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ゲノム編集食品トマト、食べてみた。

ゲノム編集食品という言葉、最近よく聞かれるようになってきました。

研究が進み店頭に並ぶのも近い、と言われ、私はすごく期待しています。

ゲノム編集は農業・畜産業の生産性、安全性、機能を大きく向上させるテクノロジーなのです。

ゲノム編集とは?

'クリスパー'とか言われても、ピンとこない人向けに解説します。

品種改良とは、すべてゲノム配列を組み替える技術です。果実を大きくしたり、毒性を減らしたり、甘くしたりするのも、すべてゲノム配列を組み替えています。サラブレットの育種や、シャインマスカットの育種まで、すべてゲノム配列を組み替えることで達成しています。(ただしゲノムという言葉が生まれる前から行っているため、そのことを知らずに人類はゲノム配列を組み替えていました。)

従来の品種改良は、当てずっぽうでゲノム配列を組み替える技術でした。紫外線に当てたり、異なる種をかけ合わせたり、いろいろな方法でゲノム配列を組み替えていました。一つの品種を作るのに十年単位という長い時間がかかっていました。

ゲノム編集は、ものすごく短期間で目的通りにゲノム配列の組換えを達成する技術です。プログラミングコードをいじるように、ゲノム配列をいじれます。そうすることで、一つの品種を作る時間が数十倍速くなります。

2000年くらいから現在にかけて、たくさんの作物や動物のゲノム配列が解読され公開されてきました。そして2013年にゲノム編集技術が開発され発表されました。まさに21世紀の技術です。

安全性の話は農水省のHPを参照してください。ただし、基本的にこれまでの品種改良と変わらないので理論上は安全です。むしろ、正確にゲノム配列を編集できるので、予測不可能な毒性などが生まれる心配がないので、リスクは低くなると考えてください。

流通しているゲノム編集食品

現在流通しているゲノム編集食品は以下の3種類です。

・ゲノム編集トマト
GABA合成酵素の抑制を解除し、GABA含有量が向上したトマト。日本で最初に流通したトマト。

・ゲノム編集タイ
筋肉の生成抑制遺伝子を変異させ、マッチョになったタイ

・ゲノム編集フグ
食欲を抑えるレプチン受容体を除去し、餌をたくさん食べることで成長が早くなったタイ

タイとフグに関しては、成長効率が良くなったことにより、一匹当たりの生産に掛かる環境負荷が下がります。サステナビリティとも相性が良いです。

さらに、ソラニンという毒を作れなくなったジャガイモなども、作られています。この技術は使い方によっては食の安全性を向上させることもできます。

ゲノム編集トマト

今夏、サナテックシード社が、ゲノム編集トマトの栽培モニターを募集していたので、参加しました。

このトマトは、シシリアンルージュというトマト種の、GAD遺伝子の末端を少しだけ除去しています。こうすることで、GAD遺伝子が活性化し、トマトの実にGABAが蓄積します。

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現在販売されている高GABAトマトは、水ストレスをかける等栽培方法を工夫することによってGABA含有量を増やしています。
この方法では労⼒がかかり、収穫量が少ないのが課題です。
今回ゲノム編集技術によってGABAの合成酵素遺伝子の一部を改変し、活性を強めることができました。含有量も国内で通常栽培で一般に市販されている品種と比較してかなり高くなっており、1日1〜2粒をおかずに添えるだけで、軽度高血圧や正常高血圧の予防につながることが期待できます。

このトマトを栽培しました。苗が届き、それをベランダで育て、収穫しました。100個以上取れたと思います。

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実際食べてみましたが、拍子抜けするほど普通のトマトでした。まぁ、ゲノム編集したからといって、トマトはトマトです。味もおいしかったです。

ゲノム編集に対する批判

ゲノム編集に対する批判は強いです。それこそ、キリスト教などの宗教や、自然を愛するオーガニック主義とは相いれません。

「人工的に作り上げられた生き物は悪」や「そんなもの口に入れたくない」、「そういう仕事に関わる科学は悪」という批判をされることがよくあります。

これに関しては、いくら安全性や効率性、環境負荷低減の科学的根拠を提示しても、相容れることはなく、水掛け論になります。私は科学側の人間なので、説得することは困難ですが、その対立に関しては以前に記事を書いています。

ゲノム編集は農業・畜産業にとって、生産性を上げ、安全性を上げ、環境負荷を下げることができる有用な技術です。私はものすごく期待しています。こういった技術が普通に使われる世の中になってほしいものです。



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