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ベンチを辿って首元まで蟻がのぼって来ていたので、そろそろ帰ろうと思いました。

私はおそらく5年くらい定職につかずフラフラ生きているひきこもりなのですが、今日はかねてより希望をしていた会社の職場見学をしてきました。
希望していた…というよりも、ハローワークで見つけた障害者雇用の求人の中でも、家から近くて、これだけお給料が貰えれば生きていける、というだけで選んだ求人なので、どうしてもこの会社じゃないと嫌だというわけではないのですが。(おい)
しかし社会復帰をしようととりあえずあっちに行ったり、こっちに行ったり行動だけはしているので、自分で自分を褒めてあげたいですね。
偉いな、自分。
こうして社会と関わりたいと思うようになったということは、精神に障害こそあれど回復フェーズはもう終わったということなのでしょう、現実逃避が必要な時期ももちろんありましたが、今は誰かと関わって生きていたい、死ぬ最後の日まで働けるなら働きたい、人の役に立ちたいという思いがあります。(ちょっと言い過ぎたか)

今苦しい思いをしているなら、それは何か今までの、そして今の生き方が間違っているからという言葉を本で見ました。
それなら視野を広げ、今までのやり方を変えればいいだけ…と。
そしてひきこもってることが辛いなら、社会にでれば良くなるのではという安直な考えにいたりました。
しかし働くことが嫌で嫌でたまらなくて、精神に異常をきたし、ひきこもりになったので、今また働きたくなっている自分に驚きます、考え方とか色々変わったんだろうなーと。

最近は自分のためだけに生きていても面白くないなって思います。
とにかくひとり家でじっとしていることにはほとほと嫌気が差しました。
嫌なことから逃げ、傷付くのを恐れ、自分の幸福だけ追求して生きてきた結果がこれです。

こうして書いてみると信念だけは立派なもんだ、と自分でも思いますが、そこは長年のひきこもり、すぐに本性を現します。
今日ほんとは7時に起きて準備をし、現地に向かう予定だったのですが、何度二度寝をしたことでしょう。とにかく起きたくない、予定があるときに限って面倒なことから逃げたい、意志の弱さが露呈します。
流石に起きなくてはまずいぎりぎりの8時まで横になっており、行きたくない、行きたくないと慣れないスーツに袖を通し、自宅を出発しました。(やれやれ…)

朝日の中、知らない道、初めてのコンビニで買ったおにぎり、橋から眺める景色が気持ちいいなぁなんて、自転車を漕いでいたら職場に到着しました。私は下見などしていなかったのでとにかく会社のデカさに恐れおののいていました。でかい門、広い場内、背筋のピンとした警備員、警備員、警備員…。事前にメールで頂いていたQRコードがないと入れないシステムになっており、不審者を誰一人通さん!という気概を感じつつ、ロビーで担当者と待ち合わせして、実際に1時間程、職場を見させて頂きました。

職場見学とは実際の職場、仕事内容を見させて頂いた上で、私がここで働けるのかどうか判断し、その上でこの会社に応募するのかどうか判断する機会だと思うのですが、このときの私は、私が"この会社を見る"というよりも、職場の方達に"見られている"ことに意識を持っていかれ、とにかく失礼のないように振る舞うことで精一杯なのでした…

担当の方2名と対峙したとき「え、これ面接始まった?」と勘違いしてしまいそうな、得も言われぬ緊張感。
長年人と関わることを避けてきた代償が大き過ぎました。
ああ…この途方もないほどの自意識をなんとかせねばなりません。
私は今日この職場を少しでも知るためにやってきたのですから。

無事に職場見学も終わり、働くとはどういうことなのかあらためて知見を得ようと、帰り道に図書館に寄ったのですが、月曜日なので休館日でした。
近くにベンチがあったので、自転車を近くに停め、腰をおろし、空を見上げて考えていました。
働くことになったら私は自分の人生を諦めることになると。
特に叶えたい夢ややりたいことがあるわけではないのに、なぜかそう思わずにはいられませんでした。
ベンチを辿って首元まで蟻がのぼって来ていたので、そろそろ帰ろうと思いました。
1時間程知らない人たちと行動を共にしただけなのに、私の疲労はピークに達しており、眠気眼で自転車を漕いで家路に着きました。

私はこれから社会に溶け込まねばなりません。
社会の歯車として機能しなければなりません。
役割が与えられ、仕事が与えられ、組織に所属し、社畜化する。
もう生きるとはなんなのかとか、幸福とはなんなのかとか、やりたいことはなんなのかとか、難しいことは考えなくても、毎日決まった仕事がある。
きっと楽でしょうね…
何者でもない自分ではなくなる。
今思えば自意識があるから、自分のことが大切すぎたから、息苦しかったのかもしれません。自分を捨てて社会と一体になったとき、また違った景色が見えてくるのでしょうか。

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