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偶さか日記6(暗夜迷宮日記)

イラストは全て嘉又夢了氏
文中の凌司君は氏のキャラクター。
事前に関係を組んでいます。


3月26日

厨房に必要な材料が揃ったから凌司君に手伝わせてDIY。
ああでもねぇこうでもねぇって喋っても、不意に黙り込んでも、ひたすら手だけは動かし続ける時間ってのは良いねぇ。

3月27日

凌司君のネーミングセンスに笑わせてもらった。
兎の吐息に兎の耳毛に兎の腹毛だぞ!
笑わずにいられるか!
庭にウサギ小屋も造るべきかね?
凌司君の魔法の師匠のトゥチャンが兎小人だからなんだろうが、それにしてもあんまりじゃね?

3月28日

ター坊の女房の誕生日会に凌司君共々呼ばれたから二人で行った。
ワインタルトと鈴蘭の香水を持って。
「タルトは兎も角として、香水なんて他所様の妻に贈る物ではないのでは?
しかも根に毒があると言う鈴蘭なんて……どんな嫌味かと詰られても文句は言えないでしょう。」
予測通りに凌司君が呆れたから説明した。
「俺が贈りたいんじゃなくて誕生日のご本人サマのリクエストだ。
バンパイアとして500年も生きてる大先輩だから断れねぇんだよ。」
本日の主役が凌司君も連れて来いって言ったのは単なる仲間の把握だと俺は思っていたが、奴さんは俳優圭凌司の十五年来のファンだった。
本人には一言も打ち明けなかったが、凌司君を追い掛けて全舞台を観覧したつぅから筋金入りだ。
打ち明けない理由は言わなかったが、この先凌司君にバンパイア化の変化が現れた時にはファン内の根回しに奔走するつもりだとドヤ顔した。
バンパイアの中にも演劇に夢中で次作を楽しみに大人しく生きてるヤツが居る事を知ったら凌司君は喜ぶという事は伝えといた。

3月29日

今日は俺の始祖の祥月命日だからイタリア北部の村まで墓参りに行った。
界狭間の作り方を知ってから最初に作ったのが始祖の墓への路なんざぁ俺も可愛かったモンだなぁ!!
結果的に96年もの長きに亘って一緒に暮らしたのは、カラダだけじゃなくて気性の相性こそ良かったからなんだろう。
俺が買い取った土地の石造りの古びた小屋の扉を最新式のデジタル鍵で開ける。
時代が下って墓地である事を忘れられたり、余計な伝説に煽られた馬鹿に暴かれたりすると面倒だから私有地にした。
見かけと違って無理に侵入しようとすると電流が流れる。
小屋の中は始祖が気に入っていた肖像画一枚と、黒い炭状の十字架の刺さった蓋の無い小さな箱があるだけだ。
始祖の胸に突き刺したまま火葬し、始祖は灰になったのにこれだけは灰にならなかったといういわくつきの木製の十字架の杭。
花屋で買い占めて抱えて来た黄色いバラを放り出して、誕生日やバレンタインに客から貰った銀製品の内のノットフォーミーだった物を灰箱の中に入れた。
この距離で凌司君に精神感応念話を届けられるか試したら難なく成立したから、視界共有を試し序でに始祖の肖像画を見せてやった。

久幸の始祖の肖像画

凌司君の表情が一瞬で明るくなったのが分かって思わず笑った。
小屋の中の空気も微かに震えたように感じた。
「これが俺の初の直系係累だよ。
……また来年な。」

3月30日

ター坊の女房から劇団螺笑門の円盤を全部借りた。
つっても奴さんが持ってるのは凌司君の出演してる物だけで、劇団全部の中では半分くらいらしいから、例の彼女が見つかる可能性は五分五分だが。
こン中に居てくれよ…!

3月31日

居た。
例の彼女は居たけど誠に遺憾な居方だった。

スチル写真

まさかの男。まさかの凌司君。
スチル写真の男女は両方とも凌司君だった。
一人二役の解離性同一症の話だった。
話も演技も滅茶苦茶良かった。
ター坊の女房が夢中になるのも頷けた。
でーもーなー!!
ファッキン!彼女に俺が岡惚れしてなきゃなー!!
残念過ぎて今日は立ち直れない。
ま、人生の楽しみを潰されたのが誕生日前日だった事に感謝すべきだよな。
ヨシ!

4月1日

凌司君が昼食に呼んだっていうランチャンとトゥチャンと泰市チャンが俺の誕生日を祝ってくれた。
プレゼントはスウェット型防御強化服だぜ!!
人が喜ぶツボを心得てるよなぁ!
女装で二時間半JC&JKに付き合うHPMPはこの喜びが無かったら枯渇してたぜ。

女装の凌司君と久幸と
ニンゲンのJKに化けたチカッツチャンと
ニンゲンのJCに化けたナリスチャン

(MP切れで長文書けなかったので凌司君の日記をオススメします。↓)


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