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ママのお墓参り。

ちょっとこの前
京都の木津川に用事があってね。
その途中に
ママの大切な人の墓苑があるんだわ。
前に行ったのは長女が小さな頃と結婚前かな。
前夫さるちーと一緒に
報告と共に手を合わせに行ったよ。
次女の時は震災で避難所を転々としてたから行きそびれた。
もう何十年も来ていなかったけど
場所は覚えていたよ。

さるちーは元々はその墓苑を抜けたところの高層団地群に住んでた。

送電線が空を切り取る中で
夕日が照らす団地の公園のブランコに
さるちーは娘を乗せてゆっくりと漕いだ。
私はさるちーの背中をゆっくり押して
キャッキャと喜ぶ長女がいて
「俺が欲しかったのはこういう風景やってん」と彼はつぶやいた。
「そっか」と私は背中を押す。
金属音が律動良く夕方の静寂に響く。
「帰ろか」という彼は少し涙ぐんでいたかも知れない。
「せやな、おうちへ帰ろう」
「おさる、今日は昨日の残りのシチューやで」
「マカロニ入れたらええやん」
「おお、良い考えだ!」
長女は片手ずつを私たちに繋がれて
ぶらんぶらんと自分を漕いでいた。
あの幸せがずっと続いていたならば
私もこんなところで飲み屋なんて開いてないさ(笑)

久しぶりに来た墓園はちょうど雨上がりで
土や木の香りが濃い。
墓碑名にはまだ刻まれてはいなかった。

絵が上手かったとお婆ちゃんから聞いていたよ。長女も次女も美術部。

長女 切り絵(中2)
次女 毎日DASデザイン高校の部優秀賞(金工)


次女は高校美術科から美大に進んだのも縁なんだろなぁ。
泥んこで遊んで帰ってくる俺たちを先ず玄関で服を脱がして足を洗わせて、てのが日課でやぁ、
近所では「裸のぼっちゃん」て言われてなぁ、て苦笑いしながら話してくれた。

お義母さんのお母さんとは、ずっと亡くなる手前まで仲良しで、私にずっと遺品のお洋服や長女次女のお洋服を送ってくれたよ。長女がお腹に出来て、悪阻で伏せっていたら、遠くからポテトサラダやカレーやお惣菜作って電車乗り継いで飛んできてくれてね、おむつの縫い方も教えてくれたよ。毎朝6時半くらいから3時間くらい電話してくれて、お義母さんの昔話をいっぱいしてくれた。

それはそれは、
おさるはばーちゃんを大切にしてたよ。
だから結婚する前にいちばん先につれていかれたのは、お婆ちゃんの家だった。
見てた?もちろん空から見てましたよね。

あれから33年。
お婆ちゃんとおさるは会えてますか?
彼の大好きなポテトサラダの作り方は
今も教えて頂いたあの作り方まんまで作っています。
長女も次女も継承してるウチの味です。

どうか予定日一週間前に空に召された
本当の長女と一緒に
あの夕焼けのブランコを漕ぎながら
高く高く笑っていて下さい。

そろそろ帰って店の支度をするわ。
今日は
夕焼け色したフローズンマルガリータを
オススメのカクテルにするかな。
少し塩味きつめやな。

ばいばい、また来ますね。