は容易に想像できます。
さらには、会社全体が良いところも、そうでないところも次々と存在する。まさに組織は生き物だ、と実感するお話でした。

トップは、【口を出す】べきか?

「トップが変われば、組織ってすぐに変わります。今の自社のとある部署はトップが変わり、大混乱です」
混乱期真っ最中の部署の弱体化を懸念し、思い切って、個人のパフォーマンスの高い方を部署の部長に配属した結果、部署の半分が離職。さらに、まだ残っている人の中にも、数名は辞めることが決まっているそうです。
もうだめだ…と判断し、テコ入れを決められたのは、バタバタと人が辞めていく状況を目の当たりにされた時だったそうです。
最初は口を出さずに見守り、もう無理だろうと思った時には、リーダーとして介入していくと決めているWさん。トップならではの忍耐力と見守る力が試される期間なのではないでしょうか。

押し付けることが、混乱の引き金になる

渦中の部署の部長は、どうしてこのような事態へと陥ってしまったのでしょうか。部長自身のパフォーマンスが高いが故に、相手に押し付けてしまう背景があったようです。
「自分が仕事ができて、諦めない。粘って結果を出すタイプのリーダーです。一度決めたことに対しては、諦めずに努力し結果を出しますが、その一方で周りの意見に耳を傾けることが少ない傾向がありました」
猪突猛進タイプの部長の配下で、人が大量に離職していく現状を、このように話されます。
「自分が仕事ができるから、それを部下に押し付けてしまうのですよ」
その結果、部下が、もうついていけないーと離れてしまったのだと言います。押し付けてしまう、自らの我を通してしまう。自分が信じているやり方で成果を出すことにコミットしてしまう。
どれも、個人であれば抜群の成果が出るのではないでしょうか。しかし、
今の目的はチームで成果を出すこと。新しい部長も、正念場です。
「組織の原点はコミュニケーション。しかし、自分が仕事ができると、コミュニケーションを取らない。そのくらいできるだろうって思ってしまう」
部長にはできるけれど、自分にはできないー。
頑張りたいけど部長のようには頑張り続けることができない。
メンバーのそんな想いが積み重なってしまったのでしょうか。
社長自ら、部署の運営に介入されている最中だそうですが、
どのように、現状を打開されるのかを伺いました。

鍵は、潰さない。でも、一旦は【取り上げる】、そして【任せる】

「自分が任命した、リーダー(部長)はそのままにします。
ここで外しては、今度は部長が潰れてしまうから」
では、どのように、辛い立場の部長と対話をされているのでしょう。
「整理して、シンプルに、と伝えています。困難にあるからこそ、です。
とにかく、組織のルールなどが複雑。これでは、部長は分かっても、部下が分からない」
成果を出したいからこそ、自身のノウハウを存分に部署に浸透させようとしたのかもしれません。一方で、その意気込みが、複雑な運用を部下に強いてしまった可能性がありそうです。
介入のプロセスとして、一旦は全て現状のルールを取り上げて、誰でも理解できるようなシンプルな組織の運用を作り始めたところだと話されます。
そのような運用方針に抵抗を示す人もいるようですが、部長から部下に任せられる仕事だけをWさんが部長にわたす。
「部長の強みを徹底させて、動かしています」
Wさんが考える「取り上げる」と「任せる」は、全て、組織がシンプルに運用されるためのプロセス。その人ができること、強みを発揮できるように、まさに、一度、壊して、新たに組み立て直すということかもしれませんね。

数字を使って【認める】を進める 

シンプルな組織を目指しつつも、周囲が受け入れられないことも多い。しかし、シンプルな組織の1つには、数字を扱うことも重要だと話されます。
「数字を扱わせます。本人が作って、数字に出すと、誤魔化せないでしょう。誰が取り組んでも、同じような結果が示されるため、その事実を否定することは難しい。トップダウンのアプローチだと抵抗を感じるかもしれませんが、数字として示されることで避けられない現実を認識せざるを得ません。なので、常に数字で表現できるかどうかを問い続けています」

しかし、実際に数字の話をすると、最初は数字になんてできるものではない、と現場からも反発を受けることもあるそうです。様々な研修や、Wさん自ら、やり方を伝えつつ、1つずつ、数字に落とし込むことを進めている最中だそうです。
数字は、誰が見ても同じ。誰が見ても分かる、最もシンプルな指標かもしれません。しかし、自分なりの成功法則があると、その法則にどうしても依存したくなるもの。
どうしたら、数値に落とせるのか。今一度、自分にも問いたい点です。

様々な壊す、作るを経験されたWさん。自社で、まさに、新たな局面と向き合う部長との対話を進めていらっしゃる最中でした。
組織のメンバーが皆、シンプルに理解できることは何か。
この姿勢は、組織の共通言語を作り上げるプロセスと言えそうです。
仮に、自分のノウハウがあったとしても、押し付けず、相手の良さを認め、引き上げていく。自分のノウハウを、一度手放すのような姿勢も、実はマネジメントには必要なのかもしれません。

「次回会ったら、今の状況がガラッと変わっているといいね」と笑顔でお話しを締め括ってくださったWさんの、組織成長の跳躍シナリオ、続編も楽しみです。

【取材協力】
現職:製造業 代表取締役
イニシャル:W様
※内容によって、文面内の当事者が特定されてしまう可能性があることから、社名、名前は伏せさせていただいております。内容にご興味のある方は、お繋ぎいたします。

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ラボラティック株式会社 広報担当