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溶ける、解ける、

髪を切った。
のばしたいような気がして、後頭部をメインに、そろえるだけにしてもらった。
2、3年に一度、のばしたいよう気持ちになるのだけれど、
それは結局実現しないまま、今日に至っている。

毎回毎回不思議に思う。
ただ髪を切ってもらっただけなのに、この満たされ方はなんだろう。
どうしてこんなに、きらきらした気持ちになるのだろう。
誰かに会いたくて、だけど誰とも予定がなくて。お気に入りの洋服屋さんで、買う予定はない服を試着してしまうほどに、
誰かに会いたくなる。

髪を切る、という行為が、
今の美容師さんに会うまでは、
どこか、罰のようだった気がする。

私の髪は、それはそれは自由な天然パーマで、
少し伸びては切る、を繰り返すのは、
思い通りにならない自分を、
飲み込めない自分を、
削除することの、代償行為だった気もする。

いま、私は、
髪を切ることによって、よりよい私に出会うことができる。
切り取るのではなく、
融合すなわち、溶けていくような。
許せない自分の欠片が、
私となってにじんでいくような。

美容室を出ると、穏やかな土曜日の西陽がさしていて、
気持ちがいいねと言い合った。

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