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偶さか日記3(暗夜迷宮日記)

イラストは全て嘉又夢了氏
文中の凌司君は氏のキャラクター。
事前に関係を組んでいます。


3月9日

運動が足りねぇ筈はねぇんだが、最近夜中にしょっちゅう目覚める。
俺は昼型バンパイアだから夜眠れないのはストレスだ。
凌司君も眠れてねぇのか!
うーーーーーーん?ドッチがドッチに引きずられてるんだ?
しかしまぁ、獏の神社を見つけたからって神頼みしに行くとは意外だったよ。
俺は按摩さんに来てもらった。
気付かなかったが全身凝り固まってたらしい。
毎日百メートル泳いでジャグジーで解してるのにな!

3月10日

昼まで好転反応で身体が怠かったが、午後には持ち直した。
不眠で死ぬ事は無いからとせせら笑った精神科医を殺してやろうかと思った事がある。
人生経験も臨床経験も少ないニンゲンだったから堪えたが。
注意力散漫っていうのは充分に生死に係るだろ。
殆どの交通事故は注意力の欠如が引き起こしてるんだろうよ。
運転者なら歩行者を轢き殺しかねないし、歩行者なら運転者を殺人者にしかねない。
だから眠れてないって言葉を俺は重く受け止める。

3月11日

フ×シマまで弟分係累の墓参りに行った。
信じられるか?
バンパイアなのに放射能で死んだんだぜ。
いや、バンパイアだから、だと医者は言ってたか。
血が汚れればバンパイアこそニンゲンの何万倍にも悪影響を受けると。
安全に処分できない物を使いたがるのは、ただのエテ公だ。
生命と未来を引き換えにする価値のあるものが有ると言い張る奴等なんか信じちゃ駄目なんだがな。
誰も彼も好き好んで目先の事に惑ってるように見えてきた。
苛ついてる証拠だな。
俺は俺の係累を導いて護ってやれば良い。
余裕ができるまで馬鹿どもをアウトオブ眼中に外すんだ。
ヨシ!

3月12日

凌司くんち圭家の界狭間口が復活した。
C'mon諭となりちっくの皆のお陰だ。
なりちっくってのはブ×アティルトのナリスチャンとチカッツチャンが中心の傭兵部隊だ。
俺の子孫も一時一緒に戦った事がある。
髪と爪を人の路の為にくれてやれるなんざ、余程の学無しかお人好しかだ。
モチ、彼等は後者だから、今後コッチに彼等が来た時は俺も係累並みに面倒みると誓った。

3月13日

朝からナリスチャンが来て、二階の厨房で遊んでた。
凌司君の反応に興味があったから、俺は遠巻きに眺めていた。
凌司君はナリスチャンに、朝から何してるとか喧嘩しちゃ駄目だろとかとは言わず、理想的な受け答えをしていて何となく安心した。
離婚して妻方で暮らしてる息子が今でも遊びに来る訳だな。

3月14日

服屋のバイトはモテる。
バレンタインには32個貰った。
完全な義理と思えるのはウチの店長と隣の店長だけで、他はこれを機に付き合えたらラッキーくらいな微妙な気合が感じ取れる。
義理に連絡先は書かないだろ?
長い客だとチョコとピアスやバッグに煙草を加えてくれる。
外国煙草なんかもある薄暗い広めの煙草屋で色々悩んで選んできてくれてるのが分かる。
世の中の嫌煙ムードのお陰で今も喫う人は5人くらいか。
喫煙者や元喫煙者は自分が喫って美味かったけど、もう高くて自分の為には買えなくなったような銘柄をこういう時にくれる。
全く喫わねぇ子やシーシャ派の子等は匂いとかパッケージで選んでくれる。
匂いは大体甘いヤツな。
パッケージはその子の格好良いと思うヤツなんだろう。
バイト中の俺の格好が一貫しないからか、これは結構分かれる。

厳ついのを格好良いと思う子、スタイリッシュなのを格好良いと思う子、ブラックが格好良いと思う子、ゴールドが格好良いと思う子、缶が格好良いと思う子、見たことがないものを格好良いと思う子、名前で選ぶ子、値段で選ぶ子、細長いの、平たいの、古くからあるの、新しいの……千差万別だ。
俺からの返礼はクッキーとなりちかのたいせつなことエコバッグ2023にした。
生成りの生地に文字だけの新商品だ。
京斉店長が仕入れ値で売ってくれたから、お礼に地下にチビ用ブースを造る事にした。
高さ1メートルの上げ底の中身は収納。
中央と外縁に棚や冷蔵庫、デカいモン倶楽部と小さいモン倶楽部の境目に調理台。
内側に小さい五徳のコンロと浅いシンク、外側に大きい五徳のコンロと深いシンク。
脚立に乗るよりは火傷の原因が減るだろ。
視界も広がるし。
京斉君は変わった思考の持ち主だから、直球で礼をすると遠ざかっちまうんだ。
当たり前の事をしたと思ってる事に対して礼をされるのが駄目らしいんだよ。この数年で覚えた。
早く懐かねぇかな。
一緒に帽子かぶって蕎麦手繰ったり、道具市懲らしめたりしてぇよ。
色恋についての見解が凌司君と一致しててちょっと嬉しかった。
恋人ってのは作るモンじゃなくてできるモンだ。

3月15日

何だコレ…凄ぇ怠い。
何かウィルスにでも自由にさせるような事をやらかしたか?
規則正しい生活、バランスの取れた飯、適度な運動、質の良い睡眠、ストレスに強い思考の癖、自慢できるくらい外敵に強い生活をしてるのに?
枕が重りになって貼り付いてるみてぇに頭が重くて喉がイガイガする。
正体不明、二百何十年で初の不快感。
気合でベッドから起き上がれねぇのは数十年振りだ。
精神感応念話で凌司君にヘルプを求めるが、凌司君も同じ症状で寝込んでるときた。
「久幸さんもとうとう花粉症に?」
「んな訳無ぇだろ。地下には花粉のカの字も飛んでねぇよ。こんなモン共有しやがって、ファッキン!」「うーん…理不尽な気もするけどスミマセン。」
「アー、いや、済まん。
意図してできる事じゃなかったな。そっか、こんな辛ぇモンなのか、花粉症。」
これまで屋敷の中では症状は出なかったと言ってたのに、何で突然?
俺の結界が弱ってるのか?
だとしたら何で?
……全然頭が働かねぇ。
アー、もー、今日は無理。
シフト入ってなくて良かったぜ。


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