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小学生の宿題は学びとどうつながるか?〜ラボ&タウン まちなか学童の実践〜
宿題はやる意味があるのか?
今回は、その問いに答えるために、デューク大学のハリス・クーパー教授の宿題に関する研究をご紹介します。
クーパー教授は、1987年から2003年のアメリカの宿題に関する論文を対象に統計解析をし、宿題は学力に効果があることを改めて証明しました。
興味深いのは、宿題は、学習内容や方法以上に、宿題をすること自体が重要であることが示されている点です。
具体的に示唆される宿題の効用としては、
①学校外での学習習慣をつくること
②教師と家族の関係構築に貢献すること
③子供の個別の特性や障害を発見するきっかけ
が挙げられます。
推奨する宿題の時間は、学年×10分(例:3年生は30分)が最適だそうです。一方で、過度な宿題は、子どもの態度の悪化や、余暇時間の減少の悪影響もあります。
ラボが学習の時間において大切にしていること
ここでは、ハリス・クーパー教授の宿題の効用に沿う形で、ラボの実践をご紹介します。
①学校外での学習習慣をつくること
ラボアンドタウンでは、「学習の時間」を通常期1時間、長期休み期は2時間設定しています。
子どもには、まず、「学校や習い事の宿題を終えることが、親とラボとの約束であること」を話しています。その上で、宿題が終わった後の残りの時間は、自分の興味を深めるための自由時間にしています。(ただし、周りの迷惑にならないように、ひとりで没頭する時間としています)
このようなルールにしたのは、やるべきことを詰め込んで勉強させることよりも、最低限やるべきことをやったら自分の興味に沿って好奇心を育んで欲しいという願いからです。
それによって、効果のある学習時間は確保し、宿題の弊害をなくし、自律的な学習習慣を身につけることをめざしています。
②教師と家族の関係構築に貢献すること
ラボでは、子供たちが自律した学習習慣を身に付けることを大切にしています。その際、宿題をみるプロセスを通じて、子どもが自律した学習習慣を身につけられるよう、ラボと保護者がパートナーとなって一緒に取り組んでいきたいと思っています。
例1.学習習慣が身に付いていない場合
まずはひとつひとつ出されている宿題ができたかどうかを確認しています。特に、入学間もない一年生はひとつひとつ丁寧に見ていきます。
例2.学習習慣が身についてきた場合
ラボでは、ひとりで宿題をできるようになってくると、本人が宿題をやったよ報告をしてもらうことで宿題を完了するようにします。
保護者の中には、そのルールを聞くと、
報告を受けるだけなのですか?
ちゃんと見てくれないのですか?
と疑問に思う方もいるかと思います。
この疑問に答えるために、真逆の対応として、
「子どもの宿題を必ずチェックする」という方法を考えてみます。
この方法は、確かに子どもが宿題を完了する確率を高めます。
それによって、親が宿題をみる手間を確実に省くことができます。
一方で、弊害もあります。
ひとつは、子どもがチェックされるから宿題をやるという受け身なスタンスに育つことです。
もうひとつは、自分はできるのに毎回チェックされると感じることで、大人が自分を信じてくれていないと不信感を覚え、自身の自己肯定感が下がることです。
ラボでは、自律した学習習慣が身についききた子には、報告を受けたら、
宿題が出来たことを認める声掛けをしています。
保護者さんにやって頂きたいことは、
子どもが宿題ができていたら、
「宿題できてるね!やるじゃん!」
と子どもの行為を認めて励ますことです。
ラボの声掛けに加えて、保護者の方からも、
言って頂くことで、良い習慣の定着に向けて、
行動をさらに強化することができます。
例3.子どもが宿題をしていなかった場合
ただ、学習習慣がある程度身についている子どもでも、宿題を完了したと報告してくれたにも関わらず、実際は宿題をやっていなかったと言うケースが生じます。
その際は、子どもには、
・宿題をやるという親とラボとの約束を守れていなくてよくないこと
・やったといって実際にやっていないことは嘘をついていてよくないこと
をまず伝えます。(学習習慣の前に社会性の話になります)
その上で、何が宿題をやれなくしているか背景を聞いていきます。
単にやるべき内容に漏れがあったのか、あるとわかっていたが忘れたのか、嫌だったのか、わからないことがあってやめてしまったのか。
中には、親との時間を作るためにやっていないケースなどもあります。
それらをしっかり聴いた後、学習の時間のルールを再度周知するだけで、
子どもは再度自分で宿題ができるようになるケースも多いです。
もし、それでも改善が見られない時は、段階的に注意のレベルをあげていきます。もし、繰り返される場合は、学習習慣が身についていない段階に戻し、あらためてひとつひとつ宿題を終えているかみていきます。
その繰り返しによって習慣化できるようにしていきます。
宿題における子どもとラボと保護者の関わり
以上、3つのパターンにおける実践例を挙げましたが、通底するラボの考え方としては、
・子どもは、宿題をする責任
・ラボは、宿題を終えるようにサポートする責任
・保護者は、見守り励ます責任
それぞれに責任がある。と考えています。
保護者さんにやって頂きたいことは、
子どもが宿題ができていたら、
「宿題できてるね!やるじゃん!」
と認め励ますことです。
そして、本来、宿題をみる時間を、子どもが今日あった出来事を聴いてあげて下さい。
そして、できていなかった時には、ラボにできていない事実をお知らせいただくことです。
やって頂かないでほしいことは、ラボに状況を伝えないまま、自分たちで宿題をフォローすることです。放課後に宿題を終わらせる責任は、子どもとラボにあるからです。
この三者の関係を築いていくことが、子どもの自律的な学習習慣を育む環境になります。
③子供の個別の特性や障害を発見するきっかけ
宿題がどうしてもできない子どももいます。その場合、まず、子どもの様子を保護者の方にお伝えします。
最終的に、本人の特性なども鑑みながら、保護者の方と共に、宿題をどこまでやることを目標とするのか、どう学習習慣をつけていくか対応を決めていきます。
子どもの成長は千差万別です。実は、成長を待つことで、気づけば問題が解消することもよくあります。ですので、保護者の方と一緒に子どもを見守っていければと思っています。
そして、滅多にありませんが、継続してできていない状況が長い期間続く場合は、その状況と兆候から発達障害の専門家との相談を促すきっかけにもなります。
まとめ
以上、いかがでしたでしょうか。
ラボは、宿題を介して、子どもが自分で学習する習慣を身につけていけるよう、保護者が子どもを見守り励ます存在でいられるよう、お預かりの時間に宿題をサポートしていきます。
最後に、引用したデューク大学のクーパー教授の論文や動画をご紹介します。お時間のない方のためにサマリーも添えていますのでご覧ください。
(参考1)
ハリス・クーパー教授の宿題に関する論文
1987年から2003年の間にアメリカで行われた宿題の影響に関する研究をまとめたものです。
研究では、各種論文の設計の欠陥があるものの、宿題が学業成績に肯定的な影響を与える証拠が一貫していることが見られました。
成績と宿題の間の相関関係は、特に中高生と生徒自身が宿題にかけた時間を報告した場合に強く見られました。
成績の測定方法や教科による差は明確な証拠はなく、今後の研究が提案されています。
宿題の定義や目的、量、個別化の度合いなど、様々な側面が検討されています。
宿題は学習時間の増加、学習習慣の向上、自己管理能力の育成など、直接的および間接的な多くの教育的利益をもたらす可能性があることが示唆されています。
一方で、宿題には否定的な影響も指摘されており、生徒の学校に対する態度の悪化や、余暇時間の減少などが懸念されています。
参照URL:https://bit.ly/3wIiQot
Harris Cooper, Jorgianne Civey Robinson,
and Erika A. Patall
Duke University
(参考2)
ハリス・クーパー教授の宿題に対するアドバイス
* 親の見解: 調査によると、5人に1人の親は自分の子供に宿題が多すぎると思っています。また、同じく5人に1人の親は宿題が不十分だと考えており、残りの3人は宿題の量が適切だと感じています。
* 10分ルール: 教師は、子供の学年に10を乗じて、その結果が1日の宿題に費やすべき分数になるという「10分ルール」を推奨しています。例えば、2年生は20分、4年生は40分の宿題が適切です。
* 若い子供の宿題: 若い子供たちにとっては、過度な宿題は学業成績の大きな変化を期待できるものではないとされています。スペルテストのような単純なタスクが、これらの年齢層に最も適している活動です。
* 学業成績を超える効果: 宿題は学業成績の向上だけでなく、子供たちに学校以外の場所でも学べることを教え、親が子供の教育への関心を示す機会を提供します。また、子供が数学に苦労しているか、学習障害があるかもしれないと気づく手がかりになることがあります。宿題は親と教師の間の肯定的な関係を築くのにも役立ち、共に子供の学習を最大限に支援するチームとして機能します。
参考URL:https://youtu.be/WX2vMCV4cKg
「How Much Homework Is Too Much? 」
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